移シ身
ようやく見覚えのある道に出て、私はひとまず委員長の家で休憩する事になった。
「手紙、なんて書いてあったの?」
「…正直実感ないけど、理解はした、と思うよ。」
「うん。」
「死んだ人間の記憶の移植。」
「心当たりはある?」
「無くはない、って感じかな。」
「どんなの?」
「夢を見るの。それはきっと、『朱音』って人の記憶。」
「 やっぱり、なんだね。綺音ちゃんには朱音の記憶が。」
「私そんなに朱音って人に似てたの?」
「ううん、綺音ちゃんに誰の記憶が移植されてるかなんて知らなかった。でも私には分かってたよ。」
「なんで?」
「私が秋月 楓だから。」
自分の胸に手を当てながら哀しそう笑って言った。
「どういう意味?」
「私の中にも私じゃない誰かの記憶があるの。
それが、秋月楓の記憶。」
「じゃあ委員長は…」
「ううん、私も『秋月 楓』だよ。
私の中には秋月楓が2人居る。」
「…同姓同名、って訳じゃないんだよね。」
「うん。
私はいつまで私で、いつから秋月楓だったのか忘れてしまった。
だから、私は秋月楓として生きる事にした。
今までとは違う私として秋月楓として。」
「そうだったんだ。」
「そして、綺音ちゃんの中にある記憶の持ち主は、『秋月 朱音』のモノでしょ?」
「…」
「秋月楓の姉で、真斗さんの元彼女。
なんとなく察してたみたい。
見てたでしょ?『秋月 楓』はだいぶシスコンみたい。」
「そうっぽいね。
でも、真斗が何したらあんなに怒れるの?」
「楓は真斗さんが朱音を殺したんだと思い込んでる。」
「え?」
「思い込みって怖いよね。
違うって確信がいつの間にか私の中でも薄れて来てる。
それだけ、それだけ強く楓は思い込んでる。」
「じゃあ、朱音を殺したのって…」
「さあね、忘れちゃった。」
そっぽを向いて答えた。
「でも、そこから狂い出したのは確かだよ。
狂ったはずの歯車が回り出した。」
「それって?」
「綺音ちゃんの運命だよ。」
「…」
「記憶の移植と人形人食種、人の人生が狂うには十分だよ。」
「それは委員長も…」
「…そうだね。そうなんだよね。」
「…。」
虚ろな目をした委員長がポツリと言った。
「それでも、私は私でいたい。」
「じゃあ、そろそろ帰るね。」
「待って。」
「何?」
引き出しを開けて長方形の袋を取り出した。
「あげるよ。」
袋から窺える膨らみで大体分かった。
「これは?」
知らないふりをする。
「衝動を抑える薬。」
「委員長の分じゃないの?」
「私にはもう必要無いから。」
「何で?」
「今は私よりも綺音ちゃんの方が必要かなって思って。」
「いいの?」
「うん。綺音ちゃんが使って。」
「…ありがとう。」
今にも壊れてしまいそうな儚さを委員長から感じた。
それでも、それが委員長の答えなら。
私は




