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∮呪詛姫の断罪 共通① 邁進の科学者は生け贄を求める
彼女に触れる者は皆、心臓が痺れて瀕死となる。
神の裁き、あるいは魔王に魅いられた娘。
そう呼ばれながら、少女は疎まれても、心が凍りついても一人で生きてきた。
少女は飲まず食わずでも痩せないし、いつも埃をはらい落とすだけで洗わずとも汚れない身体をもっている。
そんな奇跡の中で普通ではない人間として生きられていたのだ。
「やっとあの娘が処刑されるらしい」
フランポーネ領のシュヴァルツェ村にいる少女の噂を聞いたマキュス国の王は、気味が悪いという理由から弾頭の刑にかける。
村人は嬉々として、兵の到着を待ち、ようやくその日になるが、刑は中止された。
理由は単純明解で、少女が失踪したことで、行えなくなったからだ。
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「私を逃がしたことがバレたらどうするの……」
「その時は他国にでも逃げるよ。生きていつかまた会おうセイレ」
少女より一つ下の少年は隣国トロカピアンのトスカール領との国境まで案内し、シュヴァルツェ村へ戻った。
トスカールには少女の幼馴染がいる。少女の呪いはシュヴァルツェ村の人間にしか効かないので迷惑はかからないはずだ。