are you hungry ?
「あかね、こんなとこで何してる。」
「……」
「そんな所で何している。」
「………」
一歩、歩み寄ると朱音はビクッと肩を震わせた。
「…来ないで…」
うな垂れたまま零す。
「え…ぁ」
何も言えないが、足が勝手に動く。
「あっちに行ってよ!」
吐き出された明確な拒絶に、ついに体は動くのをやめた。
まるで時が、心臓が止まったかのように。
そこへ扉が勢いよく開かれた。
「真斗!」
志水先輩を探していたはずの、道永先輩だった。
「っ…」
朱音はバツが悪そうに顔を伏せた。
「朱音…?これは、」
無残な光景に困惑する道永先輩の目にようやく、
探していた朱音の側で横たわる志水先輩が映った。
道永先輩は言葉を失った。
「それで、話って何ですか?」
「計画の進行状況だ。」
「わざわざ直接じゃなくたっていいじゃないですか。」
「情報を改竄されては困るからな。」
「そんな事しませんよ。」
「お前、私の前で嘘がつけると思うなよ。」
「はぁ…分かりましたよ。」
それからいくつかめぼしいクラスを渡り歩き、
終了のチャイムが近くなったので夏七子ちゃんと別れた。
「じゃあまた後でねー!バイバーイ」
元気よく手を振る夏七子ちゃんにみんなで手を振り返しクラスに戻った。
教室に入ると既に大体の生徒は揃っていた。
それからチャイムが鳴るギリギリで先生がクラスに顔を出し、ほぼ全員に後片付けの指示と業務連絡をした。
「じゃあ今日はお疲れ様、明日はしっかり休めよ。
それと高崎と秋月は後で来い。」
「はい。
起立、礼。」
私は自分の荷物をまとめてから先生の下に行った。
「ここじゃ話せない。」
そう言って教室を出た先生の後について行った。
すると、着いたのは先生の教卓だった。
「開けてみろ。」
鍵の付いた引き出しを指差した。
訳もわからず言われた通り引き出しを開けた。
引き出しは引っかかりを感じたものの、開くには開いた。
中は散乱としていた。
「分かるか?」
「え?何が、ですか?」
「鍵は私が持っている。」
鍵を私達に見せた。
「あっ」
委員長の顔色が変わる。
「どういう事?」
まだよく分かっていないので、説明を要求した。
「"引き出しの鍵が壊れた"んだ。」
「高崎さん、鍵を壊す時ってどういう時?」
「それって…
鍵を失くした時とか泥棒がとか…」
先生が見せている鍵に目がいく。
「えっ、じゃあ何か盗まれたの!?」
先生は
「私がお前らから預かったものを。」
と。
つまりは、今回の学園祭の売り上げ金。
菓子折りの缶に詰め込んで、後で精算して募金する予定だった。
当然その管理・精算は先生の仕事だ。
先生はちゃんとしている。
鍵もかけていた。
じゃあその先生の隙をついて盗む奴は…
教室に居なかった者を思い出した。
その中に、山本穂花が居た。