蟬
悪いのは全部__
宮内健太郎だ!
「行かせない」
夏七子ちゃんの手を強く握り引き寄せる。
「どこにも行かせない。」
「綺音ちゃん…」
「私がここにいるから」
これ以上1人は嫌だ。
もう何も失いたくない。
それだけが…それだけが…
「君に出来るのかな?」
拓人が怪しく嗤う。
「綺音、あいつは俺がやる。」
友慈が私の前に立つ。
「その間に2人を連れて逃げろ。」
「友慈は?」
「何とかする。」
「今まで押されてたのに?」
拓人が口を挟む。
「何とかしてやる。」
それに友慈が刀を向ける。
確か、2人って親友だったんじゃ?
どうして殺し合ってるの?
「ほら、行け」
「まあ待てよって!」
目の前での戦闘がまるで、アニメや漫画のよう。
刀を振り回す友慈とそれを腕で受け止める拓人。
「行こ!」
夏七子ちゃんの手を引っ張るがビクともしない。
「ダメだよ。」
「なんで!?」
「だって、朝子ちゃんが…」
朝子ちゃんは居心地悪そうに下を向いている。
「大丈夫!みんな助けるから!」
「違うの!」
手を振りほどく夏七子ちゃん。
「え?」
「綺音ちゃんと一緒にいても、私たちは助からない。」
「どうして?」
「ごめんね…」
「どうして!?」
夏七子ちゃんの言うことが本当なら、そう思うと動けなくなった。
「くっ!」
友慈は苦戦している。
私は、どうすればいい?
「ぐぁっ」
友慈が拓人に殴り飛ばされる。
「さ、行こうか、朱音。」
拓人が私をそう呼んで手を差し出した。
私を朱音と呼んで。
そう呼ばれた瞬間身体に違和感が走った。
誰かが私の中で応えた。
誰かがその手をとろうとした。
「あ゛あ゛っ!!」
その間に誰かが割って入った。
「「!?」」
「逃げるよ、綺音!」
伸ばされた手を掴まれ、強引に引っ張られる。
物凄い力に引きずられながら、その場を離れる。
どんどん景色が変わる。
まるで遊園地のアトラクションのように目まぐるしい。
この手は誰のだ?
やっと思考が落ち着いた頃に、それは止まった。
「委員長…」
顔を上げると見知った人物が映った。
「大丈夫?綺音ちゃん。」
「ありがとう。」
お互いに息を整える。
が、委員長だけは未だに息が乱れている。
「委員長の方こそ、大丈夫?」
「はは、まあ、なんとか、」
「本当に?」
「ははは」
笑って誤魔化す委員長なんて初めてだ。
ならばそれは大丈夫では無いのだろう。
「嘘はやめてよ。私に出来る事はない?」
「じゃあ、食べさせて、?」
何を?そう言わなくたって分かった。
「冗談だよ、あはは。」
すぐに委員長笑って誤魔化した。
「それに、私は第二世代だから。
食べたって意味が無いよ。」
「第二世代?」
「知らない?私が第二世代で、綺音ちゃんは原初型。」
何を言ってるのか分からない。
「原初型は人を食べれば生きていけるけど、第二世代はそれだけじゃダメなの。」
「私達にはそれとは別に薬が必要。」
何かが引っかかる。
「人形人食種側が有利過ぎると、人類側が進化しないからってね。
そのせいで第二世代は最初からハンデを持ってる。
自我を失くして全てを喰らい尽くす毒。
共食いすらしてしまうような欠陥品。」
無い、委員長から貰ったはずの物が。
「だから、私が綺音ちゃんを食べても無駄。」
どうして!?使った記憶なんて
「だから、綺音ちゃんが私を食べてよ。」
そんな筈は、なんで、なんで
「私はもう時間切れだからさ。」
そんな!そんな!
「ダメだよ、そんな事出来ない。」
「ここで二人とも死ぬよりはいいよ。」
「でも!」
「大丈夫、第二世代は記憶を引き継ぐけど、原初型達は力を引き継ぐ。
だから、綺音ちゃんは生き残れる。」
「でも…!」
「ここで終わる私達を、綺音ちゃんの中で永らえさせて。私に、私達に、意味があったんだって。」
「っ…」
「最後の、お願い。」
その笑った顔に何人もの面影が重なる。
「分かった…」
説明してる間は息が整う不思議




