外裏
これから説教が始まると思ってた。
「まあ聞け。」
先生は私の正面の椅子に座った。
「…」
「これも青春だから、
なんて臭いことを言いに来たんじゃない。」
「…」
は?
「もっと重要だ。
お前の人生を決める話じゃない、
これからのお前の人生そのものの話だ。」
どっちにしろ壮大だと言うことしか分からない。
「高崎は、私は、お前は、
この町の皆々は全員が、漏れなく化け物だ。」
耳を疑った。
「人の形を成し人を食らう新種『人形人食種』という名の。
これからの人類を3通りの進化に導くキーマンだ。」
冗談にしては空気が重い。
「そして、高崎はその人類の『人形人食種』のさらにキーマンだ。
はっきり言って私たちとは別格。」
困惑する最中でも話は続く。
「だから君に頼みたいことがある。」
何の話をしているのか、何故この話をしているのか、
この話を聞いてどうなるのか、
聞こえてくる言葉の意味が分からない。
「君の手でこれから行われる学園祭の"最後"を滅茶苦茶にして欲しい。」
ここだけは意味がわかるが、意図が分からない。
「なんで?」
「私の話が真実だと証明するために。」
「証明してどうすんの?なんで私なの?」
「ふふ、それは照明が終わった後。
真実は最後まで分からない。
だから、これから君が目で見るものが真実になる。」
「嫌だって言ったら?」
「君は一生高校2年生だ。」
「そんな事出来る訳ないじゃん!そんなの親が黙ってないし!」
「あー…君の一生は高校2年生だ。って言えば分かる?」
「あんたなんかに殺されねぇよ!」
不気味さと身の危険を感じて逃げようとした。
「殺すんだったら、普通こんな話しないよね?」
「いっ!!?」
腕を掴まれた。
だけなのに、肩に鈍い痛みが走った。
「どっちにしろ長生きはしたいよね。」
普段通りに笑う先生の笑顔に身の毛がよだつ。
掴まれた腕がどんどん冷たくなっていく気がした。
「死ぬのは簡単だ。死んだ先はもっと簡単だ。
だが、死ぬまで"それ"は分からない。
分からない"それ"=未知だよ。
私は未知が怖くて堪らない。」
掴む力が抜けて行く。
「君に分かるか?
分からないという恐怖が。
何故生きているのかですら怪しいというのに、
死は未知なんだ。
未知のまま未知そのものを抱えて、その先が、もう
私はただ漠然な未知から、死から少しでも離れていたい。
私は"それ"を知りたい。
だが、同時に知りたくないし、死にたくないんだ。」
尚も発せられた言葉が頭で結びつかない。
それなのに、動けないでいる。
「そうして私は10年と生きながらえた。
自分の事ですら分からないのに他人なんて尚の事だ。
始まりは友の死だった。
それなのに今は、他人の死には目もくれず、ただただ自分の未知に怯えてる。
…すまない、話が逸れたな。」
「…」
人は見かけによらない。
「つまる所、私は死にたくない。
その私利私欲の為に、頼む。」
「嫌だ!」
でも
「嫌だ!嫌だ!嫌だ!!
そんな事言ったって私には分からないよ!」
私は
自分で思っていたよりも
我儘みたいだ。
「分からない…死ぬなんて考えた事もなかった…」
死んだら全てが終わる。
「本当にそれで生きられるの…?」
「少なくとも数年は寿命が伸びる。」
「…」
俯いたまま迷った末の答えを 、
「…頼むよ。」
先生は手を離した。
「お互い長生きしよう。
私は醜くたって誰よりも生き抜くつもりだ。」
そう笑う先生がいつもより楽しそうに見えた。
「=」の部分は「は」と読ませるつもりで書きました。
未知 (バカ)は恐怖、は私が現実でも感じてる事ですね。
彼らの思考は理解不能。
自分が理解不能な事を理解している相手、つまり恐怖以外の何者でもないですね。
そして自分はそれをひょっとしたら永劫知る事はないのだから。




