表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の空  作者: lycoris
空の空
2/113

傾き始めた空

「ふぅぁぅぁ〜」

大きなあくびが出た。

少し前までなら手で口を覆って隠してたが、今はそれすら面倒で。

別にこれと言って眠い訳でもない。

前までと比べると十分と言えるほど寝ている。

外が暗くなるにつれ、街灯は点く。が、量が少ない。

それに近所と言っても密集している訳ではないので、それぞれの家庭から漏れる光も淡く、外をぶらついていたって寒いだけ。みんな家でおとなしくしてるからすっごい静か。

虫の声がたまに鬱陶しくなるくらいに。

お店も大体閉まってるから溜まり場もない。

それに溜まっていたってしょうがない、暇で暇で。

それは今もであって、暇すぎてあくびを連発している。

目蓋に溜まった涙が垂れてくるほど。

それを拭うほどの気力が湧かないほどにダラけている。

だから口も大きく開けてまたあくびが出る。

誰にも見られていないのに隠す必要もないし、面倒くさい。

そう、面倒くさいのだ。

暇は面倒くさいのだ。

面倒くさいのは暇なんだ。

と謎の定義を唱えようとした頃にやっとバスが見えた。

「あ゛ぁ〜」

あくまで「は〜」とため息を吐いたつもりが変なものが漏れた。

こんなのをお父さんに聞かれたらと思うと…

またため息が出そうになる。

とりあえず立ち上がって、

財布を用意して涙を拭う。

少し伸びをして、「ふぅ」一息ついた頃にバスは目の前で停まった。

「はーい、お待たせー。おはよー!」

「おはようございまー」

定期券を見せて乗車する。

まだ気だるさが抜けてない。

とりあえずバス内でのあくびは口に手を当てる。

学校に着く頃には気を引き締め終えて、

「とーちゃく。今日も頑張ってー!」

「ありがとうございました〜」

バスの運転手に送り出され登校。

校門をくぐる頃には背筋はしっかりと伸び、あくびも完了していた。

さてと

靴を履き替え気持ちも一緒に入れ替える。

毎朝、諸々の面子の為にきちんとした優等生を演じる気合を入れる。

やはり何かを替えるついでに気持ちも変えると楽だと、真斗に教えられた。

最初は受け売りなんて何か嫌だったけど、最近は受け入れ始めている。

だって楽なんだもん。

そのせいなのか、最近は隙あらば楽をしようとしている自分がいる。

だんだんダメ人間へと引きづられている気がする。

気のせいだといいんだけど。


そんなわけで今日も今日とて退屈な1日が始まった。

その時間を真面目に過ごしているのだ。

疲れるのは当たり前。

だからお腹も減る。

楽しみのお昼時がやってくるまで非常に長かった。

なのにまだ後2時間もあると思うと伸ばした背筋が前に倒れていく。

「どうしたの?」

一緒に食べてる子が聞いてくる。

「やー、暑いなーって。」

暑いからだるいなんてのは口が滑った時だけ。

「ふふ、暑いと全部面倒くさくなるよね。」

お、代弁してくれるか。

「だよねー。(あたし)のとこはいつもエアコン効いてたから、それもちょっとやり過ぎな気もするけど。」

ただただ風を一定に一定の場所にしか送らない時々軋む扇風機を見る。さすがに睨みは、しないと思う。

「それもそれでちょっといやだね。でも、最近は少し涼しくなってきてると思うよ。」

「そうかなー。」

「うん、少し前なんてみんな授業中でも下敷きで煽っててそれでも汗だくだったから。」

うげぇ、聞くだけで余計暑くなってきた。

「先生も煽ってたから教室内はちょっと騒々しかったよ。」

