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最弱の王  作者: ぱるお。
1話 魔法の使えない魔法使い
5/27

決着

 

 勝敗結果


 勝者 H1-E 黒子日輪 RANK外→RANK84


 敗者 H1-E 神山大和 RANK84→RANK85




 会場に驚愕が走った。


 無敗のままランキングをここまで上り詰めたヤマト。『暴風雨』の異名で恐れられたその彼を、まさか魔法の使えないヒノワが打ち破るとは夢にも思わなかった。


「すごい! あのヤマト君を倒すなんて!」


 観客席で見ていたのか、降りていたツキヒがヒノワの元に駆け寄る。


「ツキヒ、見てたんだ。言ったでしょ、大丈夫ってさ」


 へらっと笑う。どんな不名誉なレッテルを貼られようが、負ける気は一切無かったようだ。


「うんうん! 本当にすごいよ! どんな技を使ったの?」


「それはまた今度、ね」


 ヒノワの使った簡易強化魔法。詠唱もいらない魔法程度では、試合で見せた速さは出せないはずだった。同じ体術寄りの魔法使いとして、ぜひ教えて欲しい技である。


「それよりも……」


 ヒノワは、膝をつき息も荒々しいヤマトに歩み寄る。


「本当に鍛え上げられた精神力だね。意識狩り取るつもりで殴ったのに」


「へっ、馬鹿にするなよ……俺はそこまでヤワじゃねぇ」


 額に汗をにじらせながらも、痛みを振り払うかのように笑い立ち上がる。無理に立ったからか、ついよろめいてしまった。


「おっと、大丈夫?」


 倒れる寸前のところで、ヤマトの体を支えた。ゴツゴツした肉体に触れ、精神だけでなく肉体も常に鍛えられていることが改めて分かる。


「すまねぇ……ちっ、情けねぇな」


「はは、遠慮しないでよ……友達なんだからさ」


 言われ、思わず顔を背ける。


「……性に合わねぇが……俺も男だ。約束は守る」


「男同士の友情、ってやつだね!」


 すかさずツキヒが茶々を入れる。


「うるせぇ、てめぇには関係ねぇだろ」


「あるよ! ヒノワ君とはペア。相棒なんだからさ」


「即席のくせによく言うぜ! どうせ大した事ねーよ」


「なんだってー!? ヤマヤマだって、ヒノワ君に負けたくせに!」


「ヤマ……てめぇ、変な呼び方するんじゃねぇ!」


「神山ヤマトだからヤマヤマだよ! なに、文句あるの?」


「大有りだわ! 撤回しやがれ!」


「なに、私とやり合おうっての?」


「おう上等だコラ、かかってこいよ!」


 先ほどまでの倒れる様子は何処へやら、いつしか二人睨み合い怒鳴りあっていた。


「まあまあ、二人とも——」

「ヒノワは黙ってろ!」

「ヒノワ君は黙ってて!」


 止めに入ろうにもすっかり蚊帳の外である。諦めて放っておくことにした。


「しかし驚きました、ヒノワ君。君がこれほどの実力を持っているとは」


 白衣の教師が賞賛の声を贈る。教師陣の間でも編入生の噂は良くないものばかりであった。


「あの神山君を破るとは大したものです。戦いぶりを目前で見ましたが、いや見事なものです」


「いや、彼が正面からぶつかってくれたからこそ、ですよ。最初から奥の手を使われてたら分かりませんでした」


 ツキヒといがみ合っているヤマトを一瞥する。威圧では到底表しきれない程の禍々しい妖気が、彼の、特に閉じられた右目からひしひしと感じられる。どんな力が隠されているのか分からないが、封じられてもなお身に危険を感じるほどのものだ。


「……驚きました。彼の力が分かるのですか?」


「いえ、どんなものかは分かりませんが、何かある程度には」


(あの妖気に当てられて平然として相対していたとは……本当に大したものだ)


 普通では感じられないヤマトの妖気。感じずとも無意識に避けてしまうその妖気を、感じてなお立ち向かっていった。精神力というのであれば、ヒノワの方こそ鍛えられているというものだ。


「これ、私の名刺です。良ければ研究室に遊びに来てください」


 受け取った名刺には、高橋ゼミ・高橋ケンイチと書いてある。火那魔法学園では研究室を持っている教師も多い。魔法とはいつまで経っても謎の多い研究対象なのである。


「私の研究室では、主に召喚・契約魔法を研究しています。君の魔力で使えるものは少ないかもしれませんが、学ぶだけでも面白いものですよ」


 その中でも召喚魔法や契約魔法は、異世界との交信を行う高等技術である。それに今の彼(・・・)にとってはとても縁遠いものでは無かった。


「はい、ありがとうございます」


 名刺をポケットにしまい、今にも取っ組み合いに発展しそうな二人を宥める。特にヤマトは一度脳震盪を起こしているはずだ。早く医務室に向かいたかった。


(黒子ヒノワ……面白い生徒が入って来ましたね……)


 罵声や怒声の未だ飛び交う闘技場を、三人が出て行く。ケンイチはその後ろ姿を見送った。


 と、彼の頭に。


「あだっ!」


 誰かの投げた空き缶が当たった。



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