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一人と一匹暮らしの日常  作者: 音葉 響鬼
3/13

『子猫…?』

「ニャン!」


「……えっと…」


動揺する僕の前にいるのは、さっきまで僕が可愛がっていた子猫ではなく、黒いドレスのような衣服を身に纏った、黒髪の少女。


…いや待て、そんな訳がない。


「えっと…君、どこから入ってきたの?」


悪魔で下手に、恐る恐る聞いてみる。


「…ニャァ?」


いや、ニャァ?って…


「(そう言えばさっきも「ニャン」って…)」


……あれ?おかしいな。


不思議がって少女を見ていた僕だが、ある重要なことに気付く。


長い黒髪の伸びる頭。そこにピョコンと、二つの大きめの耳。


「…………」


で、しっかりと本来の耳のあるべき場所を確認するが、それらしきものはどこにもない。


特徴のある猫耳が頭にあるだけ。


……そういえば若干肌が濡れているな。


露出したきめ細かな素肌は、何故か少しだけ濡れて更に色めいている。


顔を火照っているようで少し赤い。


「(まさかこの子がさっきの……いや、流石にそれは…)」


「ニャ〜?…」


僕が悶々と思考を巡らせていると、それを不思議がった少女が僕の顔を覗く。


「あ〜えっと…どうしたらいいだろう…」


戸惑う僕。それもそうだろう。いきなり可愛がっていた猫が消え、代わりに女の子が出てきたなんて、誰がすぐに冷静になれるか。


「(と、とりあえず一度頭を冷やそう!)」


決断し、玄関のドアを開けて外に出る。


「…ふ〜……」


一体どうなっているのか。先程までの猫はどこに消え、あの子は何処から現れたのか。


「(確かに僕一人で家に入ったはずなんだけどなぁ…)」


色々と考えているうちに、大分頭も冷めた。とりあえずあの子の対処をしなければ


ニャ〜…?


「ん?…あ!君!」


ふと足元からしたら猫の声に目を向けると、先程の子猫だった。


「何処に行ってたんだ…?びっくりしたよ…」


まぁ。何はともあれこれで万事解決か…


ガチャ……バタン。


扉を閉め、靴を脱いで部屋に上がった瞬間


「…うわっ!?」


いきなり両腕に重力が掛かり、危うく落としそうになる。


……ん?落としそうになる…?


「ニャア?」


「…ってうわっ!?」


僕の両腕に収まっていたのは、子猫ではなくさっきの少女。


丁度お姫様抱っこという状態だろうか。


「……って、あああ!ごめん!」


慌てて少女を床に降ろす。


「(でも…今の…)」


今度は間違いない。靴を脱ぎ、重みを感じるその瞬間まで、僕は猫を抱き抱えていたのだ。


………と、すると


「……君が………あの猫なのか?」


「ニャア?」


ーー


「ん〜……」


学校の帰り、僕はずっと唸っていた。


「(結局あの後は簡単な食事を済ませて、一応家を出る前に昼食も作り置きしておいたけど…)」


やはり、どうしたら良いか困る。


昨日のあの一件から、恐らくあの子はあの猫と見て間違いないだろう。だが、現実にそんなことがあり得るだろうか。


「(なんだか…よく分からないことが起きてるよ…)」


頭を抱えつつ、家の前に着き、玄関のドアを開ける。


「ただいま…」


「ニャン!」


で、猫語?でお出迎え。


「(一応ちゃんと二本足で立ってるし、なんなら走ってるけど…箸とか全然使えてなかったな…)」


なんだか人間なんだか猫なんだかよく分からない。


「……?」


不思議そうに小首を傾げる。


……こうして見ると無茶苦茶可愛いな。この子。


「(まぁでも…)」


分からないことは多いし、謎ばっかりだけど


「これから宜しくね。」


それでもやっぱり、あの子猫に変わりはないのだろうから


「……あ、そうだ!名前を付けなきゃ!」


肝心なことを忘れていた。


「ん〜どうしようかな…君はどんなのがいい?」


「…ニャ?」


まぁ分からないよね……


「ん〜………そうだ!…黒い髪に黒い服。全身黒尽くめだから、黒にしよう!」


「ニャン!」


これから、僕と黒の、ほのぼのとした生活が始まる。

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