б白狼と茶兎 共通 強き正義は巨悪と紙一重
――遥か昔、緑の国グリーンティアと火の国フィエールは争い、マージンは緑を焼き付くす。
あまりに小さく、とるに足らない村だけは支配を免れてた。
数十年が経ちとうとうグリーンティアに残された小さな村“リーフレット”がフィエール帝国のマージン王の軍に見つかり、一夜で村は滅びた。
●
―――私はココンヌ。父親を産まれた時に亡くし、それから母も五歳の時流行り病で亡くなり祖父母に小さな村で育てられた。
年が近く数少ないホールとはそこで知りあう。
しかし、ある理由からレジスタンスの仲間になる。
――私達が出稼ぎに出る前日にマージン帝国軍にリーフレット村を焼かれ、家族を喪って唯一生き残った私達は村を出た。
利益の為に理不尽に奪う
皇帝をとにかく許せないのだ。
“悪い奴を倒したい”それ以外には何も考えられない。
そんな私の前に、帝国を討ち取りかつての自然を取り戻すべく、志しを同じくする彼等“レジスタンス”が現れた。
寄せ集めで人員が足りないらしく、私はすぐに歓迎されて、レジスタンスの仲間になった。
「へーこれが武器用ナイフか~」
私は前日与えられた武器を眺めている。
あくまで身を守る用に使うもので、安易に人を傷つけてはいけない。
――しかし殺すための刃物を嬉々としながら眺める人間など、私の他にいるだろうか?
「おい、顔に近づけたら危ないぞ!」
幼馴染のホール=カッターが私からナイフを奪ってケースにしまった。
「まったく、おまえはいつも後先考えないよなココンヌ」
ホール=カッターは私を追いかけてレジスタンスに入ってくれた。
危なそうなことに巻き込んじゃって申し訳ないとは思うけど、私が入るのを止めないと、ホール=カッターは安心できないらしい。
「お前ら仲良いんだな」
彼はキーク。レジスタンスのリーダーで若い赤毛の青年だ。
「幼馴染みですから、よく周りのジジババにココンヌとの仲を冷やかされたり迷惑な思いをしてました」
「オイオイ、可愛い幼馴染がいながら迷惑たあ良いご身分だな~」
「なんか、爺さん婆さんと同じようなこと言いますね」
「オレの考えがはジジババ並みに古いっていいたいのか!?」
向こうで二人は何を話してるんだろう。
「ちょっと良いですかココンヌ」
レジスタンスの参謀、シャーノ・オペラが私を呼んだ。
「はい?」
「馬鹿二人は放っておいて任務を……」
「任務……!」
ついに私に初仕事が来たらしい。なんだか、カッコいいなあ。
――というわけで、私はお屋敷に私はハウスキーパーという家事をやる人を演じるのだ。
可愛らしいエプロン、黒のスカートでまるで女中のような格好をして侵入する。
オペラさんの話では、異国からの賓客らしいが賓客ってなんだろう?
一先ず情報を持っているくらい偉い立場だって考えればいいのかな。
屋敷には人がほとんどいなくて、屋主と思わしきいかにもお金持ちそうな格好の銀髪の青年が私を待ち構えていた。
「あの~新しく雇われました。ココンヌです!」
「やっと来たか……ここにいるのは今の所君だけだ、よろしく頼む」
それってここにいるメイドが私だけって意味なのかな?
