友人の告白を見守ろう!
3日後、今日はついにマリー様が気持ちを王太子殿下に伝える日だ。私はサフィに心配されながら準備をしてもらい、屋敷を出た。
王城に着き、城のメイドに案内されて王城のりっぱな中庭の中に静かに佇む東屋に連れて行かれる。そこにはマリー様が座っていた。
ちなみに体調は大丈夫だった。
「今日はお呼びいただきありがとうございます」
「よく来てくれたわね。座って。あ、メイドたちはしばらく外してもらえる?」
マリー様は素早く指示を出し、私たちは2人きりとなった。…正確に言うと、遠い所に使用人さんたちいるけど。あとここ王城だから気を抜けないね!
「来てくれてありがとうね」
「いえいえ。どう、いけそう?」
真理と小声で話す。いつどこで聞かれているのかわからないもんね!あ、でもお義母様と王妃様は普通に敬語なしで話していたよね?
「うーん…伝えたいことがあるからここに来てほしいって言っているから、雰囲気は作れると思うわ。理愛も近くにいるし。ただ、殿下が受け入れてくれるかどうか…」
真理はそう言って、ため息を吐く。不安そうな顔をしている。
王太子殿下が受け入れてくれるかどうか?受け入れるでしょ!だって絶対2人はお互いに好き同士じゃん!思いを伝える前に婚約しちゃってるから、逆に伝えにくいのかな?
「大丈夫大丈夫。自分に自信を持って落ち着いて頑張ってね!」
「ふふ、理愛に先に会っておいてよかったわ。おかげで緊張がちょっと和らいだよ」
真理はそう言って小さく笑った。
うんうん、真理は笑顔が良く似合うよ!むしろ真顔は美しい悪役顔が際立つから笑顔でいてほしいね!それにしても、緊張が和らいだようならよかったよかった。
「私はどこにいたらいい?」
「あそこの低木が並んでいる所の奥かしら」
「りょーかい!頑張ってね!」
私は笑顔で親指を立てる。真理はちょっと呆れたような顔をして、そして
再び小さく笑った。
私は言われた通り低木の奥に行って身を潜める。ここからは真理の表情が見える。でも意外に遠いなぁ。声は聞こえると思うけど…まぁ、バレないくらいの距離だね!
うーん、緊張しているなぁ。ここは変顔とかやった方がいいのかな?あ、でも誰かに見られたら粗相になりそうだからやめとこう。
「あれ、フィリア?」
後ろから声が聞こえた。いつも聞いている声だ。
え、まさか…!?
「ルイド様」
ゆっくり後ろを向くと、ルイド様が立っていた。
なにそれホラー。後ろ向いたらルイド様とかこっわ!?
「何をしているんだ…。いや、なんとなく察した」
ルイド様は私と、奥の東屋に座っているマリー様を見て遠い目になった。
「マリー様の見守りです」
「だろうと思った」
そう言ってルイド様はため息を吐く。
ちょっとちょっと!ため息は吐かないで!?これは友人の大勝負なんだよ…!友人として応援せねば。というか見守っててほしいってお願いされたし!
「ルイド様はどうしてここにいるんですか?」
「陛下から、王太子殿下が覚悟を決めたらしいから結末を見てこいと言われたんだ」
「そうなんですか…そうなんですね!?」
え、やってること一緒じゃないですか!なんでため息吐いたんですか!目的一緒なのに!というか、そんなことまで側近はしないといけないんですね!大変そう。
てそうじゃなかった。え、王太子殿下が覚悟を決めたの…!?ということは、これお互い思いを伝えに来てるってこと!?なにそのタイミング…!
