友慈
背筋を伝う悪寒に身震いをする穂花。
「大丈夫ですか?」
「何か、嫌な感じがした。」
振り返る穂花に構わず進む綺音。
「あながち、間違いじゃないかもしれないですよ。」
「珍しく弱気だな。」
「本気で怒ってる雰囲気だから。
巻き添えが怖いですよ、本当に。」
「確かに離れてた方が良さそう。
あれはヒステリー入ってる。」
しばらくして再び門扉の前に立つ。
チャイムを鳴らすと中から慌ただしい物音。
その割に返事はない。
もう一度鳴らす。
今度は反応がない。
連打する綺音。
視線をカーテンに向ける綺音。
するとカーテンが揺れた。
痺れを切らした綺音がドアをけたぐる。
その音に反応して揺れるカーテン。
綺音は面白がってるわりに冷めた顔をしていた。
それに余計恐怖を煽られる3人。
「何の用ですか…!?」
震える声で返事が来た。
「顔、見せてよ。」
「…そんなに見たければ、鏡でも見ればいいでしょ…!」
その返事が不服だったのか、もう一度ドアを強く蹴る綺音。
恐らく中で絢音が転がる音。
「お願いだから帰ってよ!
この前は引き返したでしょ!?
いったい私に何の用なの!?」
「教えてあげるから出て来なさいよ。」
「嫌だ!
絶対にヤダ!!」
「この家を壊されるのと、大人しく出てくる。
どっちがいい?」
「....」
「3...2...」
「分かった!分かったから!!」
慌てて飛び出した絢音。
改めて瓜二つな2人。
双子も真っ青、まさにクローンの様。
「それで、何?」
いつでも逃げ帰れる様、後ろ手にドアノブに手をかける絢音。
「死んで欲しい。」
笑いかける綺音。
「嫌だ」
「嫌じゃない。」
「何でよ!?」
「お前も私なら分かるでしょ?」
「分からない!」
「なら尚更、死んでよ。」
「嫌だってば!」
姉妹喧嘩にも見えない。
脅迫。
以前と変わらない。
「生きてる事が許せない。」
「じゃあ会わなければいいでしょ!
私の前から消えてよ!」
「ダメ。
出逢った以上はどちらかが消える。
そういうモノでしょ、私達。。」
「どうしてそうなるの!?」
「お前を見て確信した。」
「あなたに何かした?」
「お前は何もしなかった。」
「だから頼んでるの。」
「お前が私に消されるか、
お前が私を消して。
それで事が終わる。
それで一つになる。」
「…なら、あなたが消えてよ。」
「!?」
窓から友慈が降ってきて、
綺音の右腕が切り落とされる。
「話はつきそうか??」
「え」
絢音の前に立ち塞がる友慈。
後ろのドアが開いて幽も出てくる。
「とりあえず、ソレしまっておいて。」
幽が持っているクーラーボックスに綺音の切り落とされた腕をいれる。
「とりあえず全員、一旦動くな。」
切先を綺音に突き立てる。
「まずは、話をしよう。
大丈夫、腕なら後で引っ付けるから。」
やっと先生が言っていた意味が分かった。
綺音さんが絢音に勝てない理由。
この男が邪魔に入るから。
先生の言葉の通りなら今この場で1番強いのはこの男。
こちらが3人で束になっても勝てない。
既に綺音さんは負傷していて穂花さんは竦んでいる。
ここは大人しく彼の言う通りに従う。