6/8
◇ 教団の生け贄 共通①
――陽も落ちかけ、辺りが暗がりになる頃。遊んでいた村の子供達が家へ帰る時間だ。
『また明日ね、ヴィン』
『ああ』
『ばいばい、ヴィン』
布をまとって顔を隠し、よその国の者と思われる大人達は村にやって来た。
『お前がヴィンだな?』
『うわあああ!!』
『ヴィン!?』
ローブの者達は少年を取り囲み、何等かの言葉を唱えて気絶させた。
『あぶないよフュナ!』
『クリストはなして!ヴィンを連れてかないで!』
――無力な子供達には大人に抗う事などできなかった。
『ヴィンを返してよ!』
フュナは彼らの中でも少し背の小さな者にしがみつく。
『フュナぁ!』
クリストは彼女が殺されてしまうと目をおおった。
『いかないでヴィン――――!!』
叫びも虚しく、ローブの者等は姿を眩ませる。
『……悪いな』
差し出された花の甘い香りによって意識は途切れる。
その間際に聴こえたそれは、若い男の声だった。