空室
「先ほどは失礼しました。
僕は浦野と申します。」
男はぺこりとお辞儀する。
「そしてこちらは「必要ないわよ!」
その子ははっきりと私を見下して言った。
「私はこの子とは関わらないから。
一応、私は止めたからね。」
「あはは、すみません、強情で。」
「ふん。」
私を一瞥して店の奥に消えた。
「彼女の事はまた今度にしましょうか。
何か飲みますか?」
「水をください。」
「お水で良かった?」
「はい。」
彼は私をカウンターに座らせて、水をくれた。
「歓迎します。
中には彼女の様な人も居ますが、そこは気にしないで下さい。」
「はい。」
「ここは、はぐれ人形人食種の集まり。
そして、はぐれ上位種の隠れ家でもある。」
「上位種?」
「人形人食種とは別の、来るべき人類の進化。」
「それって?」
「簡単に言ってしまえば超能力者とかかな。
まあ、そんなに派手なのはウチには居ませんから。」
「はぁ…」
「ともあれ、これからよろしくお願いします。」
「あ、よろしくお願いします。」
握手を交わした。
「じゃあ君の部屋を案内します。」
「ここを使って下さい。」
店の裏側とは思えないほどの、
漫画などに出てくるような地下施設があった。
通されたのは、机とベッドが置いてあるだけの部屋。
「前に、あの方、
君をここに案内した人が使っていた部屋です。」
「いいんですか?」
「まだしばらくは帰ってこないだろうし、
それに、他に部屋が空いてませんので。」
「分かりました、ありがとうございます。」
「何かあったら遠慮なく言って下さい。
私は上に戻ってますから。」
「はい。」
ベッドに寝転がった。
匂いはしない。
初めてのベッドだ。
前は、
前は、
何だっけ?
思い出せないけど、きっとベッドではなかったのだろう。
何だか寝付けない。
頭が回らない。
落ち着かない。
気を紛らわせるために机の引き出しを漁った。
1つだけあった膨らんだ茶封筒を手にとった。
中には注射器と手紙が入っていた。




