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4、さっさと転生しないと読者の方から脅迫状が届くらしい

──今日も一文字も進まなかった。


13時にノートパソコンを開き、18時にそれを閉じるまで、俺はただ黙ってそこに腰掛けていただけであった。


……まったく、なんという無為な日々であろうか。思えば、章タイトルに「長谷川四郎とその亡霊」とつけてもう五日間が経つ。いったい何が「その亡霊」なのか。書いた頃の自分に問い正したいものだが、なんの意味もないことは誰よりも自分が知っている。


アクビをした。首に鈍い痛みがのしかかった。視界に靄がかかった。と同時に、違和感が走った。

はじめ、それが何に関する違和感なのか判らなかった。ただ、漠然とした、違和感としか言いようのない感覚に襲われたのであった。


ノートパソコンを見た。特に変なものは感じなかった。


机に積み上げた本の束を確認した。これにも異変はなかった。


食べかけのポテトチップスを見た。



!!



直感的に、違和感の正体がこれであることを悟った。


……これは、薄塩味だったか……!?


いつも俺は、ポテトチップスを買うときは、新発売であるとか、期間限定であるとか、ともかく珍しい味のものを買う(俺が一日のうちに唯一外出する機会である。散歩をかねる)。それは、毎日食べるために厭きが来やすいからであり、薄塩味なんぞいう、スタンダードなものは、もう何ヵ月も買った記憶がなかった。


このポテトチップスは、昨晩、遅くに開けたものである。朦朧とした記憶ではあるが、一口食べて、妙に辛かったのを思い出せる。うつらうつらしていたところを、不意打ちされた心地だった。味の名前は……、いや、思い出せない。少なくとも、あれが薄塩のはずがなかった。


俺は、一階にかけ降りた。リビングで母がパソコンを開いてるのを認めると、ポテトチップスの袋を目の前に差し出して、


「これ、買った?」


母は、きょとんとした顔で、

「いやぁ……?」

と言った。そして、

「ポテチならいつもあんたが買ってくるじゃない」

と言って、パソコンに視線を戻した。


俺は、

「いや……買った覚えがなくて……間違って母さんが買ったのを食べてしまったのかと……」

とモゴモゴ言った。


「可能性があるとすれば、お父さんがパチンコで貰ってきたか、ね」

と母は心底どうでもよさそうに言った。


俺は気分が悪くなり、自分の部屋に戻った。そして、ほかに異変がないか、部屋中を点検した。その結果、以下の三点の異変が見つかった。


1、開けたばかりのはずのティッシュがすべてなくなっている。

2、買ったはずのないCDがある。(X JAPANのベストアルバム)

3、借りた覚えのないTSUTAYAのDVDがある。(『ロッキー』)


……まったく、意味が判らなかった。「1」と「2」は、なんらかの思い違いということがありそうであるが、「3」に至っては、借りた日付が昨日になっており、しかし昨日はTSUTAYAになど行っていない。というか、アマゾンプライムに入ってから半年くらいTSUTAYAに行っていない。


俺は、うすら寒い心地を覚えた。が、仕方がないので『ロッキー』を見ることにした。



別に普通の『ロッキー』だった。





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