常夜の終わり
最後に残った最期の感情。
恐怖
ただただ怖い。
怖くて恐くてしょうがない。
だから、殺す。
殺されたく無い、から、殺す。
あの日からずっと ずっと ズっと、
から、自分ですら殺した。
友の死を目の前に、ただ友の死を言い訳に、
自分だけが死なないように生きて来た。
例え死んだように生きたとして、私はそれを醜くとも生と呼ぶ。
逆説にもならない我儘をこれまでも、これからも、
ただ、ただ、繰り返して繰り返した繰り返す。
何度も何度も何度も何度も
ただ
生きていたかった
のに
終わっていくそれに気が付いたのは、
終わった後だった。
彼女は今目の前で重荷を捨てた。
その肉体の重みが腕の中で。
彼女は解放された。
死の恐怖から、死によって。
そして、さらに、
彼女の体はただの肉、その魂はこの先穢れる事はなく、穢す事は出来ない。
その罪を抜け殻に託し、ただ、ただ、自分だけが、
そんな死に方をしたかった。
今となっては自分を殺す者、殺せる者も居なくなったこの場では、
ただ彼女が羨ましくて堪らなかった。
から、食べた。
そうすれば彼女の肉体は、俺の中で、。
そんな事を思いついたから、
町中の全員を食べ尽くす事にした。
人々は生き続ける
人々が生き続ける
俺の肉体で、
そうすればきっとこの孤独も埋められる。気がする。
全て自分で招いた。
のだから、自分で解決する。
全部全部、全員が全員、
たべてしまえばいい。そう
そうすれば孤独に。
そうすれば孤独が。
引くに引けず、止まり方を忘れたのならば進むまで。
引き返せないのなら、立ち止まることも無い。
もはや誰が誰で、何者か、動く者であればその肉を貪った。
転がる死屍に見向きもせず、築き上げた罪を高々に、自分が何者かも怪しくなって来た。
どうして自分がこんな事をしているのか、
そう思った頃にはこの町全体から人の気配が消えていた。
いや、元々この町に人なんて住んでなかった。
それなのに、
こんな町に思い入れなんてなかったはずなのに、
何かが込み上げてくる。
誰かとの思い出の、そして誰かを失った場所。
今更、いまさらそんな事を思い出した。
「ここから先には行けないよ。」
ただ、そんな事で立ち尽くしている暇はない。
「私の代わりに殲滅してくれて助かったけど、
私としては君も殺さないといけない。」
早くしないと空腹になってしまう。
「悪いけど、ここで死んでもらうよ。」
何かが腹を突き破った。
だけど、そんな痛み、空腹に比べればなんて事ない。
「何!?」
目の前にいた人の首を握る。
「っぁ!!?!」
次は握っていた腕が痛んだ。
「えぅっ、ッホ、ゲホッ、」
折れた腕でそれでも力いっぱい殴りつけた。
「!」
彼女はそれを受け止めた。
「侮っていたよ。」
腕が関節と逆に曲がる。
「終わりだ。」
最期にそう、聞こえた気がした。
それから 痛みと空腹が冷たさをもって支配していくのを感じた。
寒い、さむい
誰かに暖めて欲しかった。
そんな誰かはもう…
「これが最後か…」
まるで自分に皮肉を聞かせるように彼女は言った。
「これが選択の結果。
じゃあね、綺音。また、後で。」
彼女は男の頰に手を添えた。
先生をもっと高貴にする予定だったのにいつの間にか、ただ生に執着する人間になってしまった。
まあそれはそれで良いとは、今は思いますけど。




