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ヒロインです!

「あらぁ!ここに居たのね、あたしのルイド様を奪った夫人!」


 後ろからびっくりするくらい可愛い声が聞こえ、振り向いた。

 そこにはこの乙女ゲームのヒロインであるアリリスさんがいた。メイド服を着て。


 なるほど、メイドとしてこの舞踏会に来ていたんだ。それにしても可愛い顔していらっしゃる…。可愛いと言われるパーツを可愛いと言われる比率で配置してある。うん、そりゃ可愛い。それに加えて華奢な肩に細い腕、メイド服に隠れているけどおそらく全体的に細い。守りたくなるような体。うん、さすがヒロイン。ルイド様と並べたら眼福…じゃなかった、絵面無敵じゃない?


 ただ、こんな喋り方ぶりっ子だったっけ?


「あら、貴女。フィリア夫人に対して失礼じゃなくて?」


 私とアリリスさんの間にマリーナル様が入り、アリリスさんを注意してくださる。

 これは自意識過剰かもしれないけど守ってくださった…?え、デレ?違うか。


「私が用があるのはマリーナル様ではなくそこの夫人ですぅ」


 そう言って頬っぺたを膨らませる。

 あれ、ここにはルイド様も殿方いなくない?ここでそんなぶりっ子されてもメリットなくない?あ、もしかして、これがデフォ…!?何それ痛い。


「失礼だと言っているのよ」


 マリーナル様はアリリスさんの言葉を聞いて、さらにきつめに注意をする。

 すみませんねぇ…私も何か言った方がいいかしら?でも前世からこういった場面に遭遇したことないしなぁ。言い換えれば、好きな人取られた!返して!みたいな。いや別に私は取ってないけど。むしろ私が取られたほう。平穏な日々的な意味で。


「だぁかぁらぁ!マリーナル様じゃないってばぁ!」


 アリリスさんが大きな声を出したことにより、近くにいた人たちの視線がこっちを向く。

 あーあー、見ないでー。ここで私が一歩間違えば粗相即離縁じゃないかー。せっかく粗相即離縁危機を回避してきたのに。


 そしてアリリスさんを見てる令嬢方の目が怖い。確かにアリリスさん、同性から嫌われる性格しているよなぁ。


「私に何か用かしら?」


 このままじゃ埒が明かなそうだったので、声をかける。

 アリリスさんは私を見てそれはそれは可愛らしい笑顔を浮かべ、こう言った。


「ルイド様はあたしのものですぅ!今すぐ離縁してください~!」


 と。

 可愛らしい笑顔ですごいこと言うなぁ。というか、さっきもなんかこんなこと言われたような気がするんだけど。あ、さっきの令嬢たちが目をそらした。


 周りが一気にざわつく。


「それは私の一存ではどうすることもできないから、ルイド様に直接言ってもらえるかしら」


 私は冷静に答える。

 うん、本当に私の一存じゃどうすることもできない。だってそもそも結婚に私の意思はないからね!何度も言うけど!

 あ、でもこれでルイド様に離縁しようと言われたらどうしよう。まぁ、その時はその時か。せっかく立派な公爵夫人になろうと決めたのになぁ。


 私の答えにアリリスさんは顔を真っ赤に染めた。そして、


「どうせお飾りの妻のくせにぃ!ルイド様はあんたなんかよりあたしの方が好きなのよ!」


 と言った。周りがさらにざわつく。

 おっと、耳に痛いことを言ってくれたねぇ。確かにお飾りの妻だけど。私とルイド様の間に愛なんてないけど。それ、ここで大声で言う?

 そしてざわつく皆さんよ、そういう結婚だったのは薄々気づいていたでしょ…。


「では、聞いてみては?ルイド様ならあちらにいるわよ?」


 ごめんルイド様。さすがに引きこもりで社交苦手の私じゃどうしようもないです。だってここで変に答えたら粗相即離縁…。きっとこういう社交慣れしているルイド様ならいい感じに返してくださるはず。まぁ、そこでアリリスさんを取る可能性もあるけど。


 あれ、これどっちが悪役?ぶりっ子ヒロイン対モブ公爵夫人なんて構造初めて見たわよ。


「では、聞いてきますわぁ。ここで首を洗って待っててくださいね~!」


 そう言ってアリリスさんは人混みの中に消えて行った。

 …私は首でも切られるんでしょうかね?まぁ、離縁てある意味クビ切りだけど。雇用的な意味で。いや、夫婦に雇用もくそもないか。


 あとはよろしくルイド様!


「フィリア夫人、先ほどの返しは公爵夫人としては及第点よ」


 私とアリリスさんの会話を聞いていたマリーナル様がそう言ってくださる。


「それはよかったですわ」


「でも、もしユースエン公爵がアリリスを選んだらどうするつもりなのかしら?」


「その時はルイド様に従うまでです」


「そう。…フィリア夫人も大変ねぇ」


 マリーナル様はそうしみじみと呟く。

 えぇ、本当に。勝手に結婚を決めた誰かさんのせいで大変よ…。


「まぁ、これも立派な公爵夫人になるための試練なのでしょう。頑張りますわ」


「応援しているわ。…これはあのアリリスに公爵夫人になられたくないから言っているのであってフィリア夫人の公爵夫人修行には言ってないからね!」


 あぁ、もう!ツンデレ可愛い!どうやら私はぶりっ子よりツンデレが好きみたいだ。まぁ、前世の友人もツンデレだったからなぁ。前世からの好み?


「ふふ、わかってますわ」


「ところで、結局アリリスはどうなったのかしら?なんとなく結果はわかるけど」


 そう言って、マリーナル様と私はアリリスさんが消えて行った方を見る。

 そういえば、遅いなぁ。待っててって言われたから待っているんだけど…。


「そうですね」


 そういやすっかり忘れていたけれど、ルイド様が私といきなり結婚した理由って、周りが結婚しろうるさかったからってのと、令嬢が寄ってたかって鬱陶しかったから、だったわ…。うん、たぶんあしらわれたんだろうね?…どんまい?


 本当ルイド様、女性に興味ないよね。仕事一筋って感じ。

 まぁでもさすがにルイド様好みの女性が現れたら恋すると思うけど。そういう人が現れた時、私をどうするんだろうね?23歳なんて恋真っ盛りなときに私と簡単に結婚しちゃってよかったんだろうか。


「それではわたくしはこのあたりで失礼するわ」


「はい。今宵はありがとうございました」


 そう言い一礼すると、マリーナル様は微笑んで去って行った。

 マリーナル様、ツンデレで可愛かったわぁ。マリーナル様とのお茶が楽しみね。


 この後、もうしばらく待ってみたけどアリリスさんは結局来なかった。むしろルイド様が来た。帰るぞって知らせに。目の奥に疲れたの感情が読み取れる当たり、アリリスさんはしっかりルイド様の所に行ったようだね。どんまい。


 ルイド様にエスコートされながら大広間を出て馬車に乗る。

 ふぅ…とりあえず粗相しなかったからよかった~。…粗相なかったよね?それに友人もできて満足満足。さすが前世の知識、いい感じに役に立つわぁ。


 帰ったら即行寝よう。さすがに疲れすぎた…。社交苦手にあれは荷が重い。


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