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空の空  作者: lycoris
空の空
75/115

外裏

これから説教が始まると思ってた。

「まあ聞け。」

先生は私の正面の椅子に座った。

「…」

「これも青春だから、

なんて臭いことを言いに来たんじゃない。」

「…」

は?

「もっと重要だ。

お前の人生を決める話じゃない、

これからのお前の人生そのものの話だ。」

どっちにしろ壮大だと言うことしか分からない。

「高崎は、私は、お前は、

この町の皆々は全員が、漏れなく化け物だ。」

耳を疑った。

「人の形を成し人を食らう新種『人形人食種(ヒューマノイドヒューマンイーター)』という名の。

これからの人類を3通りの進化に導くキーマンだ。」

冗談にしては空気が重い。

「そして、高崎はその人類の『人形人食種(キーマン)』のさらにキーマンだ。

はっきり言って私たちとは別格。」

困惑する最中でも話は続く。

「だから君に頼みたいことがある。」

何の話をしているのか、何故この話をしているのか、

この話を聞いてどうなるのか、

聞こえてくる言葉(おと)の意味が分からない。

「君の手でこれから行われる学園祭の"最後"を滅茶苦茶にして欲しい。」

ここだけは意味がわかるが、意図が分からない。

「なんで?」

「私の話が真実だと証明するために。」

「証明してどうすんの?なんで私なの?」

「ふふ、それは照明が終わった後。

真実は最後まで分からない。

だから、これから君が目で見るものが真実(こたえ)になる。」

「嫌だって言ったら?」

「君は一生高校2年生だ。」

「そんな事出来る訳ないじゃん!そんなの親が黙ってないし!」

「あー…君の一生は高校2年生だ。って言えば分かる?」

「あんたなんかに殺されねぇよ!」

不気味さと身の危険を感じて逃げようとした。

「殺すんだったら、普通こんな話しないよね?」

「いっ!!?」

腕を掴まれた。

だけなのに、肩に鈍い痛みが走った。

「どっちにしろ長生きはしたいよね。」

普段通りに笑う先生の笑顔に身の毛がよだつ。

掴まれた腕がどんどん冷たくなっていく気がした。

「死ぬのは簡単だ。死んだ先はもっと簡単だ。

だが、死ぬまで"それ"は分からない。

分からない"それ"=未知だよ。

私は未知(それ)が怖くて堪らない。」

掴む力が抜けて行く。

「君に分かるか?

分からないという恐怖が。

何故生きているのかですら怪しいというのに、

死は未知なんだ。

未知のまま未知そのものを抱えて、その先が、もう

私はただ漠然な未知(きょうふ)から、死から少しでも離れていたい。

私は"それ"を知りたい。

だが、同時に知りたくないし、死にたくないんだ。」

尚も発せられた言葉が頭で結びつかない。

それなのに、動けないでいる。

「そうして私は10年と生きながらえた。

自分の事ですら分からないのに他人なんて尚の事だ。

始まりは友の死だった。

それなのに今は、他人の死には目もくれず、ただただ自分の未知に怯えてる。

…すまない、話が逸れたな。」

「…」

人は見かけによらない。

「つまる所、私は死にたくない。

その私利私欲の為に、頼む。」

「嫌だ!」

でも

「嫌だ!嫌だ!嫌だ!!

そんな事言ったって私には分からないよ!」

私は

自分で思っていたよりも

我儘みたいだ。

「分からない…死ぬなんて考えた事もなかった…」

死んだら全てが終わる。

「本当にそれで生きられるの…?」

「少なくとも数年は寿命が伸びる。」

「…」

俯いたまま迷った末の答えを 、

「…頼むよ。」

 先生は手を離した。


「お互い長生きしよう。

私は醜くたって誰よりも生き抜くつもりだ。」

そう笑う先生がいつもより楽しそうに見えた。





















「=」の部分は「は」と読ませるつもりで書きました。

未知 (バカ)は恐怖、は私が現実でも感じてる事ですね。

彼らの思考は理解不能。

自分が理解不能な事を理解している相手、つまり恐怖以外の何者でもないですね。

そして自分はそれをひょっとしたら永劫知る事はないのだから。

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