真斗の空
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家に着くと夏七子ちゃんはもう寝ていた。
疲れでご飯を食べたらすぐに寝ちゃったらしい。
「お疲れさん。」
リビングに着くと性懲りも無く真斗が酒を煽っていた。
「ただいま。」
荷物を床に置き、真斗の隣に座った。
「それ、美味しい?」
まだ開けていない酒を指差した。
「これだけが俺の拠り所だからな。」
「これも飲むの?」
「んー、どうだろうな。多分飲むと思う。」
「どうして?」
「…はは、そりゃあ、嫌な事を忘れたいから、かな。」
「じゃあ私にも頂戴。」
「ゲッホ、ゲッホ
おま、え、は?」
「私にも嫌な事くらいあるよ。」
そういって缶のプルタブを開けた。
「あ、おい!」
真斗の制止を聞かずに、とりあえず一口分を飲んだ。
「うぇ…美味しくない…」
「だろうな。俺は止めたからな、後はそこに置いとけ。」
「嫌だ。」
もう一口飲む。
「香りが、最悪。」
さらにもう一口。
「おいおい、もうやめとけって」
真斗の手が伸びるが払いのけた。
やっと半分飲んだと言うのに。
「ほっといてよ、真斗だって私が止めたのに飲んでるでしょ!」
自分が思っていたよりも大きな声で、自分でも少し驚いた。
「そう、だけどさ…」
バツの悪そうにしている真斗をよそに酒を飲む。
「あぁああ〜!ッチ」
全部飲み干し、不満を吐き出し舌打ちした。
「荒れてるなぁ。何があったんだよ。」
ダンッ!
缶を強くテーブル上に置いた。
「真斗のコレも原因だからね?」
真斗に優しく笑いかけた。
「悪かったって。でも、俺にはコレしかないから「言い訳無用!」
はい…」
「忘れたって、その忘れた事は変えられないし、今も何も変わらないんだよ!」
段々と口調が強くなっていく。
「…分かってるよ。」
「そんなに!そんなにアカネって人が忘れられないの!!?」
「!?
お前、どこで!?」
「ねぇ、真斗!そのアカネって人は真斗の何?」
「…そうか、別におかしくないか。
そうだな、俺がコレに頼るのは、その朱音を忘れるためだ。」
「どういうこと?」
真斗は立ち上がって縁側に腰掛けた。
「俺にとって朱音は月だった。
真っ暗な夜道をあいつは照らしてくれた。
でも、朱音だけじゃなかった。
お前たち星々も俺を照らしてくれていた。
月明かりが無くたって俺は歩けた。
でも、今まであったはずの月を忘れる事なんて出来なかった。
俺は忘れたくないんだ、確かにあった月の輝きを。
俺は今も月に照らせれてるんじゃないかって。
忘れなきゃいけないんだ、ないものはないと。
じゃないと、迷ってしまう。」
真斗を追って縁側に座る。
「でも、それって酒を飲むから迷うんじゃないの?」
「…かもな。
でも、今この時だけは俺の中の空は、空っぽになるんだ。
みんな居て、みんないない。
来た道も行く道も分からない、帰り道さえ忘れて、
ただ空の空の下で俺は1人、」
真斗が指差す夜空には煌びやかな月と、遙か彼方の本当はもうないかもしれない星々。
「今度、冬に花火大会があるんだ。
だから、また、来いよ。俺も夏七子も待ってるから。」
真斗が優しく私の頭を撫でた。
最初は払おうとしたが、懐かしい心地がそれをさせなかった。
「うん。きっと。」
「朱音ちゃん、どうしたの?」
「来てくれたんですね、志水先輩。」
「うん、それでなんの用?」
「ちょっと、お腹が空いちゃって。」
「そうなの?ちょっと待っててね。」
ゆっくり、ゆっくり志水先輩に近づく。
「言ってくれればもっとお菓子を持って来たのに。」
ポケットを弄りお菓子を取り出そうと油断している。
それは狩りと言って良かった。
自分の食欲を満たすために、
自分の尊敬する人を
全ては生きるため。
まさか今回でタイトル回収するとは自分でも思ってませんでした。
本当は最終話に別で回収する予定だったのですが、、
色々と言葉足らずな箇所があるでしょうが仕様かボケですのでご容赦を
それでは




