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友人が決意しました!

 領地旅行から帰ってきて1週間。

 只今私はユースエン公爵家の立派な庭で、優雅にお茶を飲んでいた。


 マリー様と。


 つい3日前に、ユースエン公爵家行くね!話そうぜ!みたいなことが書かれた手紙が届いた。ルイド様に聞いたところオッケーがもらえたので、今日お茶会をしている。


「あ、これ領地のお土産です」


 サフィに持ってきてもらった小さな紙袋をマリー様に渡す。


「あら、ありがとう」


 マリー様はにっこり微笑み、紙袋を受け取る。


「開けていいかしら?」


「もちろんですわ」


 マリー様が紙袋を開けて、中のものを取り出す。出てきたのは貝殻をモチーフにしたヘアピン。

 ヘアピンって貴族だとなかなか付けないけど、真理は前世よくつけてたもんね!


 マリー様は一瞬驚いた後、懐かしそうに目を細めた。気に入ったみたいでよかった!


「後はマリー様とのんびり話すから、呼ぶまで離れておいてくれる?」


「わかりました」


 私がそう近くにいた使用人たちに声をかけると、使用人は一礼して離れていった。

 よし!ここからは真理とお喋りタイムだよ!


「ヘアピン懐かしいでしょ!」


「そうね。昔よく付けていたなぁ」


 そう言って真理はヘアピンを髪につける。ちょうど今日の髪形が前世よくやっていたポニテだったから、なんだか懐かしい気持ちになった。


「領地どうだったの?」


「すごく賑わってて明るい所だったよ!あ、初めて砂浜に行ってね。そこで…」


 私は砂浜であったことを簡潔に真理に話した。真理は若干遠い目をしていた。


「仲良いねぇ。その調子だと他にも何かあった?」


「うえ!?うーん…あ!抱きしめてもらって、そのついでに頭撫でてもらったよ~」


 そういえば、あれが初の触れ合いだったね!見事にその後は何もなかったけど!砂浜が2度目だった。


「あのユースエン公爵殿がね…全然想像つかないんだけど」


「私も結婚当初はこうなるとは思っていなかった。というか、そもそもルイド様好きじゃなかったし」


 嫌いでもなかったけどね!攻略対象の顔えげつない!眼福!て感じだった。つまりは他人。よくここまで仲良くなったよなぁ。


 真理は当時のことを思い出して、ちょっとだけ苦い顔をしていた。


「あの時は私も気にしていたんだよ?ユースエン公爵殿は王家とも関わりあるし、同じ公爵家だし。それになかなか人気だったから、新妻さんいじめられないかなって不安だったのよ」


 その件についてもご心配をおかけしました。いや本当に懐かしい。いきなり妻にする宣言からの地獄の淑女特訓からのやたらめったら盛大な結婚式。私頑張ったね…!?


「すみませーん。あ、だからあの時すぐ助けに来てくれたんだね!?」


 そういえば、公爵夫人になってから初めての舞踏会で令嬢方に絡まれたんだっけ。あの時すぐに真理が助けに来てくれたよね!ずっと気にしてくれていたのかぁ。


「まぁね」


「ありがとう!…で、王太子殿下とはどうよ?」


 お礼を言ってすぐ、ずっと気になっていたことを聞く。王家から何も音沙汰ないということは、まだ気持ちを伝えていないんだろうけど!遅いよ!


「急な話題転換ね」


 真理は呆れた顔をして、じとーっとこちらを見てきた。


「てへっ。で、どうなの?」


「言おうとは思うんだけどね…。どうしてもあと少しの勇気が出なくて」


 そう言って、真理は深いため息をつく。その顔はさっきと打って変わって暗かった。


「なるほど…」


 こればっかりは私じゃどうにもできないもんなぁ。私も気持ち伝えられたのはルイド様が先に言ってくださったからだし、雰囲気もあるし。…雰囲気か。雰囲気か!


「雰囲気だよ!前世で告白する時って前置きを置いてたじゃん?伝えたいことがあるんだけど…みたいな」


 まぁ、私は告ったことも告られたこともないですけどね!だけどまぁ、色々話は伝わってきていた。それに漫画やアニメもそんな感じだったし…。


 真理は、何か思い当たる所があるみたいで、あぁ…と納得していた。


「その反応からして前世でそういう経験あるの?」


「もちろんあるに決まってるじゃない」


「裏切者…!2人で独身貫こうねって約束したのに!」


「そんな約束した覚えないんだけど」


 ちょっとボケてみたら案の定つっこまれた。じとーっとした目で。

 そっかー、真理は告られ体験あったのかぁ。あ、告り体験?好きな人いるって相談受けてたもんねぇ…いや、告り体験はないか。あったらこんなに悩んでないはずだもんね!


