綺音と絢音、1
朝、呼び出された3人は生徒会室に集まった。
「集まってくれてありがとう。
朝食を用意したから食べながら聴いてくれ。」
「はい。」
それぞれが料理が並べられた席に着いた。
「じゃあ、今回の目標に着いて。
場所はここからそう遠くはないよ。」
ホワイトボードに地図を広げる。
「対象はここの生徒で、
名前は『高崎 絢音』。」
食事をする全員の手が止まった。
「どういう事?」
本人が聞く。
「行ってみれば分かる。
まあ腹ごなしにはなるさ。」
訝しみながら全員が食べ終わった頃、
「3人でやるんですか?」
雄大が尋ねた。
「協力しあった方がそりゃあ早く終わるけど、
1人じゃ難しいかな。」
「美子はどうしたんですか?」
「彼女は別件で、
居ないよ。」
「他には無いかい?」
「目的は?」
「計画に必要だから。
計画については答えられないけどね。」
「どうやって信じろと?」
「今は話せないけど、後で絶対に教えよう。
その時になって気に食わなかったら殺してくれていい。」
「…。」
「取りあえず、行くだけ行ってみます。」
「異議なし。」
「…じゃあ、そうしようか。」
「ありがとう!
よろしく頼むよ。」
猜疑心は拭えないが、今の所漠然とした目的しかないので従う事にした。
それに同姓同名の生徒が引っかかる。
それを綺音が知らないはずはない。
向こうにいる間の転校生か?
考えても分からないので行動する。
普通の家だった。
何の変哲も無い。
チャイムを鳴らすと聞き覚えのある声。
「学校のプリントを届けに来ました。」
平然と嘘を吐く綺音。
「…どちら様ですか?」
同じ声でのやり取り。
「高崎です。」
「ふざけてます?誰ですか?」
「顔見れば分かるはずだから、出てきてよ。」
「嫌です、帰って下さい。」
インターホンを切られた。
当然だ。
「「「…。」」」
「どうしますか?」
間髪入れずにチャイムを鳴らす綺音。
「…
はい。」
「お話ししましょ」
「何の話ですか?」
「ここでは話せないので顔を見せて」
「では、結構です。
お引き取り下さい。」
また切られた。
めげずに何度も鳴らすがもはや出てくれる気配はない。
「一旦待って。
止まって!」
制止する穂花。
不服な綺音。
面白がる雄大。
彼女らをドアスコープで覗く絢音。
時が来てしまった。
遂に来てしまった。
逃げだそうにも出口も入り口も同じ。
このまま3人が去ってくれるのを祈るしかない絢音。
「どうしよう、どうしよう」
不安が口から漏れ出すほどに狼狽する。
このまま籠城か
一か八かの賭けに出るか?
定まらない思考が、早鐘を撞く鼓動を更に加速させる。
過呼吸寸前かもしれない。
なった事はないけど。
「あぁ、どうしよう、どうしよう、」
迷いしかない祈りが通じたのか諦めたのか、
3人は気まぐれに去って行った。
緊張の糸が解け力無く座り込む。
ため息を吐いた後にはもう何もかも忘れて呆然としていた。
しばらく立ち上がり方を忘れるほどに膝が笑ってた。
あのままだと暴走した綺音が強行突破しかねないと判断して、撤退を推奨した。
雄大の先生が言った「協力しないと難しい。」という言葉が引っかかったから。
一度引き返して再度生徒会室。
相変わらず美子は居らず、雄大の先生だけが居た。
「やあ、おかえり、。
結果はどうだった?」
見透かした笑顔に問いかけた。
「まだ何にも…
所で、会長さんは何処ですか?」
「何か用でも?」
「手伝ってもらおうかと。」
「
あー、それなら
ここには居ないよ。
だって今朝
食べたじゃないか。
ここで。
」