微笑む顔で涼しくなる。

(あたし)のとこは快適すぎて寝てる子ばっかりだったよ。私も何度か危なかった。」

寝てはないんだよね、ただ瞼の裏を見つめて授業とは違うことを考えてただけで。

「羨ましいなぁ。でも私たちもプールが終わったらみんな寝てたよ。先生達が気を遣ってくれてお昼寝の時間なんかも作ってくれて。」

羨ましそうに話しながらも対抗して自慢してくる。

あー、向こうにいる奴らがだんだんウザく思えてきたー。

いや、うざいのか、まあ私もその輪の中にいたんだけどさ。

「でも、もうプールの時期が終わったな、ってなんとなく思うくらい涼しくはなってるよ?」

そこで最初の話に戻った。

頭いいなぁこの子。

クラス内のテストでは"もちろん"私が1番だが、他の生徒も別段に悪いわけでもない。

かといって、飛び出しているのは一握りもなく、みんな平均的である。

思うに、みんな何処かで手を抜いているように見える。

それは楽な生き方だが、私はあまり好きじゃない。

いつ、本気を出すのか、それは本当に本気なのか、なんて自分で穴を大きくしていくだけで、その穴は出来た時点で塞ぐことはできない。

だから私は決まった時には、決めた時には本気を出す。

悔いなんて残したくないし言い訳を用意するほど暇は作れない。

だから何処かでここの人達とは一歩距離を置いていた。

本気でやる事は、疲れるけど、楽しい。

「そんなもんかー。」

(あたし)はこれからも本気で生きて行きたい。


だから、今の状況に腹が立っていた。

6限目、総合学習。

ほとんどが連絡事項や学校のイベント関連に費やされるこの時間、

どこも一緒で、今日は3週間後に迫った学園祭の話し合いになっている。

大まかな連絡と確認事項を終え、今は残った時間でクラスの出し物を決めている。

次の総合の時間から動き出せるように。

だが、生徒達は動き出さなかった。

意見を出す者は居たが、誰も賛成も反対もない。

そう思うとあまり鬱陶しくなくなっていた暑さとは別に、イライラしだした(あたし)はただ黙って成り行きを見守る事にした。

代わりに、決まった事に対しては本気で取り組む事にした。

ここの人達を本気にさせたい。

いつからかふつふつと湧き上がってくるその小さな想いは徐々に浸水し始めていった。

終業まで残り5分。

まだ5分、あと5分。

私は、まだ5分だ。

「じゃあ!」

痺れを切らして立ち上がる。

教壇の司会進行役の隣まで出る。

「ここから決めるよ!」

怒っている訳ではない。

ただこいつらは一喝してやらないといつまでもダラけた空気で進行していく。

今のいままでそうだった。

でも私がいる以上それで、それだけでは終わらせない。

教壇の上からクラス全員を見回す。

見下しているようにも見えただろうがそれで構わない。

先生はただ進行役の席に座って一緒になって様子を窺ってるだけ。

なら、好きにさせてもらうよ。

「みんな伏せて。」

理解していない者が多いので、再度同じ口調で言った。

「みんな、伏せて。」

犬の躾でもするような声音。

座っている生徒達が伏せたのを確認する。

悪ふざけで伏せようとしないもの少しだけ覗いている者と目をただ合わせただけ。

そうして先生に伏せさせ、進行した。

「じゃあここにある案から決めます、みんなそのままで自分が、本気でやりたいのに顔を上げて。」

元の司会進行役には票を数えてメモしてもらう。

「起きて投票出来るのは2つまで。私が言ったら3秒以内に顔を起こさなかったら無効。別に無理してどれかに入れなくたっていいよ、ただ文句は言わないでね、もともと言わせる気はないけど。」

