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短篇集50  作者: SOUYA.(シメジ)
17/37

(⑰)恋せよ、新人

今回は流血表現ありで人が死にます。

苦手な方は飛ばして大丈夫ですっ

 こてり、と首を傾げた少女は目の前で震える男を見遣る。


「あら困ったわ。これじゃあ足りない」


 コンクリートで囲まれた箱の中で少女の声が響く。

 その手に持つ書類はカサ、と音を立てて下に落ちる。


「ねぇ、困ったわね」

「は、はい・・・」

「ねぇ、


どうして足りないのかしら」


 またこてり、と首を傾げた少女に男の肩がびくりと震えた。そんな男の態度に少女は溜息を吐く。


「詰まらないわ」


 男は顔を上げる事が出来ずに拳を握り締めた。

 少女は床に散らばった書類を一枚摘み上げた。


「ねぇ、これは何かしら? どうして足りないのかしら? 貴方は、何の為に私の部下になったのだったかしら?」


 そう言って少女は男の顎を持ち上げた。

 片手には先程の書類が摘み上げられていて瞳の揺れた男はその書類を見てからバ、と少女から離れて土下座をした。


「すいませんでした・・・ッ!」

「謝罪は要らないわ。何故足りないのか聞いてるの」


 少女は土下座する男の手を踏み付ける。

 そうしてギリギリと力を込めてから少女はソファに座った。


「ねぇ、何故『死体の数』が足りないの?」

「それは・・・ッ!」


「貴方の初仕事だから今回は誰も関与しなかったのよ」


 ポキリと骨を鳴らしてから少女が次の言葉を放とうとした途端の事だった













パァン────、










 ひとつの銃声が響いて。

 何かが崩れて落ちる音がした。




「え・・・?」




「なぁにが『足りない』だ。恋人逃す男前なんだって許してやれよ、お嬢さん」


 銃弾に倒れたのは少女だった。

 既に事切れている少女を見遣ったのはドア付近で煙草を咥えた男。

 正座したまま固まった男に手を伸ばす。


「俺と来るか?」


 男はよく分からぬまま血の匂いがするコンクリート固めされた箱の中で煙草を咥えた男の手を取ったのだった



END

咥えタバコで喋るのって落としそうで怖いですよね


閲覧ありがとうございました

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