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1、知りもせずに転生ものに挑む

ノリで書きました。大学のある日、通学電車で書きます。つまり、じっさいに論文が進んだ週は更新できるわけです。

まどろんでいた。

いつからかは判らない。

ずいぶんと論文が進んだ気がしたのだが、どうやら夢だったらしい。


……またか。


最近はずっと、こんな調子だ。夢で論文が進み、起きて白紙に戻る。一時間ごとに目が覚めるので、一日のうちに最低六回はこの夢を見る。夢の中でこれは夢だと気づき、絶望して目覚めることも少なくない。


俺は、枕元の眼鏡をとって、かけた。そうして、食べかけのポテトチップススーパーブルーベリー味を一枚、口に入れた。ハナクソの味がした。

スマートフォンを確認すると、もう14時を過ぎていた。心療内科の予約の時間まであと一時間。もう家を出なくてはならなかった。俺は、上はTシャツのまま、下だけジーンズに履き替えて、尻ポケットに財布をぶちこんで、部屋を出た。


一階に降り、洗面所に入ると、母が洗濯物を干しているところだった。視線がぶつかり、瞬間に、室内の空気が圧縮された。俺は、小声でオハヨと言って、水だけ使わせてもらった。歯を磨くのは諦めた。



外に出ると、小雨だった。ビニール傘を一本抜いて、開いた。まだ新しいものであるらしく、塩化ビニールの臭いが鼻をうった。俺は灰色の街を歩いた。


駅につく。ホームに出ると、ちょうど、電車がすべりこんできた。乗ると、扉近くの席が空いていたのでそこに座った。

昨夜飲んだ七つの薬が、腹のなかでポテトチップスとまざって、渦巻いているのが感じられた。途端、猛烈な便意がきた。

スマートフォンで時間を確認し、心で舌打ちをし、やむやく次の駅で降りた。


HG嫁も驚きの、朝からドッサリであった。俺は、呆然としたまま、便器に座り続けた。さっさと死にたいものだと思った。


どこにいても、そいつのけはいはつきまとってきた。死ではなく、生のけはいだ。あと何十年生きなくてはならないのであろうか。

スマートフォンを確認した。そして、乗間案内アプリを開いた。二分後に来るものに乗れば、間に合いそうだった。



結局、予約時間ぴったりに着いた。前の予約の人がまだ終わってないらしく、待たされることになった。俺はスマートフォンで、Twitterを確認した。高校時代の友人が、痴漢でつかまった、免罪だ、と呟いていた。いいねが30ついていた。なんて元手のかかったツイートなのだろう、と呆れた。俺もいいねした。何がいいのかは判らない。


十分後に、呼ばれた。担当医は、『ツレがうつになりまして。』のツレそっくりの容姿をしている。本物のツレより似ている。医師としての腕はよくないが、雰囲気が良いので、ずっとこの人に診てもらっている。


俺は、先週変えた薬が自分にあっていなかったことを告げた。下痢になるというと、ツレは、あれであまり下痢になる人はいないのですがねぇ、と、不思議そうに言った。不思議がられて、俺は傷ついた。


それから、近況報告をした。論文が進まなくて、ゼミに出られないと伝えると、ぼくもそうでした、と返された。先週も、先先週もやったやりとりだった。あまりにも先週と同じなので、これも夢なのではないかと思った。腕をつねってみたら、痛みを感じなかった。おそらく薬のせいだと思うが、これでは確認にならない。


現実感のない頭で、しばらくツレの話を聞いていたら、また新たに薬を変えてみるか、ちょっと異世界に転生してみるか、という二択を迫られた。俺は、腕をつねった。

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