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仏説仏名經卷第十三 大乗蓮華寶達問答報応沙門経

 寶達は、悲しみを抱え次の地獄へと進んだ。

「ここは、火箭地獄に御座います。」

 鬼王が、眼下を見下ろし、そう言った。

 縦横九十由旬、鉄壁に周囲を囲まれ、猛火の燃え盛る地獄は、一見すると先の飛刀地獄に似ていたが、その地面は炎に包まれ、一面に鉄棘が突き出している。 また、虚空には刃ではなく、無数の火矢が飛び交っている。

「この火箭地獄は、飛刀地獄同様、四方から吹く熱風により鉄山が吹き寄せられ、虚空に矢を生みます。この矢は互いに擦れあい、炎を発して沙門達に降りかかるのです。沙門達は降り注ぐ火矢に身を貫かれ、地上の鉄棘に足を貫かれながら逃げ惑い、その痛みに泣き叫ぶ様はとても言葉にすることはできません。彼らは、一日一夜に千死千生、万死万生して無量の苦を受けるので御座います。」

 寶達は、憂いに満ちた目を上げた。

 憂いに沈む寶達を見る鬼王、地獄の様を見慣れているはずの馬頭羅刹さえ、その顔は憂いを帯びて沈んでいる。

「彼らは、どのような罪を犯して、このような報いを受けているのでしょう。」

 馬頭羅刹が答えて言う。

「この者たちは仏の浄戒を受け、沙門の身となりながら、仏の威儀を失し、俗人のように弓矢を手にしました。経典に、昔戒律を守らず、俗人のごとく弓矢を使って殺生を行う比丘が、万世に渡ってその悪報を受けたとあることからも、こうした沙門が三悪道に堕ちることは知れたことでございます。今ここで苦しみを受ける沙門達もまた、同じこと。万世に渡ってその悪報を受け、苦しみ続けることでございましょう。」

 馬頭羅刹の言葉に涙し、寶達は、無残に泣き叫ぶ沙門達を見下ろす。寶達にも、世尊の憂いの理由が、分かったように思えた。しかし、この寶達の悲しみとても、世尊のその深い憂いの幾許かを垣間見たに過ぎないのだろう。

寶達は憂いの涙を流し、この地を去った。


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