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空の空  作者: lycoris
空の空
13/113

アカネの星

「ふぅ。」

お風呂から上がって一息付いた。

今日は真人が夕飯の当番で、既に沸かしてあった一番風呂を貰った。

自分が当番だという事を忘れて沸かしたようで、夕飯がいつもより少し遅くなるので一番風呂を代わりに貰った。

やはり一番風呂はイイものだね。

何故か入念に体を洗ってしまったが。

何故かいつもより気合の入った下着だが。

髪を乾かし終わり、一息付いた。

「はぁ…」

まるでため息のように。

タオルを首に巻いたまま風呂場を後にした。

とりあえず自分の部屋に戻って夕飯が出来るまで待つ。

最近ボーッとしていると眠ってしまいしかも悪夢を見ているので寝ないようにケータイで青山さんとメールをしながらゲームをしていた。

明日からの学園祭が終わればその翌週にはテストが控えているのだが、今のところ出ている宿題は全て終わってるし、範囲だって向こうで春頃には済ませてある内容だった。

そのテストが終われば、私の留学も終わりだ…

あまりこっちに長居し続けたら元の所についていけなくなる。

置いていかれるわけではない、たぶん、私がついていこうとしないんだろう。

長居してしまったら、きっとみんなとは違う方向を見るようになるだろう。

そうなったら(あたし)は…

「飯出来たぞー!」

思考を遮るように真斗が大声で呼びかけた。

「はーい!」

振り払うように大きく返事を返した。


今日のご飯はいつもと違う味がした。

いつもは真斗の当番だろうと私の当番だろうと夏七子ちゃんが手伝いに入って来るのだが、今日は真斗1人だけ。

夏七子ちゃんの当番の時は心配でしょうがない真斗が手伝っているが、おかげでたまに誰が当番だか分からなくなる時がある。

そのせいか毎日の味に偏りはないはずだが、1人だけにやらせるのはたぶん私の知ってる中では初めてだろう。

だからなのかよく分からない味だった。

サイコロステーキに味噌汁と漬物、普通のメニューだと思うが、ステーキ以外はいつもに似ている。

ステーキは、まさしく初めて食べる味だった。

肉も牛か豚か分からない。

だが不思議と食は進んだ。

「何か今日はいつもと違う味だね。」

「ああ、夏七子が居ないから酒を多めに使ったんだ。」

微かに真斗が言い澱む違和感を感じた。

「俺はこっちの方が好きだけど、美味しくないか?」

「いや、そんな事はないよ。」

酒の味はしない。

飲んだ事はないが料理酒くらいは私でも分かると思う。

何故真斗は嘘を付く必要がある。

よく分からないが詮索せずいつも通り近況を話し合った。

「明日は来れないんだよね。」

「悪いな、さすがに平日はな。」

「ううん、しょうがないよ。こっちも明日は身内で、明後日は保護者向けにやるノリだし。」

「そうか。明後日は絶対に行くよ。」

「うん。

そういえば、クラスのみんなと仲が良いみたいだけど。」

気になっていたことを聞いてみた。

知り合いというには距離が近いというか、

友達にしてはちゃんと年上への尊敬の念はあるみたい。

「ああ、それはな。俺はここで育ったんだけど、就職する時に出て行ったんだよ。んで、いろいろあってこっちに戻って来たんだ。

出てく時にお袋に止められたんだけど、それでもって出ていって、結果戻って来た時には俺の居場所は無かった。」

「なら、どうして出て行ったの?」

「…ちょっと嫌な事があってな。それから逃げ出したくて。」

空気が重くなった。

「あ、ごめん。」

「いや、逃げ出した俺が悪いんだ。だから当然帰って来ても居場所は無い。」

「じゃあなんで?」

「俺が出て行ってから戻って来るまでに間があったんだ。

長い間が。

俺を拒絶する人達には子供が出来ていた。

だからまずはその子供たちと仲良くなっていったのさ。」

「それが…」

憶測が口から漏れた。

「そう、あいつらだ。

おかげで少しずつみんなと和解していったんだ。

少しずるいとは思ってるんだが、あいつらは『これからも仲良くしてくれるなら許す。』と言ってくれた。」

「へぇ〜。」

なんとなくその風景を想像する。

「ちなみに一番最初に仲良くなったのは?」

なんとなく気になった。

「もちろん夏七子だよ。」

「え?」

「言ったろ、間があったって。

だからまずは一番近くにいる夏七子から。

次にばあちゃんに世話になってそれから徐々に徐々に。」

「ふーん。」

「ま、そんなところだ。

さ、ささと皿を洗いに出して。」

話している間に食卓に並べられた料理はなくなっていた。

「はーい。」



夜、いよいよの学園祭を前に、いつもどうやって眠りについていたかをド忘れしていた。

同じ現象に襲われていた青山さんも、ついにはメールの返事が途切れてしまっていた。

「とりあえずお茶でも飲もう。」

無気力な足取りで冷蔵庫に向かう。

リビングには明かりがまだついていた。

「あれ?」

だが、そこに居た真斗は眠って居た。

お茶を一口飲み終えて、真斗の寝顔を拝見しに行く。

この頃、夜になると薄着には辛い気温になって来ているが、そんなものを気にもしない呑気な寝言と豪快ないびきをかいていた。

星がよく見える縁側で、ビール缶の近くに投げ出された左腕と、

何かから守るように抱え込む右手。

握られた右手から覗く【恋愛成就】のお守り。

「ぁ…ね、

あ…ね…













、あか…ね」



























ここから話が本格的に展開して行くので、ふせんや布石に見落としや置き忘れがないか慎重になって来てます。


ほんとはもう少し進めたかったですが、遅くなってしまうよりは、と思ってます。

いつも見ていただきありがとうございます。

それでは

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