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空の空  作者: lycoris
空の空
33/115

鳥籠

「あんな人でも私のお父さんなんだって。」

「…」

言葉にならない。

父親が自分の子供に暴力を振るうのか。

「私とお兄ちゃんは異父兄妹で、あの人は私の父親。

たまに帰って来て、暴れて帰っていく。」

ぎこちなく途切れ途切れに話す。

話を聞いて絶句した。

そんな親は漫画やドラマの中だけだと思っていた。

「それって…」

「DVってやつ。」

「なんで真斗は黙ってるの?」

真斗ならきっと反撃するはずだ。

そもそも黙って居ないだろう。

「やり返したら、あいつと同じになってしまう。

それに、俺が耐えればいいだけだから、って。」

夏七子ちゃんの目に涙が浮かぶ。

「ずっと、ずっと私を(かば)って。」

「…別居とかは出来ないの?」

「本当はもうしてるんだけど、向こうからやって来るの。

いつ来るか分からないからお兄ちゃんも気が休まらないと思う…」

「そんな事って…」

私の中でドス黒いモノが渦巻く。

夏七子ちゃんは涙を堪えながら言った。

「そんなお兄ちゃんが、綺音ちゃんがいる時はとっても楽しいそうだった。

だから、綺音ちゃんが帰って来てくれて嬉しかった。本当に。

これからみんなで幸せに暮らせるんだって、思ってた。

私の家族がこの2人だけなら良かったのに、って!」

堪えきれず溢れた涙がスカートを濡らす。

「…」

「もう、嫌だよ、お兄ちゃんが傷つくのは。

お兄ちゃんは何もしてないのに!」

「…」

黙って唇を噛み締め、掌に爪を食い込ませる事しか出来ない。




夕日が落ちきる前に帰る。

「話してくれてありがとう。」

「ごめんね、私、何も出来なくて。」


「いいよ、謝らなくて。夏七子ちゃんは悪くないんだから。」

「…うん。」

「私が、なんとかしてみる」



自分の親を手にかけて今更、

ましてや他人の親なんて、

今さら、今更変わらない

過去は変わらなくとも

せめて せめて


私はもがき足掻く。






真斗は今、真斗の父の母の家に住んでいる。

真斗は生前の祖母に家をくれと約束をした。

その代わりに精一杯夏七子ちゃんを守ると。

真斗と祖母の間で交わされた約束(のろい)は、

壊れてしまった真斗の燃料になった。

いつからか燃料(それ)は足枷になっていった。

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