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港を見よう!

糖度多めでお送りします

 次の日。

 私はルイド様と馬車に乗って港に向かっている。


「楽しみです」


「そうだな」


 この国一大きな港かぁ。どんな感じなんだろうね!きっと外国の船もあるだろうし、非常に楽しみ!


「わぁ…!」


 馬車が建物の角を曲がったところで、海に浮かぶ大きな船が見えた。

 大きいね…!?そりゃこんな船が出入りするんだから栄えるよね!


「あれはイリーセス王国の船だ」


「そうなんですね」


 イリーセス王国、イリーセス王国…。どこだ?ちょっと領地関係以外の地理はわからない。てへっ。


 ちなみにここはファドーラン王国で、島国である。


「イリーセス王国はここから一番近い国だな。大国だ」


「そうなんですか。勉強になります」


 なるほどなるほど。あれ?でも私ルイド様に聞いてないよね!?また顔に出ちゃったかぁ。もうこれはしょうがないね!




 馬車は港沿いをしばらく進み、ひとつの大きな建物の前で止まった。

 ルイド様がサッと降りて、手を差し伸べてくれたので、その手を借りて馬車から降りる。そしてエスコートされながら建物の中に入った。


「ここはどこでしょうか」


「この港を管理している場所だ」


 小声で質問をすると、ルイド様がこそっと答えてくれる。

 ほうほう、この大きな港を管理ねぇ。つまりこの領地の心臓みたいなところかな。


「お待ちしておりました、旦那様と奥方様」


「あぁ」


 中に入ると、1人の男性が迎えてくれた。…なんだろう、誰かに似ているような?


「奥方様、お初にお目にかかります、フレーデックと申します」


「フィリア・ユースエンですわ」


 フレーデックが自己紹介をしたので、私も簡単に済ませる。


「フレデリクの弟だ」


 不意にルイド様がこそっとそう言ってきた。

 へぇ、フレデリクの弟かぁ。


「えぇ!?…あ、これは失礼したわ」


 フレデリクの弟!?そうだ!誰かに似ていると思ったらフレデリクだ!この穏やかな笑顔!でも絶対鬼畜な性格しているんだろうなぁ。


 私の反応を見て、ルイド様が小さく吹き出す。それを見てフレーデックが目を見開いた。


「…旦那様も笑うんですね」


「…ぷふっ」


 まるで初めて見たかのような物言いをしたフレーデックが面白くて、思わず吹き出してしまった。ルイド様にじとーっと睨まれる。

 ルイド様さっき吹き出したからおあいこですよ!おあいこ!


「まぁいい。上で報告を聞く」


「かしこまりました」


 ルイド様がそう言うと、フレーデックは一礼をしてここを離れる。


「フィリアはどうする?」


 フレーデックが離れた後、不意にルイド様が尋ねてくる。

 あぁ、一緒に報告を聞くか、別室で休憩するか、どうするんだ?てことですね!


「邪魔しないので、一緒の部屋にいてもいいでしょうか」


「構わん」


 全く知らない所で1人きりはちょっと心細いよ!毒事件のこともあるせいか、外では1人になりたくない。


 ルイド様とともに上階に行き、小部屋に入る。そこには上等な机と椅子、そして離れたところに1人掛けのソファー1つがあった。


「フィリアはそこのソファーに座っててくれ」


「はい」


 部屋の隅にポツンとあった1人掛けソファーに座る。座ってわかったけど、ここは椅子に座って報告を受けるルイド様が良く見えるね…!たぶん、お義母様もこうやって仕事をするお義父様を見ていたのかな?


「では、報告を」


「了解しました」


 椅子に座って、フレーデックから手渡された資料を見つつルイド様がそう言い、フレーデックが説明を始める。


 …おお、何て言っているのか全く理解できないぞ。これなら前世もっと真面目に授業聞いておけばよかった。領地経営に前世の知識役に立つかなぁなんて思っていたけど、そもそも私にそういう知識ないね!


 そういえば、仕事をするルイド様初めて見るかも。馬車の中とか寝室で資料は読んでいたけどね!


