繋げる絆
「じゃあさ、山本さんがどこ行ったか知ってる?」
「…知、ってる」
言葉が詰まる。
この嘘は流石にバレるだろうから。
「へー、これは正直に教えてくれるんだ。」
「私は、駅で会っただけで、何処に行ったかは知らないよ。」
「ふーん。」
「…。」
委員長は立ち上がって私に近づいた。
「じゃあ教えてあげるよ、山本さんが追われてる理由。」
「え?」
「あれ、もう知ってた?」
「いや、まだ知らないけど。どうして私に教えてくれるの?」
「だって友達じゃん。」
私に肩を叩いて、私が来た道を進んで行く。
その後について行く私を確認して委員長は語り出した。
「この町はね、実験場なんだよ。
お偉いさん方の実験場。」
真斗から聞いた話でなんとなく分かっていた。
「お偉いさん方はね、私達とは違うの。
だから、私達とは違って危ない遊びを好む。
それも私達が思いつかない程の。」
委員長はいつの間にか拾っていた木の棒を振るいながら語る。
「でも、お偉いさん方にはお偉い立場がある。
だから、自分達とは関係無いここが遊び場で、
面識の無い私達がおもちゃ。
それはただの気まぐれか?」
委員長は誰もいない方向に木の棒を投げた。
「そんな訳で、危険な実験場から逃げ出した危険な私達は、立場を危うくする。
だがやはり、人間は自分が可愛い。」
振り返って私を見る委員長。
「後はもう分かるよね?」
「…そのお偉いさん方って、誰?」
「無駄だよ。
あいつらのナルシストっぷりを舐めないほうがいいよ。
薄汚い癖に小綺麗な格好を好み、自分じゃないモノを嫌う。
そんな奴らのオモチャなんだよ、私達は。
この町のみんなは。」
委員長は不気味に笑った。
「ねぇ、高崎さんは自分が可愛い?」
「…分からない。」
わからない。
「ふふ、だよね。
だから分かってあげて。この町のみんなの事を。」
「じゃあ山本さんが、見つかったらどうなるの?」
「壊れたオモチャで遊びたい人はそうそういないよ。
オモチャを壊して遊びたい人はごまんといるのに。
ね?」
「…。」
この話が本当なら…
「じゃあなんで山本はこの町から出たの?」
「さあね。」
「…山本は逃げるのだって戦いだって言ってた。」
「へぇー。そんな事言えるんだね。」
「誰と戦ってるんだろう?」
「それこそ本人か、先生にでも聞いて見ないと。」
「え?先生は何か知ってるの?」
「知ってるも何にも、山本さんを逃したのは先生だって噂だよ。」
「どうして?」
何かが記憶に引っかかる。
「それこそ私も知りたいよ。
みんな忘れてた、先生は私達と同じだけど、恐らくお偉いさん方側の人間。
私達の町で初めてのアレが出てからこっちに来た人間。」
ちなみに2人目は高崎さんだよ。と付け足してハッとする委員長。
「ってことは…
あっはっははははは あっははっはっははははは
そうじゃんそうじゃん、よくよく考えなくたって高崎さんだって向こう側の人間じゃん。
あっはっはっはははっは
もう、ほんと忘れっぽいんだがら、
ほんと、
ほんと
なんでっ、考え、なかっ
たんだ、ろう
なん、で
なんで、
」
笑い出した委員長が泣き出した。
私の方を振り返って顔を覆う。
そのままよろめいて膝から崩れた。
「違う!違うよ!私は!」
「ご、ごめん、ね。いじわっ る、言う よ。 うっ、しょう、証拠は、ぁる?の?」
嗚咽混じりに振り絞る委員長。
その瞳は僅かな希望にすがるようで、その雫は全てに絶望していた。
そんな姿を見て私も泣き出しそうになる。
「私は、ただ、真斗の会いに、来ただけ。」
ただそれだけで。
「本当に、何も、し、知らない!の、」
本当に。
「でもね、証拠なんて、ない、よ。」
だから。
「だから、信じて、欲しい。の。
私は、そんな人間じゃ、っ、ないって。」
委員長に手を差し出す。
「例え、私が、化け物に、なっでもっ、友達をっ、裏切ら、ない!
私、のと、ともだぢが、化け物で も、私はぜった、いに!裏切ら
ない、から。」
泣きじゃくる委員長を抱きしめた。
委員長はそのまま後ろに倒れた。
私が押し倒した形でそのまま冷たい委員長の体を抱きしめた。
強く。