天晴れ
あけましておめでとうございます。
昨年はご閲覧ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
「………た………………お………
…た…………きて…………...高崎..ん、.....て。
高崎さん、、起きて。」
「んぅ…?」
「ほら、起きて!」
よく聞く声が、いつもの目覚めとは違って、聞こえて来る。
「んん…ぁれ、?」
「もうすぐ始まるから、しっかりしてよ。」
目の前には委員長が居た。
「あ、れ?なんで?…ここどこ?」
「ほんとにずっと寝てたのね。ここは学校。真斗さんが運んで来たの?」
「え、、そうなの?」
「そりゃあね。高崎さんを背負って教室まで入って来たわ。」
「へー、そうなんだ。」
瞼を擦りながら状況と過程を確認する。
「…あれ?」
「ん?」
「今何時?」
「10時。」
「え!?」
見渡すが時計は見えない。
「ほら。」
委員長が腕時計を見せてくれた。
「朝の?」
「ここは南極じゃないのよ。」
「えええええ!もう何が何だか…」
もういっそこのまま寝てしまいたい。
「今日までの疲労が祟ったかもしれないから出来るだけこのままにしておいてやってくれって真斗さんには言われたけれど、
今日まで頑張ってきたからこそトップバッターをやらせてあげたかったんだけど、 やっぱり変わる?」
「あ、いや、いいよ。
ありがと、頑張る、うん。」
なんとなく整理はついた。
自分でも気づかないうちに疲れていたのだろうか。
立ち上がって伸びをする。
「おっと!」
力を抜いた瞬間に体がフラつく。
「ほんとに大丈夫?」
私を支えながら心配そうに聞いてくる。
「う、うん。ただの立ちくらみだから大丈夫。」
まるで自分に言い聞かせるように答えた。
「無理はしないでね。」
「ありがとう。でも、ここで止まる私じゃないよ。」
「ふふ、なんだか頼もしいね。」
「今日で終わりじゃないからね。絶対に成功させなきゃ。」
「うん。」
私たちの店の開店は11時からだ。
それまでは各々で試食や他のクラスを回ったりする。
私は試食だけ済ませて時間まで眠ることにした。
「高崎さん。」
体を揺さぶられて起きる。
「2回目だね。」
「ふふ、そうだね。でも…」
「ん?」
「いや、なんでもないよ、頑張ろ。」
「そうだね!」
きっと私を心配してくれたんだろう。
ありがとう。
心の中でつぶやき、支度に入った。
客足は12時に近づくにつれ増えて言った。
食べ盛りだから2つ頼む男子も多くいた。
おかげで忙しいが、それ以上に楽しかった。
クラスのみんなで一緒になって何かをするのが。
評判が良かったらしく2時過ぎになっても列が出来ていた。
3時頃にもなるとさすがに居なくなり、みんな自分のクラスの片付けに向かっていた。
そんな中、次は教師陣がちらほらやってきた。
「よう。」
担任の先生が来て挨拶をする。
「あ、こんにちわ。」
「2つくれ。」
「2つも食べるんですか?」
「朝から何も食ってないんでね。」
「はーい。」
「繁盛しているようだね。」
料理を待っている間先生が話しかけてくる。
「おかげさまで。」
「明日は見に来れないが、これなら心配は無さそうだね。」
「はい、任せて下さい。」
「…頑張れよ。」
先生は囁くように呟いた。
「?」
周りの雑音もあり上手く聞き取れなかった。
「いきますよ〜…
よっと!」
委員長は得意げにお好み焼きをひっくり返した。
「ははは、上手いもんだ。」
「へへ〜ん。」
どうやら今日の委員長はいつもよりテンションが高いようだ。
商品と食券を交換して先生は帰って行った。
「それじゃあごちそうさま。」
「先生もお疲れ様です。」
「ありがと。」
時刻は3時半を過ぎ、一度クラスに集まって解散となる。
「起立!
礼!」
今日も委員長の号令で1日が終わる。
さて、戻って片付けて、明日に備えて早く帰ろうか。
そう意気込んで屋台に戻ると、
そこに屋台はなかった。
さっきまで屋台下で私たちは確かにみんなに料理を振舞っていた。
今はなぎ倒され、食材や食器などが床に散乱していた。
ちょっと離れて教室に戻っていただけだ。
それは他の生徒も一緒。
他の_____
「酷いな、これは。」
立ち尽くしている私の横に先生が来た。
「さすがにこれはやり過ぎだ。それより、山本を見なかったか?
HLの時から居なかったんだが。」
気付いたら体が動いていた。
足が走り出していた。
あいつは、
あいつは、 殺してやる
絶対に成功させたかった。
今回は絶対に。
最初で最後なのに。
これまでの準備が、
これからの思い出が、
全部。全部、全部,全部全部!
いつのまにか知らない道をただひたすらに走っていた。
空は私の心のように暗く曇りがかってる。
目に滲む涙が溢れないように走っていると、私の頭上に雨粒が垂れる。
次第に勢いが強くなり流れているのが、雨なのか汗なのか涙なのか分からなくなっていく。
叫んでいいのだと言うほどに地面を強く打つ雨音。
そんな中すれ違った。
「綺音?」
ふと我に帰った。
振り返ると2人組が1つ傘の下に居た。
「…友慈?」
声だけで分かったが、振り返って顔を確かめる。
確かに私の知っている友慈の面影を持った少年がいた。
「やっぱり…それに霞まで。」
友慈の隣にいたのは昔同じ学校にいた女の子。
整った綺麗な容姿をしていたので今でも覚えていた。
「こんな田舎にどうしたの?」
息を整えながら尋ねる。
「お前の方こそこんな雨で何してるんだよ。」
「何だろうね。私は今、何してるんだろうね。」
自虐風に答える。
自分でも分からないんだ。
「そうか、なら、雨か晴れ。どっちが好き?」
「ふふ、知ってるくせに。
晴れ、青空に燦々(さんさん)と輝く太陽が好き。沈みかけた夕日の物寂しい残光が好き。光いっぱい敷き詰めた星と月が見える夜空が好き。」
「分かった、任せとけ。」
「ありがとう。じゃあね、友慈、霞ちゃん。私、帰らなくちゃ。」
「…またね。」
「俺は出来ればもう会いたくないけどね。次に会う時は多分…」
「そうだね。でも、きっと大丈夫だよ。お互い長生きしようね。」
雲の割れ目から沈みかけの夕日が差している。
私は虹の下を目掛けて振り返らずに帰り道を走った。
大丈夫。
まだやれる事はある。
それは全てじゃない。
それが全部ではない。
まだ終わっていない。
やれる事はいくらだってある。
今からでも大丈夫だ。
必ず成功させる。
絶対に。
晴れ渡った空の下、答えに向かって走った
だいぶ遅くなって本当に申しわけないです。
今回のはコレだけはやっておきたいと言うので、
思考錯誤していました。
それだけでもなく忙しいと言うのに中々まとまりませんでした。
今回は『贈り物』から大山友慈くんと幽ちゃんの登場でした。
それでは