『猫人観察』
「う〜ん……やっぱ猫なんだか人間なんだか…」
今日は土曜日、僕は休みだ。と言うことは
「(一日中黒を観察できる!)」
鼻息が荒くなっているが別にやましい意味では断じてない。
「耳は…やっぱこの大きなやつだよな……」
姿はまるっきり女の子なのだが、人間の様な耳はなく、代わりに大きな黒い耳が二つ。
最初、黒がこの姿で僕の前に現れた時は、カチューシャか何かだと思っていたのだが、これは本物の耳らしい。今もしきりにピクピクと動いている。
「ん〜……でも髭とかはないんだよな…普通猫なら髭は絶対必要なんだけど……)」
猫の髭は、一見するととても可愛らしいが、実際は鼻の横だけではなく目の上などにも生えており、髭に物が触れると瞬時に目を閉じるなどのセンサーをしている。
他にも様々な役割を担っているため、とても除外できるものではないのだが……
「(……全然無いな……本当どうなってるんだ…)」
まぁでも、大きな耳以外は普通の人間の様だし、多分人間寄りなのだろう。
「しっかりとした結論が出せないのは悔しいけど……分からないことがあまりに多過ぎて処理も説明もできやしない……」
苦笑しながら黒の頭を撫でると、気持ちが良さそうに目を細める。
……こう言うところは猫っぽいんだけどなぁ…
「ニャー!」
僕が考え事をしていると、急に撫でるのをやめたのが嫌だったのか。黒は僕の手を引っ張る。
「分かった分かった。よしよし。」
また撫でると、これまた猫の様に喉を鳴らす様な声を出して
コテン…
僕の膝に寝転がった。
「ちょっ、黒?」
戸惑う僕には御構い無しで「もっと撫でて!」と言う様に腕を引っ張る。
……ちくしょう。可愛いな……
仕方なく頭を撫でると、気持ち良さそうにして体重を僕の膝に預ける。
ーー
どれくらい黒の頭を撫でただろうか。そろそろ足が痺れてきたあたりで黒の顔を覗き込むと、スヤスヤと眠ってしまっていた。
「全く…おやすみ。黒。」
ベッドに黒を横にし、シーツをかけると、僕は部屋を後にした。