幕開けの日差し
「お嬢さん。」
「?」
「こんな天気のいい日にこんな所で何をしているんだい?」
「そっちこそ、こんな時期にこんな時間で何してるの?」
「あっはっは、なーんにもしてないさ。」
「面白くないよ。」
「そうかな?」
「つまんない。」
「そうかそうか。
なら、こいつを食べてみな。」
「…何それは?」
「君の世界を359度変える、そんな食べ物さ。」
「知らない人から貰う怪しいもの。」
「確かに確かに。
でも、君がこれを食べさえすれば、世界は変わる。
君を中心に物語が始まるんだよ。」
「もうちょっとマシな嘘をついたら。」
「いかにも。だが、嘘じゃないんだこれが。」
「中に何か入ってるの?」
「さあ、食べてみたら分かるよ。」
「じゃあ、要らない。」
「それでいいのかい?君の世界は。」
「良いも悪いも、それが私の世界だから。」
「そうやって言い訳して来たんだろう?
そうやって言い訳していくんだろう?
君はそんな世界で言い訳していて良いわけ?」
「あんまりしつこいとお巡りさん呼んでくるよ。」
「それもいい。だが、君はそんな世界でいいのかい?
本当にそんな世界で。」
「はぁ…」
私はサンタクロースの方を向いた。
「1度変わっただけで世界は際限無く変わり続ける。
君の予想を遥かに超え、それはそれは、小さな変化がやがて天と地に分かつ程世界は見違える。」
サンタクロースは今までに嗅いだことの無い臭いを放つ骨付き肉を差し出した。
「どうだ?」
「…」
気が付けば手が伸びていた。
それを止めようと思えば止められた。
だから、止めなかった。
結果として、何も変わりはしなかった。
少し変わったとすれば、2年生になって生徒会に入った。
時折学校をサボる私への処罰だそうだ。
いつもは学校が終わったら帰るだけだったが、真斗をいつもより待たせるようになった。
今日は昨日までと同じようにすぎ、明日は今日と同じような日々が待つ。
と、諦めていたはず。
だったのに。
この頃寒くてしょうがない。
季節のせいなどでは無く、体は至って健康、むしろ調子が良すぎるくらいだ。
頭も冴えているのに、時々思考が停止する。
寒くて頭が回らない。
そんな私の異常を真斗は気遣ってくれていたが、
私が倒れたのは生徒会の会議が始まる時だった。
いつものような毎日だったはずなのに、気付けば何かがズレていた。
保健室のベッドで寝ていた私を看病してくれたのは生徒会長の志水先輩だった。
今の状況で真斗は何も出来ないので先に帰って貰ったらしい。
そこで、志水先輩に相談したんだ。
最近寒くて何も考えられなくなる。
そして当然のように私の手を握り、優しく
「だったら私が温めてあげるよ。酒井君だってきっと。」
そう言ったんだ。
その時何だか本当に、少しだけだけど温かくなった気がした。
けれどもそれは、家に着く頃には冷めていた。
その日からその温かさを求めるようになった。
いつしかそれは限界に達した。
足りないものを埋めていくたびに足りなくなっていく。
再びそれを口にした時分かった。
頭が熱くなり、痺れるような感覚。
思い出したのだ、真っ黒なサンタクロースから貰った贈物の味を。
それは
それは私の世界を変えるには十分だった。
設定覚えてないと意外なとこでガバってしまいそうになります。いかんいかん。
注意して書いてるつもりですが、矛盾があったらすみません。
基本後出しの方が有効でお願いします。
それでは