「そこはのってこよう?まぁいいや。雰囲気を作ってみてもいいんじゃない?」


 たぶんその反応的に、雰囲気も何もなくストレートに言おうとしていたっぽいし。

 真理はしばらく考えたあと、首を縦に振った。


「そうしようかな。一旦前振りを入れて雰囲気を作ってしまえば、今までみたいに言えないなんてことはできないし…」


 真理さん超ストイック…!さすが真理!自分で自分を逃げれなくするなんて。本当に王太子殿下が好きなんだなぁ。


「あ、それで理愛に頼みがあるんだけど」


 頑張れ…!と心の中で応援していると、不意に真理がそう言ってきた。


「なにー?」


 頼み?私にできることがあれば協力するけど。気持ちを伝えるのに協力…?あ、前置きの言葉を考えてほしい!みたいな?


 真理はもう一回考えたあと、再び私を見た。そして口を開いた。


「告白する時、近くにいてほしい」


 そう静かに言い放った。


「へ?」


 えぇぇええ!?今なんて?近くにいてほしい!?私は構わないけど!むしろ見たいけど!真理は誰かに見られて大丈夫なんかなぁ。


「理愛が近くにいると、勇気が出るような気がするのよ。それに理愛がいることで、逃げることは完全にできなくなるし」


 わぁ、ストイック!まぁ、真理がいいならばっちり見に行きますよ!…見に行くというより見守りか。見守りに行きますよ!


「私はいいよん。…それって王城?」


「そうだよ。あ、まだ王城は怖い?無理しなくていいよ」


 真理はあの毒事件のことを思い出して申し訳なさそうにそう言う。

 怖いっちゃ怖いけど、毒事件に関わった人はもう王城にいないし…それに次の社交はいかないといけないから、一回試しに行っておきたいなぁ。ルイド様が認めるかは置いといて。まぁ、そこは頑張るしかないね!


「怖かったらすぐ帰るけど、とりあえず行ってみるよ~」


「そう。くれぐれも無理はしないでね?」


「もちろん!」


 真理が申し訳なさそうに眉を八の字にして念を押してくる。

 無理なんてしませんよ!無理してやらかしたらルイド様に怒られるからね!最悪愛想つかされて嫌われるまであるからね!粗相即嫌われエンドは避ける。


「さて、そろそろお暇するね。詳しくはまた手紙を送るね。それと、ヘアピンありがとう」


「はーい。待ってるね!」


 そして真理…マリー様は帰って行った。



 夜。ルイド様が仕事を切りあげ、寝室に入ってきた。私はベッドに移動して、ルイド様に向き合う。


「ルイド様、王城に行っていいですか」


 そして開口一番に尋ねる。こういう時はさっさと言うのが大事だよね!

 ルイド様は一瞬ポカンとして、すぐに表情を無表情に戻した。


「行かせたくはないが…何かあったのか?」


 お!頭ごなしに否定するのではなく理由を聞くとか紳士!良い上司になるね!


「実は、マリー様に王城に来ないかってお誘いいただいたんです。私も次の社交までに王城に行っておきたいと思っていたので…」


 うん、嘘はついていない。だけど、マリー様が王太子殿下に気持ちを伝えるので、それを見守りに行きます!とは口が裂けても言えない。いや、口裂けるくらいなら言うわ。てへっ。


 ルイド様はしばらく思案した後に、口を開いた。


「わかった。それなら行っておいで。でも、無理そうならすぐに帰るように。マリーナル様なら理解していただけるだろうし」


「わかりました。ありがとうございます」


 よし!これで王城に行ける!後は粗相しないように気をつけなくては。

 そして真理といいルイド様といい優しいなぁ。王城、大丈夫かな?お茶会ではないから大丈夫そうな気はする。


「ルイド様、雰囲気って大事ですね」


 今日のお茶会を思い出して、ふと感想をこぼす。ルイド様は訝しんだ目で見てきた。


「どうした急に」


「今日マリー様と話していて、そう思ったんです。というわけで久しぶりに頭を撫でてください」


「別に構わないが、今の全く雰囲気ないぞ」


 …はっ。そういえばそうだ。今の言い方雰囲気もくそもない!

 そして構わないの!?いいの!?やったぁ。


 ルイド様の近くまで膝立ちでずいずいっと行くと、ルイド様は面白そうに見て、そっと頭を撫でてくる。


「これでいいか?」


「はい!ありがとうございます」




 そして2日後、マリー様から手紙が届いた。3日後に、王城に来てほしい、ということだった。


ついに王太子と真理の関係に終止符が…!

頭撫でられるシチュエーションも大好きです。

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