思わず声を上げるとルイド様がそっと口元に人差し指を当てる。
ハイ、スミマセン。ダマリマス。
「マリー、呼び出してどうしたんだい?」
不意に東屋から爽やかボイスが聞こえてきた。王太子殿下だ。
低木に身を潜め、そっと目から上だけ低木の上に出す。爽やかイケメン王太子殿下がこれまた爽やかな笑顔を浮かべていた。
…絶対マリー様のこと好きじゃん?なんでこれで不安になるの…!うちのルイド様基本無表情だよ!?ほら、今も無表情!…て本当に無表情だ。
「…殿下にお話がありますの」
マリー様は一呼吸置いた後、決心したように王太子殿下を見た。王太子殿下も雰囲気を察してか、真面目な顔になる。
「いよいよですね」
「そうだな」
2人の様子を見つつ、ルイド様とヒソヒソ話す。
ついに、ついにお互いが気持ちを通じ合わせる時が来たようだね…!
「話って何だい?」
「えっと…」
ちらっとマリー様が私を見た。私は笑顔で首を縦に振る。ついでにグッドサインも出す。
マリー様は一瞬呆れた顔をしたあと、小さく微笑んだ。そしてゆっくりと口を開いた。
「私は、殿下のことを」
「ちょっと待って」
マリー様が気持ちを伝えようとした瞬間、王太子殿下がマリー様の言葉を遮った。
え、なんで遮るの…!?あとちょっとだったのに!
「王太子殿下何してるんですか…!?」
「落ち着けフィリア」
手をわなわなさせてそう呟くと、ルイド様がそっと窘める。
王太子殿下はマリー様の言葉を遮った後、マリー様を真剣な顔でしっかりと見た。マリー様は不安そうな顔をしている。
「先に僕に言わせてほしい。僕はマリーのことが好きだよ。王太子妃、そして王妃と大変だと思うけど、僕の妻になってほしい」
「殿下…!?」
マリー様が驚いた顔をする。
おぉ!自分が先に言いたかったんですね!イラついてごめんなさい!
「はい。いつまでも殿下の側で支えますわ。私も殿下のことをお慕いしてます」
「マリー…!」
マリー様は泣きそうになりながら、それでもしっかりと笑顔で返事をし、自分の思いを伝えた。
王太子殿下が嬉しそうに顔をパッと明るくさせた後、マリー様を勢いよく抱きしめた。
「よかった…」
王太子殿下とマリー様の幸せそうな顔を見て、胸を撫でおろす。
よかったよかった。大団円だね!これからも末永くお幸せに…!
幸せそうな2人を見ていると、不意にルイド様から手を握られた。
「ルイド様…?」
「いこう。ここからは殿下とマリー様の世界だ」
あぁ、なるほど。確かにここからは2人きりにした方が良さそうだね!ルイド様よくわかってらっしゃる…!
マリー様には後で手紙を書いておこう。
「そうですね」
ルイド様にそっと手を引かれ、私たちはその場をあとにした。
「いや~、よかったですね」
「そうだな」
ルイド様は私を馬車まで送ってくれるそうで、2人で馬車が止まっているところまで歩く。
「なんだか幸せな気分になりました」
他の人のリア充っぷりを見ると、こっちも幸せな気分になるよね!
「そうだな」
「というわけで、今日の夜はハグしてください」
「前後関係がおかしいぞ」
ルイド様はそうつっこんでジト目で見てくる。あれ、ルイド様、最近ツッコミスキル上がりました?
だってマリー様と王太子殿下のハグ見たら私もハグしたくなったんだもん、しょうがないよね!
「…まぁいいけど」
ルイド様が視線を外して、ぼそっとそう言った。
「ありがとうございます」
わーい!これで今日の夜はハグ決定ですね!楽しみだなぁ。
その後何事もなく馬車まで送ってもらい、屋敷に帰った。夜はちゃんとハグしてもらいましたよ!癒された!人肌すごい。
その2日後、王家から手紙が届いた。1週間後、王太子殿下の結婚式決定のパーティーへの招待状だった。
短い短い番外編「いい夫婦の日」※本編には全く関係ありません。会話文オンリーです。
「ルイド様」
「なんだ?」
「今日はいい夫婦の日らしいですよ」
「そうか」
「というわけで抱きしめてください!」
「いきなりだな。別に構わないが。こっちにおいで」
「わーい!ありがとうございます」
いい夫婦の日の文字を見て、これを思いついたので書きました(笑)
ツインテールの日でもありますね。
次回、久々の社交です。




