クロスマッチ
前回最後で、殺したのは4人って言ってましたけど、
うっかり今作最大の被害者である綺音ちゃんの実家のお隣さんを忘れてたので、
正確には7人。ですかね。
殺した≠食べた
にすればなんとか4人で誤魔化せたかもしれませんが。
衝撃的だった。
自分と同じはずの人形人食種で、ここまで違うなんて。
何者にも動じず、自分の心と戦うだけ。
諦めかけた希望は、こんなにも不屈なモノだった。
「あの…。」
消え入りそうな声で彼女は言った。
「あなたは?…」
そんな事はどうでもいい。
「そんな事はどうでもいい。」
「え…」
「私は、まだ、眠る訳にはいかない、から。」
ダメだ、頭が痛い。
それなのにどうしてこんなにも眠いの?
撃たれた箇所の感覚が無い。
痺れているようでいて、何も感じないのに動かない。
ダメだ、このままだと眠ってしまう。
「う、ぁあ、ぁっう、ぐぃ、い、ぇあ、っ」
呂律が回らない。
思考がまとまらない。
ダメだダメだダメだ。
「わらひは」
私は
「まら」
まだ
「ねむ」
眠る訳には
「…」
あぁ…もう…
「やだ!」
「『やだ』じゃありません。帰るよ!」
「ぃやーだー!!」
「まあまあ。」
「全くこの子ったら、頑固なんだからぁ…」
「俺に任せて下さい。」
「ごめんなさいねぇ〜、お願い出来る?」
「はい。」
「むぅ〜…」
「ね、綺音ちゃん。ちょっと散歩に行かない?」
「やだ!」
「えーと、何でかな?」
「歩くの面倒!」
「じゃあ、俺がおぶってあげるよ。」
「ん〜…」
「決まりだね。」
ずっとこの背に揺られていたいと思った。
だから帰りたくない訳じゃない。
「またおいでよ。」
私は此処が心地良かった。
何だか懐かしい感じがして、心地が良くって。
「…うん。」
この光景が好き。
この匂いが好き。
この空気が好き。
きっと、この人の事も好きなんだと思う。
「いつでもおいでよ。俺はここにいるから。」
「…ほんと?」
「うん。来週また来てもいい。大人になってから来てもいい。
きっと、俺はまだ、ここにいるから。」
「うん…」
いつかきっと、背負ってもらうんじゃなくて、
この人の隣を歩きたい。
いつもよりも高い景色も捨てがたいけど、やっぱりソレには敵わないんだろう。
「絶対に、また来る。」
「うん。」
でも、今はこの特権を楽しもう。
刻み込もう。
この景色をいつか隣で。
いつか隣で、見た景色。
「…!!」
「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!」
「これは私の記憶だ!私のじゃない!」
「違う!違うっ!!私が、私が!見た景色は!!」
「…は、違う、違うのに…違うんだよ、私はコレじゃない…!私の!!景色は!!」
「違うのに…
どうして…」
こんなにも覚えているの?
そんなにも鮮明なの?
「ひっ!」
「…違う…違う…違う……」
発狂したような声を聞き、様子を見に来た。
頭を抑えながらブツブツと唱え、片手で自分の目をほり出そうとしている。
「やめて!」
恐怖よりも体が先に動いた。
分かっていた、この人は異常なんだと。
「やめてったら!」
思考が追いついて、ここでこの人を失くしてはダメだと思った。
そうしたら今度こそ私の希望は潰える。
「違う違う違う」
「落ち着いて!落ち着いてよ、朱音さん!」
「ちが」
「あっ」
しまった。
そう思った次の瞬間には首を掴まれていた。
「違…う?わた、しは、朱?音?ね?」
「あ、あがっ、ぅが、あ」
答えられない。
力が強すぎて引き剥がせない。
ダメだ。
こんな所で終わるの?
「あたしは、違う、違う違う・・・」
「うぐぇ、あげっ、ぁっ、ぅ」
ダメだ、まだ死にたくない。
私は死にたくない!
あと、少し、なのに、
死にたく、ないよ…
「やめて!綺音ちゃん!!」
手を伸ばせば、届くと思った。
届きそうだったから、手を伸ばした。
それでも私は後悔しないのだろうか。
だから、手を伸してみた。