 ふわぁ…なんか眠くなってきた。ルイド様まじ眼福…。





「…リア、フィリア」


「ん…ん!?いった!?」


 名前が呼ばれた気がして目を開けると、目の前にはルイド様の人間味のある圧倒的美の顔があった。思わず身を引こうとしたら、壁に思いっきり頭を打つ。

 あ、私いつの間にか寝ていたね…!?ごめんなさい!仕事中に寝てしまって!


「ふっ。お茶のひとつでも用意してもらえばよかったな」


 ルイド様はそんな私を見て小さく笑う。

 …よかった、怒ってないっぽい。


「いえ、外でのお茶は怖いです…。すみません、寝てしまって」


「いや、いい。気分転換に外を散歩しようか」


「はい」


 ルイド様に連れられて、建物の外に出る。昼前なのもあって、さっき馬車の中で見たより賑わっていた。


「おぉ…!」


 近くに柵があったのでそこから下の海面を見る。意外に底が見えない。これが海…!


「底見えないからちょっと怖いですね」


「ここは砂が黒っぽいから濁って見えるんだ。あんまり乗り出すと危ないぞ」


「そうなんですか」


 柵から離れて、ルイド様の隣に行く。

 砂にも色があるんだねぇ。初知りである。白だけかと思ってた。


「砂浜ってここらにあるんですか?」


 せっかくなら、前世のアニメで見たような、砂浜を好きな人と歩くとかいうロマンチックなことをしてみたい。まぁ、見る限り砂浜はなさそうだけど。


「ここら辺にはない。砂浜に行きたいのか?」


「いえ、そこまでは」


 やっぱりないかぁ。まぁ、ここは大きな港だもんね!港に砂浜あったら大きな船が近づけない。


「そうか」





 ルイド様に連れられて来たのは、お土産売り場だった。中は結構賑わっている。


「あの、どうしてここに?」


 ルイド様の意図が分からないので、素直に尋ねる。


「サフィにお土産を買うと良い」


 あぁ!そういうことか!わざわざ時間作ってくれたんですね!ありがとうございます!


 実はサフィはこの旅行について来ていない。というのも、いつも働きづくめのサフィに、せっかくならと休暇を出したのだ。毒事件があって以降、何かと気を張っていたみたいだし、あまり疲れが取れてなさそうだったから。


「はい!ありがとうございます」


 ルイド様にお礼を言い、お土産を見て回る。

 何がいいかなぁ。アクセサリー系かな?ちょうど海沿いということもあって、貝をモチーフにしたものが多い。

 あ、せっかくならリアグランスで入ってきたお金で買おう!たまには糸と布以外にもお金を使わないとね!


「あ、これ良さそう」


 目に入ってきたのは、小さくて奇麗な貝殻がついたヘアゴム。サフィはいつも髪を後ろで1つ結びしているし、これ良さそう!仕事中使ってくれるのかはわからないけど、プライベートなら絶対使える!

 うん、これにしよう!


「…そうだ」


 せっかくなら、あれをしよう。1回やってみたかったんだよね。


 私はシンプルだけど、どこか上品な貝殻をモチーフにしたネックレスを手に取った。





「お待たせしました」


「買えたか?」


「はい!」


 支払いを終わらせて出入り口付近に行き、ルイド様に声をかける。


「では帰ろうか」


「もういいんですか?」


「今日の分は終わったからな」


 なるほど。さすがルイド様仕事早い!

 私とルイド様はお土産屋さんを出て、管理建物に戻る。そして待っていた馬車に乗り込んだ。




 あの後、屋敷に帰り遅めの昼ご飯を軽く食べた。そしてその後はお義母様のお喋りに付き合う。本当に楽しそうにお話してくださるよね!聞いてるこっちまで楽しい。

 夕方になって、不意にルイド様がサロンにやってきた。


「母上、フィリアを返してください」


「あらあら。ではそうしましょうね!」


 私はモノか!と突っ込みたくなる気持ちをぐっと我慢する。あ、でも返してくださいには不覚にもキュンとした。


「フィリアちゃん、お喋りに付き合ってくれてありがとうね!」


「いえ、とても楽しかったですわ」


「また夕飯でね!」


 お義母様に一礼して、ルイド様の後をついて部屋を出る。ルイド様はそのまま玄関に行き、外に出た。


「えと、ルイド様?」


 馬車に乗り込んだタイミングでルイド様に尋ねる。


「砂浜に行きたいんだろう?」


 ルイド様は小さく呟く。


「え、連れて行ってくださるんですか?」


「あぁ」


 わぁ!まさかあの一言を気にしてくれていたのか…!ルイド様、とても紳士だね!