思っている事もハッキリと口に出す。

今はその方が効果がある。

それに本気を出すとブレーキが効かなくなるのは良くあること。

だって全力なのだから。

「じゃあまず。」

項目を淡々と読み上げる。

残り4分。

「それでは。」

項目を言ってから時計の秒針が3回揺れるのを確認しすぐに教室内に目を戻す。

その時点で目に写った人数を進行役に告げ、数字を記入。

「じゃあまた伏せて。はい。」

急かす。

「次。」

誰一人顔が上がらなくても、同じ事を言う。

「じゃあまた伏せて。はい。それと先生も参加して下さいよ。」

先生は手を振り返事した。

「次。」

全部で6項目から得票が多かったのは焼そば屋。

それだけを黒板に残し、全部消した。

残り2分。

「みんな起きて。それじゃあ(あたし)たちの出し物は屋台。焼そば屋で決まりました。」

また全員の顔を見渡す。

「資金や材料、器具なんかは先述通り先生と学級委員、実行委員が話し合って決めます。決まり次第後日連絡します。他の者達の具体的な動きはそれからですので。」

先生に目をやる。

頷いて立ち上がった先生は自分に注目を集めるために手を叩く。

私は進行役にも席に座るように言って、先生が教壇に着くと座った。

残り1分は既に切った。

「ありがとう、青山と高崎。さっき言ってくれたようにまだ始まったばかりだ。時間もあるから今日はここで終わりだ。」

先生が教卓の上を片付ける。

「起立!」

みんなが立ち上がる頃に終業の鐘が鳴り。

礼を済ませる。

先生が教室を出る。

分かってはいたが、何人かが(あたし)にの事を口にしている。

悪口は聞こえなかったがあまりいい気はしない。

帰り支度をしていると委員長がこっちに来た。

「今日は凄かったね。感動したよ。」

それから今日は委員長と帰った。

私からコンタクトを取るつもりが向こう側から是非にと学園祭の会議に参加した。

それが終わって今は委員長が感想を述べている。

とここで。

「ねえ、一つ聞いていい?」

「ん?」

バス停が遠くに見えてきた。

「何で手じゃなくて顔を上げさせたの?」

「言ったってどうせ覗く奴が居るんだから最初っから誰が一緒に投票してるのかわかるようにしてあげたの。」

「そういう事。でも先生も一緒に参加させるなんて、くふふ」

「投票するのに恥ずかしがる奴も居るからね。プライバシーだよ。

それに先生だってもちろん参加するんだからどうせなら自分のやりたい奴の方がいいでしょ。"学園"祭なんだから。」

「ああー!なるほど!そうだねそうだね。うん、そうだね!」

何だか気恥ずかしいな。

「凄いなぁ、高崎さんって。」

バスの待合席に座る。

「いや、そうでもないって。」

何も浮かばなかったからとりあえず否定した。

「凄いよ、何だか私も例年以上きやる気が出てきたよ!」

「だと、嬉しいよ。」

「うんうん、やー、楽しみになってきたなぁ!」

足をぶらぶらさせて感情を表現する。

「うん、ふふ、でもまだ先だよ。」

それは私も同じで。

ただバスが向こうからやって来たので話はここまでだった。

「あ、バス来ちゃったね。」

先に気づいたのは委員長。

「あ、ほんとだ。」

「それじゃあ、また明日ね。今日はとっても参考になったよ!」

「だと良かったよ。またね。」

「うん、バイバイ!」

互いに笑顔で手を振り合う。

委員長の笑顔は夕日に照らされキラキラとしていた。

少し見惚れてるとバスが着いた。

行きと違い、まだの外を眺めながら今後の事を漠然と考えていた。


家に帰ると夏七子ちゃんと一緒にお風呂で学園祭の話題になった。

そこでお兄ちゃん_真斗にはまだ伏せておく事になった。

まだ決まったばかりで、情報がそれほど確定的でないし、いずれ親御の方への案内とかのプリントを貰うだろうし、と。


次の日から何故か私に挨拶する子が増えていた。

てっきりウザがられたのかとばかり思っていたけど、そうでもなかったようだ。

何もない事はいい事だが、行きのバスで少し身構えていた自分が恥ずかしくなっていた。

そして今日1日を観ているとなんだかいつもと違和感を感じた。

何だか全体的にやる気が感じられるような。

私はそれに少し不安を抱いた。

