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空の空  作者: lycoris
その後
113/114

美子 と

「え?」

絶句する穂花。

「美味しかったかい?」

「……。」

温度差に気怠げな綺音。

「普通。」

「そっか、残念。」

そこに扉を開けて美子が入ってきた。

「ま、生きてるんだけどね。」

「?」


「冗談でもやめて下さいよ。」

「嘘は言ってないよ?」

「え?」

「あー、この話?」

そういって美子がかざした左手は

「もう要らないから。」

薬指が足りなかった。

「何で?」

「いちいち言わないとダメ?」

「…」

「ただのケジメ。

本当は腕ごといこうと思ってたけど、止められたから。」

落ち込む穂花をよそに話を戻す。

「それで、私に何の用?」


「あぁ、彼女の件ね。

その様子じゃダメだったみたいね。」

「この人が脳筋過ぎるので何か楽にいけるのがあればー ていう現状です。」

綺音を指して言う雄大。

「結局は暴力(ソレ)が一番早くてシンプルでしょ」

「でも、それじゃあ勝てないっていう話なの。」

呆れる美子。

「まだ会ってすらないのにどうして言い切れるの?」

「それは会えば分かるんだけど、この人も警告するくらいなんだから、

私の話を真面目に聞く気ある?」

黙って座って、それを促す綺音。

続いて雄大も座る。

「簡単に言えばドッペルゲンガー。

同じ人間が2人いる。

どうしてかは、知らない。

どこまで一緒かは、分からない。

簡潔に言えば1対1じゃ共倒れになるだけ。

だから人手が要る。」

「要らないけど。」

「…根拠は?」

「会えば分かる。

それは会う前から分かってる。

そもそも貴方達だって私が共倒れになった方がいいでしょ?」


「これは私の問題だから。」

立ち上がる綺音を制止する。

「それじゃあ、困るよ。

本来、それぞれの実験場で1人の生き残りを決める。

まだ実験は継続中だ。」

「でも、監督役が居ない?」

「引き継いだよ。

誰かのおかげで人手不足だからね。」


穂花達(きみら)の町は決まったけど、こっちがまだでね。

決着をつけてくれると助かるね。」

「それはそっちの都合。

こっちのメリットは?」

「生き残りと最強を名乗れる?」

「くっっっだらない!」

吐き捨てて綺音は出て行った。

「あーあ。

何が不満なんだか。

後は頼んだよ。」

「…はい。」

雄大が後を追う。

穂花(あなた)はいかないの?」

「なんだかあいつ、今までで一番無理してる気がする。」

「なんで?」

「それは、分からないけど、

見ていて痛々しいほど何かを否定してる。

様な気がする。」

「ふーん。」

「それこそ体裁を気にしないほど、何かに固執してる。」

「止める?」

「無理、いつもながら力不足。

止めるよりは見届ける、かな。

あの町の生き残りとして。」

「なら早く行った方がいいんじゃない?

ほら、彼女、イレギュラーだから。」

「そうする!」

「せいぜい頑張ってね。」

「はい。」

一礼をして去って行く穂花。


「さて、もういいかな?」

「十分ですよ。

とっくに。」

「じゃあ最後に遺すモノはある?」

「…__.。.。

ありすぎて、無いです。」

「そう。

じゃあ、ご苦労様。」


恨んでもしょうがないし、

願ってもしょうがないし、

諦めきれなくても、しょうがない。

せめて苦しまないのが救いか。

信じていないが、来世に期待でもして、

何も残せなかった今世に

さようなら


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