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空の空  作者: lycoris
空の空
49/115

痛み

朝が来た。

いつもより遅い目覚め。

そういえば、昨日は、

昨日は?

起き上がろうとすると体に痛みが走った。

「ぐっ!」

痛みを押さえつけて起き上がる。

たったそれだけの事で汗をかいた。

歩き出すと頭がフラフラした。

昨日、何があった?


リビングに行くと、いつも通りの光景は無く、何かが暴れた後の様に荒れていた。

夏七子は無事か!?

家中を探してもいない。

どこだどこだどこだ!!


家の中や近隣を走り回り、息が切れかかってからようやく気が付いた。

そうか、この時間なら学校に行っているのか…

「はぁ…」

少し取り乱し過ぎてしまった。

この分なら、綺音も学校だろう。

家に帰ると普段見ない、見たくもない靴があった。

「あんた、まだ居るのかよ。」

「あ?相変わらず生意気だな。

ま、用事も済んだしお望み通りもうすぐ消えるよ。」

「何のために帰って来たんだ?」

「ふっ、"お前"には関係ない。」

「なんだと?」

「ははは」

その嘲笑で構うだけ無駄だと判断した。

「さっさと出てけよ。ここはお前の家じゃねぇんだ。」

「なんだ、その口のいい聞き方は?何も出来ない奴が偉そうだな。」

「自分の力じゃ何も出来ないのはあんたも同じだろ。」

「それが生意気だっていうんだよ!」

俺の前に立ちはだかる。

「邪魔だ、消えろよ。」

「くっくっく、おら、(ひざまず)けよ。」

何か小さなスピーカーの様なものを取り出し、そこから音が流れる。

その音が頭に鳴り響く。

「!?」

頭痛に襲われ、その音は尚も鳴り続け、立っているのも辛くなる。

俺の姿を見て表情を醜く歪ませる。

「なぁ、おい、お前まだ自分が上だと錯覚してんのかよ?

お前は最初っから俺のオモチャ、以下なんだよ!」

蹴られるのが分かってても防げない。

「がっ!」

立ち上がろうにも、頭に響く音が邪魔をする。

「たかだか所詮、あの女のオマケのくせに偉そうによ!誰に向かって口聞いてると思ってんだ!」

いくら体を殴られ蹴られようとも、頭の痛みのせいで何も考えられなくなる。

「どいつもこいつも俺の足を引っ張ってばっかりで!

あの女だって結局俺に何も残さず勝手に死にやがってよ!

保険の名義も勝手に変えたあったし、ならせめて実験材料になって惨めに死んでいけよ!」

こいつ!

「うあ゛あああ゛ああ!!」

頭が割れてもいい、こいつだけは殺す!


足を掴んで全力で引きずる。

「ぐぁっ!?」

背中から落ちたがスピーカーだけは離さず握りしめている。

「この野郎っ!」

悶えながらもスピーカーの音量を上げる。

「!?

うああああああああ!!」

無意味だと理解(わか)ってても耳をふさぐ。

やはり痛みは(おさま)らず、もがき叫びを上げてもなお。

「それが聞きたかったんだよ。

たまらないね、俺にはただお前がひたすら絶叫している声しか聞こえない。

いやぁ、いつ聴いても良いな。」

頭を踏まれる。

「おら、もっと()けよ。」

何度も何度も何度も頭を踏まれ蹴られる。

それでも、こんな程度じゃ死なない体。

延々と続く痛みに思考が追いつかなくなる。

ただただ耐えるだけ。

涙を流し鼻水を垂らし涎を溢しながら。

誰の助けもなく、誰を助けるでもなく、

いつからいつまでいつからか

ただただ苦しい

助けて助けて助けてたすけてたすけてたすけて

誰か


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