遺言と 今更
「手伝いっすか?」
「そうだ、お前たちの強さを見込んで。」
「何をするの?」
「倒して欲しい奴がいる。」
「誰?」
「ウチの上司。」
「は?」
「詳細は追って連絡するよ。
それじゃあ、今日のところは解散でいいかな?」
「待って。」
美子が制した。
「お前は残れ。」
穂花を指差す。
「別にとって食わない。」
「じゃあ、俺も残っていいっすか?」
「「好きにすれば」」
綺音にとも美子にともとれる雄大の発言にハモる2人。
「…。」
黙って出て行く綺音。
先生はわざとらしく肩を竦めた。
「ほどほどにね。」
そう言って出て行った。
「正樹の最期はどうだった?」
「なんでアンタがそんな事聞くの?」
「今となっては遅いけど、
好き、だった、から。」
「!。
そう、だったんだ。」
着席する穂花。
「…最後は殺されたよ。」
「…。」
「誰かは分らない。
けど、その殺した奴は綺音が殺した。
だから結局、何も分らない。」
「そう。…」
「ごめん。」
「…何に対して?」
「やっぱり取り消す。」
穂花が席を立つ。
「もういい?」
「後一つ。」
美子も席を立つ。
「正樹に返事はしたのか?」
「何に対して?」
「アイツは分かりやすい男だった。
それにお前達の関係は歪だった。
誰がどう見ても。」
「……」
「その前に死んだよ。」
「いい加減にしろよ!」
掴みかかろうとする美子の前に立ち塞がる雄大。
「ふざけるのも大概にしろ!!」
「それが事実で、結果で、
私にだって!時間があれば!」
凄む美子に、返す穂花の声は震えてた。
「私は馬鹿だから!
あの時何も分かってなかった!
何も分かってあげられなかった!
今更なんだよ!
やっと分かった!
言わなきゃ分かんないよっ!!」
「狡い生き方!
許せない!
お前はそうやって他人を泣かせて生きてる!
許せな゛い゛!!
何でそんなお前が生き残っだ!?!
よりによってお前だ?!
お前なんかが生きていだっで!
お前がし」
雄大に口を塞がれる美子。
そのまま組み伏せられ抑え込まれる。
そんな美子を見下ろす穂花。
「私も、そう思う。」
「だから謝ったの。
でも事実だし、過去は変わらない。」
解放するように雄大を促す。
「生き残った以上、私は、私に出来る事をするつもり。」
息を整えた美子が髪を振り解く。
「あっそ、。
せめて苦しんで死んでくれれば私はそれで満足。」
「話はそれだけ。
ささっと失せて。」
虫を払うような仕草。
何処までも馬が合わないとつくづく
「言われなくたって。」
穂花は吐き捨てた。
美子に謝罪も含めてお辞儀をする雄大を引っ張る穂花。
廊下に出た後、一層引く手に力がこもった。
「強くなりたい。」
その言葉に返す言葉がない雄大は、
下駄箱にて今更泣き始めた穂花が泣き止むのを待ちながら、
薄情にも綺音と一緒に帰っておくべきだったと、
今更思った。