表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短篇集50  作者: SOUYA.(シメジ)
7/37

(⑦)これからの約束

今回はファンタジー系シリアスです

「あぁ、寒いのだぁ」

「我慢しろ、あともう少しだ」


 白いコートを着た少女は紺色のコートを着た青年にしがみつく。青年は歩きにくそうにしながらもその足を止めなかった。


「……悪かった」

「何がなのだ」

「…………お前の親、助けらんなくて」


 目を伏せてそう言った青年に少女は「いいのだ」と明るい声を出す。


「こうやってキミと歩けなくなる方が辛いのだ」

「……はぁ、お前なぁ……」

「ワタシは仕事ばかりで帰ってきてもくれない親なんてどうでもいいのだ。ワタシはワタシに会いに来てくれていたキミが助かってよかったのだ」


「…………」


「キミはあの瓦礫(がれき)の中で、自分だけが助かりたいと喚く大人達の中で、よくワタシの親に手を伸ばしてくれたのだ」


「…………」


「キミはよく頑張ったのだ」


「…………っ」


「だから泣かないでほしいのだ」


「……うっ、ごめん、……ごめんっ」


「だから言ったのだ。ワタシは親なんてどうでもいいのだ。キミが助かっただけでも嬉しいのだ」


 少女は青年の背中から離れて隣に立つ。

 顔を掌で覆って涙の流す青年のその手を包み、下ろさせる。


「帰ろう、ワタシ達の家へ」


「これからは2人きりなのだ、守ってくれる大人も居ないのだ」


「だからキミがワタシを守って、ワタシがキミを守るのだ」


 青年は腫らした目をそのままに少女を見る。


「ね? 帰ったら特製のパンを焼いてあげるのだ。

いっぱい食べていっぱい寝て、そしてまた食べて。

元気になったら仕事を探しに行くのだ。そうしてまた始めて行けばいいのだ」


「……っあぁ……、そうだな……」


「さ、帰ろうっ」


 そう言って泥だらけの少女は青年の手を掴む。

 青年もその手を自分から掴む。


「・・・本当は親とこの道を歩きたかった癖に」

「何か言ったのだ?」

「いや、何も」



END

焼きたてのパンって美味しいですよね


閲覧ありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