こんなに広いのに、雇ったのが一人だけなんて変なの。
最近ここに来たばかり、だからって使用人がいないのはおかしい。
「その細腕では大変だろうが、ともかく頼んだぞ」
この屋敷で軍の情報を聞いてこいって言われたけど、情報を探るって、どうやるんだろう。
彼から急いで掃除しろという感じがしないから、軍の関係者が来る気配がないし。
「ところでお前……武器を持っているのだろう」
私は武器を出していないが、唐突に聞かれた。
「はい」
私は殺気なんて出していないのになんでわかったんだろう。
「カマをかけただけなんだが、まさか正直に答えるとはな」
面白いといって彼が少しだけ笑う。
「正直に話したらだめなんですか?」
もうバレてるから私が嘘ついてもしかたないと思って話したのに、なんで彼は驚いてるんだろう。
「…普通は駄目だろう。只の人間ならば嘘を見抜かれても尚あがくものだ」
「じゃあ私を殺すんですか?」
今のところ彼は私を殺そうとする素振りはない。
「いいや、相手が‘俺’でよかったと思え。只の人間ならばまずは地下監獄行きだ」
「ごめんなさい取り合えずは貴方を殺しにきたわけじゃないんです」
「……どうやらお前は唯の人間らしいな」
「えっと、意味がわからないんですけど私はどうしたらいいんですか?」私が武器を持っていると言っても、青年は変わらず冷静だ。もしかしなくても、これって任務失敗だよね。
「どこから嗅ぎ付けたかは解らないが、俺は帝国…いいや、お前達とはまったく関わりのない存在なんだ」
―――つまりこの人からは帝国の情報を聞き出せないってことになるのだろう。
「……じゃあ私帰ります」
「まあ待て」
青年は指を弾いただけで、扉に触れずに鍵を閉めた。
「え?」
魔法使いは見たことはないけど、そういう力を使う不思議な人達は山奥に居るらしい。
もしかしたらこの青年もそうなのかもしれない。
「貴方は魔法使いさん?」
「――違う、下等な族と同義扱いするな」
じゃあ、なんなんだろう。
「貴方は一体…」
「俺は魔界から来た。悪魔ビスキュイ=コンビフスだ」
●
ココンヌが屋敷を調べている間、ホールは奇妙な女と邂逅していた。
「アタクシはプリマド、ヨロシクね」
妖艶な女が迫るが、ホールはそれをスッと避ける。
「お姉さん美人だけど、俺のタイプじゃないからお断りします」
あからさまに社交辞令、といった様子で微笑む。
「つれないわねェ後3年くらいしたらアタクシの魅力に気づくはずよ」
女はホールの首筋に滴る液体のついた長針をちらつかせる。
「その口調からしてごめんだね」
「あっそ!」
機嫌を悪くして、女は去っていった。
●
「はあ…どうしよう」
『俺はお前に協力してやろう』
『え? なんで?』
まさか悪い奴の代名詞の悪魔さんが敵を倒すのに味方してくれるなんて。
これってミイラトリがミイラじゃない?
「おかえり、早かったな」
「ホール」
なんだかげっそりしている。
「……さっき変な奴に出会しちゃってさ」
「変な奴?」
「それってアタシのことかしら~?」
「……げ」
現れた妖艶な女にホールは最悪だと言わんばかりの反応。
「誰? ホールの情婦?」
「おまっ…どこでそんな言葉を!?」
「シャーノ=オペラが」
「おいちょっとオペラさん!?」
「なんだ……さわがしい」
「キークさん聞いてくださいよつーかなんでいんだプリマドが!」
「落ち着いてホールカッター」
「静かにしろホールカッター」
「あんたら馬鹿にしてんのか?」
●
「へー。仲間が増えるよ、やったねホール」
プラマドという謎の女は仲間私たちのになったらしい。
「よくはねぇよ……?」
ホールは敵のスパイではないかと彼女を疑っている。
「私の他に女の子の仲間ほしかったし、これでもうホールを女装させるかさせないか議論しなくてすむよ」
「……そんな議論してたのか? オレ以外のやつと……」
●
「暇だなぁ」
リーダーのキークは二日酔いで、サブリーダーのオペラは何やら書斎にこもっている。
私たちは今日、特に何もすることがない。
ああ忘れていたが私はこの前ビスキュイに何を言われたんたろう?
屋敷にいって帰ってきたけど、やばい記憶にない。
たしか皇帝をぶっ倒す協力をしてくれるとかなんとかって言ってた。
アイツどう協力してくれるのかまったく話してくれなかったんだけど。
「それにしても、たった三日でスパイしたり新しい仲間が増えたり大変だな」
ホールカッターに言われるまで忘れていたが、私達はレジスタンスになってまだ三日しか絶っていない。
ああそういえばプラマドはどこにいるんだろう。彼女は私たちのようにまったくの素人新人というわけではなく他の組織から抜けてから来たらしく結構強いみたいだ。
「そうだ。ホール!」
「なんだ?」
「今から一緒に協力者のとこに来てくれないかな。他の人は忙しそうだし」
「ああわかった。じゃあキークさんに報告して今から行こう」
「え、シャーノ=オペラにじゃなくて?」
私はシャーノ・オペラから指示を出されたからキークじゃなくても参謀のそっちに報告しようと思っていた。
「一応リーダーだしさ」
◆ホールはそういうけど。
〔キークに報告する〕
〔ホールに任せる〕
〔シャーノに報告する〕
〔プラマドに頼む〕