赤の空
「じゃあね、お姉ちゃん」
そんなセリフが聴きたかった。
「じゃあね、楓。」
そんなセリフを返したかった。
「またな、朱音。」
「さようなら、真斗。」
それは叶うはずがなかった。
立ち止まっていても何も始まらない。
何も終わらない。
ただただフラフラとまっすぐに家を目指す。
なんだか少し熱いと思った。
知らないおばちゃんが目の前からやってきた。
「あんたどこ行くの!?」
「…」
黙って足を動かす。
「向こうに行ったら危ないよ!」
「…」
それでも行く。
「あんた!???」
そう言っておばちゃんは近くの木に吹き飛ばされた。
「ぅぅ……」
ヨダレを垂れ流しながら、低く唸る女性。
身体中を血の赤で染めたその人には、
もう会ってはいけない筈だった。
私の顔を見ながら、口元を拭った。
「ふっ……」
猟奇的な笑みを浮かべて。
ただ力任せの拳。
防いでしまった腕が折れた気がする。
私の顔が歪むのを見て、彼女は微笑んだ。
次の攻撃で疑惑が確信に変わった。
きっともう使い物にならないだろう。
この腕を捨ててまで、一刻も彼女から逃げなければ。
勝てない。
たったの7人食べた程度じゃこの人には到底及ばない。
次元が違う。
それでも私には行かないと行けない場所がある。
答えが欲しい。
「母ちゃん!!!!」
その為に
「母ちゃん!!おい!!しっかりしろよ!!」
「はっ…はっ…はっ…」
横腹の痛みなんて今更だ。
喉が渇いても、息が苦しくても。
私は全てを犠牲にしてでも、
私が求めた場所は
赤く赤く燃えていた。
瞳をも焼き尽くすほどの赤。
力が抜ける寸前に嗅いだ、彼の匂い。
「ま…さと…」
行かなければ
走る。
「まさと…」
走れ。
「まさと…!」
匂いが強くなって行く。
「真斗!」
視界に映った。
「真斗ぉ!!!」
膝をつき呆然とする真斗は、
私の呼びかけに反応しなかった。
長いと思ってたシーンが短く、
短めでいいと思ってたシーンが長くなるのは
今回は多かったですね。
朱音が食べた人をカウントしなければ、
隣家の家族(3人)朝子ちゃんを追ってきた男達(3人)楓ちゃんの7人かなって。記憶の漏れがなければ。




