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空の空  作者: lycoris
空の空
38/113

NI

「知らない。」

「本当に?」

「…名前しか知らない。」

「へぇー、名前しか知らないんだ。

本当に?」

「今度こそ、本当。」

「て事は私に嘘ついたんだ。」

「…」

「否定してくれてもいいじゃん。」

「ごめん。」

「なんで謝るのさ。やましいことでもあるの?」

「...ないよ。」

「じゃあ、何を隠してるの?」

「...

隠しているのはそっちじゃないの?」

「おや、形勢逆転かな?

何を隠してるって思うの?」

「何もかも、大事なこと全部隠してるじゃん!」

「ほほー、ってことは知ったんだね。

この町の秘密を。」

「大体のことは真斗から聞いてるよ。」

「あー、ついにばらしちゃったかぁ。」

「でも、まだ何か隠してる。」

「何を?」

「分らない。」

「勘ってやつか。

んで、どこまで聞いたの?」

「真斗たちの現状と、町の病気くらい。」

「へぇー、じゃあまだ秋月朱音のことは何も聞いてないんだね。

まぁ、言う訳ないか。」

「その、朱音って人は、委員長や真斗と何か関係があるの?」

「ありあり、おおありだよ。

だから、私は何か知らないか聞いてみたんじゃない。」

「そう。私は

真斗が寝言で言ってたのを聞いただけだよ。」

「だから、名前しか知らないのね。」

「うん。」

「それって本当?」

「うん。」

「信じていい?」

「うん。」


私は委員長の瞳の奥の闇に向かって嘘をついた。


いつごろからだろうか、

こっちに来てから、

いつの間にか自分じゃない誰かの夢を見ていた。

いつしかそれは自分の夢じゃないことが分かった。

いつしかそれは自分じゃない夢じゃない誰かの記憶だと思った。

真斗の身長が今より低くて、顔も幼くて、今よりもずっとずっと笑ってた。

周りには知らない人たちばっかりで、一人っ子のはずの私に妹がいて、真斗の家に両親が居て、夏七子ちゃんがいない。

そんな日常が狂い始めていく日常。

つまらないと嘆いていた日常が、鮮血に彩られていく。

それを望んだはずなのに、結末に絶望する。

絶望の中の希望に魅入られ、さらに絶望を突き進んでいく。

止まれないことを楽しみ、止まらないことに悲しむ。

最後まで傍にいた希望まさとを突き放し地獄へ落ちていった。


それらを知っても尚、秋月朱音の全てはきっと私には理解できないだろう。

だから、私はまだ、彼女の名前しか知らない。
















サブタイトルが思いつかない病。

雨が大変ですね


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