運命
ある日妹が出来た。
そう母に告げられた。
もはや家族は俺とバアちゃんだけ。
昔、父が殺人としか思えない手口で事故死した。
当時はそんなこと考えてる余裕もなく、
呆気なく唐突に訪れた死に混乱している間に、父は肉体ですら触れられなくなった。
あっという間に過去の人になった父。
最後に触れたのはいつだったか、交わした言葉何だったか、
なんにもおもいだせない。
それは本当に最後だったのかすら、今更誰に確かめようもなく、いつの間にか他の家族とも話さなくなった。
僕の世界は色褪せてしまった。
いつの間にか母は家を出て行った。
このままここに居たらおかしくなりそうだと、僕を見て言った。
睨んでいたのかもしれないけど、どうでもいい。
そうして僕はバアちゃんの家に残された。
結局、ただ母親が居なくなっただけで、僕の世界はなんにも変わらなかった。
バアちゃんの手は暖かい。
それでも環境は変わる。
それまでは母がしていた家事をバアちゃんと共同でするようになり、バアちゃんに色々教えてもらった。
家でバアちゃんの言う事を聞いて、学校では先生の言う事を聞いて、
ただそれだけの退屈で永遠の毎日。
何も考えず、どこも向かず、ただ周りに言われた通りに歩いていた。
そうして、ぶつかった。
誰にもぶつからないと思っていた僕だけの道。
そこには他にも誰かがいた。
「大丈夫?」
「うん。そっちは?」
「平気だよ。」
お互いに目を合わせないまま返事した。
たぶんこの時は2人ともびっくりしてたんだと思う。
だって2人はあまりにも、似ていたから。
「君の名前は?」
「…」
視線は交差したが返事はない。
「僕は酒井真斗。君は?」
「私は、秋月朱音。」
視線を逸らして答えが来た。
もしも、これが逆だったとしたら僕も同じだったろう。
でも、今は、 僕は、 この出会いに歓喜していた。
どう表していいか分からない程の湧き上がる喜びのあまり、
自己紹介を混ぜつつ質問責めにした。
そうして分かったのが、似た者同士、と言うこと。
今は少し変わってしまったが、見ていた世界が同じだったのだろう。
僕の世界に色の付いた彼女が現れた。
その彼女が僕の世界を隅々まで色付けていく。
本人の意図に関係なく、彼女と関わるたびに僕は、僕の世界は変わっていった。
それは昔感じていたはずの感情。
やっと今手に入った感情は僕を満たしていった。
彼女は、秋月朱音は俺と似た者同士。
きっと自分を捨てていた。
ずっと怖がっていた。
でも僕は朱音のおかげで前に進めた。
そんな俺を見て、もしかしたら朱音は恨めしく思っているかもしれない。
僕がそうだと思うのだから。
それでも僕が変われたこの感情をいつか返したいと願っていた。
たとえ彼女が望まなかったとして、返さずには居られなかった。
自分でも情けないとは思うが、初めて家族以外に感情をぶつけるのに戸惑って、それでも踏み出せたのだから、
俺は朱音に告白した。
僕の背中を押してくれた朱音の背中を、いつか俺が押せるように願って。
いつか俺が朱音の世界を変えられるように。と。
そんなわけで過去編。
2話連続朱音ちゃんのターンですね。
今回は分割ですが。
次話もすぐあげられるよう頑張りますはい




