繋いだままの
ただ、ただただ
空腹を満たすために貪った
最初に鳩尾を強く殴りつけ首を折る。
そうして後はただ…
見つかるだなんて思わなかった。
そんな事すら忘れていた。
幾分か腹が満たされて冷静にはなれたが、解決策が何も浮かばない。
「あっちに行ってよ!」
いや、最悪な結末だけは脳裏に浮かぶ。
嫌だそうれだけは絶対に
「真斗!」
今だ、この隙に。
「朱音…?これは、」
ここは屋上、勢いよく駆け出しフェンスを飛び越え、学校裏の木々に飛び込む。
無理な着地、受け身の取り方なんて知らないから全身が痛い。
痛いはずなのに動ける。
そんな醜い自分が、もはや服についた血は表か裏か。
昨日のは見間違いであって欲しかった。
だが、確かに覚えている。
志水先輩の抉り穿られた腑。
そして、朱音の口周りに付いた血。
それを意味するものはまさしく悪夢だった。
何もかもが分からない。何をしていいのかも分からない。
そんな矢先、まさか昨日の今日で朱音が登校してくるとは思わなかった。
昨日あの後、朱音の家を訪ねたが不在だった。
いつもの待ち合わせ場所にも来ず、なのに教室に着いたらそこに居た。
「朱音、話がある。」
無我夢中で朱音の肩を掴んだ。
「おはよう真斗。私には無いよ。」
掴んだ手を払われた。
「待てよ、お前昨日!」
「何のこと?トイレ行きたいから 退いてよ」
「え、あ、悪い。」
いつもと違う朱音の雰囲気に飲まれた。
それから毎放課、昼休憩ですら朱音は教室には居なかった。
下校時、さっさと出て行こうとする朱音の手を掴んで止めた。
「待てよ。」
「ごめん、離してよ。」
「嫌だ。お前が話を聞くまでは。」
「っ!」
振り払おうとされたが、想定内なので対処出来た。
「私、急いでるんだけど。」
「なら俺の質問に答えろ。」
「急いでるって言ってるでしょ!」
肩が脱臼しそうになるくらい強く振り払われた。
「待てって!」
痛みを堪え、ならばと逆の手で掴む。
「お願いだ、朱音。」
掴む手が震える。
「…離してよ」
冷たく言い放つ。
「俺はこの手を離さない。
俺は、お前の事が「やめてよ!」」
「お願い、真斗…離して」
心なしか掴んでいる手も震えている気がする。
「死んでも、離さない!朱音!好きだ。」
「っ!?」
「お前の事がずっと、ずっとずっと!だからこの手は離さない。」
力が入る手と力が抜ける手。
「…ごめんなさい…ごめんなさい…」
それは 繋いだ手が朽ちていくようで
「私、私には、、贅沢だよ…」
久しぶりに見た朱音の泣きじゃくる顔。
無理にでも笑っていた朱音がこんなにも脆く…
人の腕がこんなにも簡単に
まるでオモチャのように
残った手で涙を拭いながら走り去って行く朱音。
何も出来ずにただ立ち尽くす。
残された手と手はただ冷たく
ただ、ただただ
夢であって欲しいと 心と体が固まった。
そ
んなわけで今回は朱音ちゃんパートのみです。
まあ前回はそこそこ切りが良かったのでこちらを進めておこうかなと。