今日の会議なんとか材料、資金の仮案が決まった。

これから町内会で先生が掛け合う事になっているが、私達の出る幕ではないので三人で寄り道して焼そばを食べに行った。

「いやー、やっぱり一人でも増えると早くなるねー。」

「その一人が高崎さんだから凄い早いよ。それに話も何だか、しっかりまとまってる感じだし。」

「私はこういう行事好きだからね。でも私だけじゃないよ。みんななんだかやる気でしょ?」

だから少し不安なのだが。

「そうだねー。なんだか良い雰囲気だしっ。こんなの久しぶりじゃない?」

「そうだね。私は初めてのような気もするけど、みんながやる気なのは良い事だよ。」

「あ、来たみたいだよ。」

店の女将さんが盛られた焼そばを持ってきた。

「今日は女子会かい?」

「ちょっと違いますけど、まあ女子会ですかね。」

「女将さんも入ります?」

「良いね!いろいろ聞けるし!」

「ふふふ、ありがとね。じゃあお邪魔しようかしら。」

「やったあ!」

女将さんが空いていた委員長の隣に座った。

それからサービスで目玉焼きの乗った焼そばを啜りつつ女将さんに色んな話を聞いた。

焼そばの話だけじゃなく、女の子らしい話題でも盛り上がった。

「あ、高崎さんバス大丈夫?」

「え。そうだね、まだ大丈夫だけど、そろそろ帰ったほうがいいかも。」

「うん、楽しいからってあんまり夜遅くまで遊んでちゃあダメだからね。アタシも一緒になって話し込んじゃったけどそろそろいい時間だからみんな帰りなさい。」

女将さんがやさしく送り出してくれた。

「それじゃあ。」

みんなでお代を払って、解散になった。

委員長も青山さんもバス停まで送ってくれた。

「はー、帰ったら晩御飯があるよ〜。」

「いいじゃない、食欲の秋なんだから。」

女の子の中では特に元気で、活発的な青山さん。

「それで太らなかったら世話ないわよ。」

「えへへー。」

委員長が恨めしそうに青山さんを見る。

体質だからしょうがない事だが、(あたし)からしても羨ましい。

「あ、そう言えば、連絡してなかった。」

「美味い飯を食べる事は幸せ、贅沢なんだから。」

「ちょっとおやじくさいわね。」

「えぇ〜?やめてよー、まだ若いんだけどー。」

「若さなんてあっという間よ。気がつけばしわシワ皺。」

「そういう委員長はお母さんみたいな事言うんだね。」

「な、何をー!」

「いいぞー!もっと言ってやって!」

「あなたもー!」

「「「あははは」」」

三人で笑いあった。


次の日から、私、委員長、青山さんの三人でつるむ事がだんだん多くなっていった。

学園祭の準備は着々と進んでいった。

そろそろ全体でも動き始めた。

そこで親御宛のプリントが渡され、あまり気は乗らないけど夏七子ちゃんと一緒に、来てくれと真斗を誘った。

どうせやるなら盛大に、と毎年中学生達と合同でやるそうで、

来週からは中学生達とも一緒に本格的な準備を進めていくんだそうな。

今はまだ残り2週間を切ろうとしていた。

鬱陶しかった暑さや不安を忘れて、私は学園祭に向き合った。

度々焼そば屋の女将さんにアドバイスなんかを貰いながら、三人の主導の下全体で動いていた。


楽しかった。

留学して良かったと思い始めて来ていた。



でも、忘れていたんだ。




















多忙に追われ少し遅れてしまいました。

お待たせしました。


1話が伸びてて嬉しかったですまる

と、喜んでいたものの何故か後書きが消えてて、

多分コピペしようとして忘れてしまったのだろうと思います。

もう取り返しが付かないので、

取り敢えずここに書いていきます。


主人公は、「高崎(たかさき) 綺音(あやね)

17歳JKです。

舞台は、私の頭の中のイメージの田舎。

村にしようか迷ったけど、田舎にわかがバレるので町程度にしておこうかなと。

これぐらいですかね。

上記以外のは物語内で解説していくと思います。

委員長の名前も考えておかないと…


それでは閲覧いただきありがとうございました。

そして、2話目になりますが、今後からもご応援いただけると嬉しいです。

それではまた次回。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