「ありがとうございます」




「綺麗…!」


 しばらく馬車に揺られてついたそこは、とても綺麗な砂浜だった。ちょうど日が沈みかけていて、とても幻想的である。


 ルイド様にエスコートをしてもらい、砂浜を歩く。特に会話はないけど、妙にそれが心地よかった。

 うんうん、こういうのロマンチックでいいね!でも、せっかくなら海に足をつけたい。


「ルイド様、海に入ってもいいですか?」


「すぐそこまでなら」


 ルイド様に許可をもらったので、靴を脱ぎ海に向かって歩く。スカートの裾を持ち、そっと波の中に歩みを進ませる。冷たくて気持ちがいい。これが、海かぁ!


「ルイド様は入らないんですか?」


「私はいい」


 ちぇ。まぁいいか。…あ、海に足つけるのってはしたないかもしれない。どうしよう、こいつはしたないなって思われて、そっぽを向かれたら…!でも、前世含め初めての海だよ!?入りたい願望の方が強いよね!


「わぁ…!」


 ふと海の方を見ると、オレンジ色の夕日と夕日に照らされてキラキラ輝いている海面が一望できた。

 このまま歩いて行ったら、あの夕日まで行けそうな錯覚に陥る。まぁ、そんなことはしないけど。絶対ルイド様に怒られるし、帰った後サフィに怒られるから。何歳になっても怒られるのは嫌だからね!


「フィリア、戻ってこい」


「あ、はい」


 夕日を見ていたら、後ろからルイド様の声がしたので、海からあがる。

 あ、砂が足についてなんか気持ち悪いなぁ。まぁ、これも良い経験か~。


 ルイド様の近くに行くと、不意に抱きしめられた。

 …はい!?


「え、ルイド様!?どうされたんですか!?」


「なんでもない」


 なんでもなかったら急に抱きしめないよ!?まさかこの非日常の雰囲気でいつもとは違う気持ちになりました!?それならすごいね砂浜…!砂浜の威力を実感したよ!


 ルイド様は数秒抱きしめた後、そっと離れた。表情はいつもと変わらない。何だったんだろうか…。ま、問い詰める気もないし、抱きしめられてラッキーくらいに思っておこう!


 あ、そうだ。あれを渡すなら今じゃない?


「あの、ルイド様。お気に召すかはわかりませんが、これを」


 私はポケットから、紙袋を取り出してルイド様に手渡す。ルイド様は訝しながら受け取り、紙袋を開ける。そこから出てきたのは、ネックレスだった。


「これは?」


「私からのプレゼントです!お揃いですよ」


 私はそう言って、自分の首に付けていたネックレスを服の中から引っ張り出す。

 上品で小さな貝殻をモチーフにした飾りが、夕日に照らされて輝いていた。


 お揃い、やってみたかったんだよね!前世で幸せそうなカップルたちがやっているのを見て、真理が羨ましがってたっけ。リア充うんたら…て言ってたなぁ。ネックレス、我ながらなかなか良いの選んだと思う。気に入ってくれるかな?


 ルイド様は素早くそのネックレスをつけた後、優しく笑った。


「ありがとう」


領地旅行はこれで終わります!次から王都で、真理と王太子殿下のよくわからない関係に終止符を打ちにいきます(笑)


世界にはピンク色の砂浜もあるみたいですね!


皆さんはお揃いしたことありますか?私は中学の時に友人と同じ消しゴムを買いました。後は、形は違うけど同じ店でブローチを買ったくらいですね~。


ルイド様がフィリア夫人をいきなり抱きしめた理由は、皆様のご想像にお任せします!

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― 新着の感想 ―
[一言] フィリアちゃんが夕日の向こうに行っちゃいそうに見えたのかな? 甘いのも好きです。 王太子カップルの顛末も楽しみに待ってます。
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