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空の空  作者: lycoris
空の空
17/113

不運

「いらっしゃいませー!」

喉が潰れない程度には大きな声を張り上げる。


今日は一般公開の日だ。

と言っても、近所にある高校や中学校とは電車で3、4駅以上離れているので訪れる同年代は少ない。

その代わり親御さんやご近所さんたちばっかりだ。

たぶん声を張らなくても立ち寄ってくれる人は居るんだろうけど、今日は祭りだ。

何かしら叫び暴れたいのだ。

だから、出来る事は全力で!



昨日の騒動のおかげで残りの食材は少なかった。

犯人はまだ分かってはいない。

が、今はそれより目先の事だと 。

だから、みんなで出来るだけ自宅から持ってこれる食材を持ち合わせた。

無理に新品のまで買ってくる必要はないと言ったが、献立を変えてもらった生徒()が何人か居た。

申し訳ない気持ちもあるし、だが今は感謝だけを伝えた。

こうして奇しくもクラスの団結は昨日より強くなった。


当然予定していたよりも提供できる数は減ったが、やる事自体は変わらないので、

全力で楽しんで、全力で頑張れば、全力で楽しい。

今はもうお祭りをただただ満喫していた。

提供する側、される側。

やっぱり、文化祭はこうでなくっちゃ。


「そろそろ材料なくなるから切り上げてって」

委員長から伝言を受け取った。

「分かった。」

「了解ー」

真斗、まだ来ないのかな。

「あ、お兄ちゃん!いらっしゃい!」

噂をすると、売り子をしていた夏七子ちゃんが真斗を見つけたようだ。

「遅いよお兄ちゃん!もう無くなっちゃうよ。」

そうだそうだ。

「悪いな久しぶりに爆睡してた。」

確かにいつも私が起きると起きているのに今日は寝ていた。

学校に行く時もまだ。

「何かあった?」

「何もないよ。何もないから眠っていられたんだ。」

「よく分かんないの。」

真斗はそう言いつつ夏七子ちゃんの姿をカメラの写真に収めた。

「じゃあ4個で。」

「あいよー。おっ、これで丁度無くなるかな。」

気がついたら会計の生徒が、私が呆けている間に接客を済ませてしまったようだ。

「え?あっ。」

私が我に帰った時には鉄板の上に4人前のタネと空になったボールが隅に退かされていた。

慣らされた体が勝手に動いていた。

「ごめんねお客さん、前の人で売り切れになっちゃって。」

「え、もうないの?」

「ちょっと色々あって品薄でね。まあ売れ行きが良かったってのもあるけど。」

「そうかぁ…」

会計に言われ、真斗は目に見えてガッカリしていた。

どうしたものかと考えつつ、真斗の後ろに並ぶ人たちにも説明をしてお詫びした。

「残念だったね、お兄ちゃん。」

「あー、もう少し早く起きてたらなぁ…もっと早く…」

「相変わらず寝坊してるんですね。」

「いやぁ、今日が久しぶりだよ。いつもはお日様より早く起きてんのになぁ〜」

「ねぇ、委員長。本当にもう材料ないの?」

「ない事はないけど、みんなの分だからねぇ。私もどうにかしてあげたいけど、勝手に売るのはさすがに。

それに真斗さんだけ特別扱いするのもちょっと。」

至極もっともだ。

「じゃあ私の分いらないから代わりにって、出来る?」

「う〜ん。まあいいんじゃない?」

「いいのか、綺音?」

「せっかく来てくれたからね。それに私は試食で何度か食べてるから平気だよ。」

「ありがとう、悪いな。」

「いいよ、このくらい。いつものお礼もあるし。」

「…そうかそうか、ありがとう。」

「はい。」

真斗と話してる間に委員長が材料を持って来てくれた。

「ありがと。じゃあ夏七子ちゃんも一緒に作る?」

「うん!」

材料は事前に切ってあり、後はタネにするだけなので夏七子ちゃんにも手伝って貰う事にした。

「じゃあその間に。はい。」

委員長が真斗に向かって手のひらを見せる。

「ん?」

「お代。」

「え?取るの!?」

「まあ形式的に。」

「あー、まあそうだよな。ほれ。」

「まいどありぃ。はい、お釣り。」

会計がお釣りを渡そうとするのを制止する真斗。

「いや、いいよ。ソレで後でここにいるみんなでジュースでも飲んでよ。」

「やったー!」

「道理で小銭で払わないわけだ。」

「いらないならいいよ。」

「冗談だよ、ありがとう。」

「いえいえ、こちらこそ。どうもいただきます。」

真斗に出来たてのお好み焼きを渡そうと

ドンッ

はしゃいでいる少女が真斗にぶつかり、反動で真斗はお好み焼きを受け取りそこない地面に落とした。

「「あっ!」」


「ご、ごめんなさい。」

少女は真摯に謝っていた。

隣の村から来てはしゃいでいたらしい。

一緒にいた子も同じように。

「いいよいいよ。それより怪我はないか?」

「いえ、大丈夫です。それよりも」

財布を取り出そうとした少女の肩に真斗が手を置いた。

「いいってば。そのお金で俺の分も楽しんでくれればいいよ。今度は気を付けろよ。」

「本当にすいません。ありがとうございます。」

半泣きの少女と半泣きの真斗。でも、2人の表情は悲しみではなかった。たぶん。

もう農家なんてやめて出家すればと、見てる側は思っていた。

「どんまい、お兄ちゃん。」

落としたお好み焼きを掃除する夏七子ちゃんが真斗を励ます。

「いいんだ、これで。」

若干拗ねてる真斗。

「ま、家でまた作って貰えば?」

「そうだね。今度作ってあげるよ、真斗。」

「ああ、そうだな。ありがとう。」

「私も作ってあげるから。だから元気出して、お兄ちゃん。」

「いい子だなぁお前は。」

真斗は優しく夏七子ちゃんの頭を撫でた。


























所々ミスがありそうで怖い。

夜な夜な書き溜めてるのでご容赦を。

もっと更新頻度を上げれたら良いんだけど、

はい、頑張ります。



そういえば一切触れてませんでしたが、

お好み焼きは全ての材料を細かく切ったのをタネにちょっと楕円よりにしたのを発泡スチロールのパックに無理矢理入れてる、みたいな感じで補足を。

コンビニで売ってる長細いようやつみたいな感じのような。

または各自脳内補完でお願いします。


それではそれでは

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