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空の空  作者: lycoris
空の空
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トワイライトバック

「青山さん、風邪は大丈夫?」

「別に風邪じゃ無いよ。」

「じゃあ家の用事?」

「風邪じゃないけど、少し調子が悪くって寝込んでたの。」

「そうなの?じゃあ今日はもう大丈夫なの?」

「うん、ありがとう。昨日よりマシで学校にもこれそうだから来た。」

「あんまり無理しないでね。様子を見て今日はもう帰るの?」

自分の所に顔を出したという事はそういう可能性もある。

「大丈夫だよ。」

「なら何よりだね。さ、時間も無いし作業を始めよ。」

自分の荷物を持って席を立った。

「待ってよ。」

「何?行かないの?」

「違うよ、そうじゃないよ。」

「?」

やっぱり今日の青山さんは様子がおかしいようだ。

「話、聞いたよ。」

「何の?」

「穂花ちゃんから、直接…」

「へー。」

何となく、状況が掴めそうだ。

だからまっすぐにこちらを見つめている青山さんの目を覗き返した。

「穂花ちゃんには、謝ったの?」

「謝ってないよ。」

「何で?」

「私は自分が間違ったことをしたつもりはないし、今回も向こうから喧嘩を売ってきたんだよ。」

「だから、手をあげたの?」

「うん」

青山さんの表情に影が差す。

「今でも悪くないって思ってる?」

「うん」

間髪入れずに答える。

「もう、いいよ…」

目線をズラして一度息を吐いてもう一度、強い眼差しで私を見つめた。

「じゃあ、答えをあげる。綺音ちゃんのやり方は正しくない、間違ってるよ絶対に。

絶対に。」

「…」

体の真正面から強い風が吹きつけてきているような感覚。

進もうとしても前には、まっすぐには進めないような。

「たとえ間違えていたって私は成功させなきゃいけないの。」

「絶対上手くいきっこないよ。

もしもこの間違いが、失敗は成功の母だなんて思ってるならそれは絶対に間違いだよ。」

「…それで、青山さんは私にどうしろって言うの?」

「まずは穂花ちゃんに謝って。」

「…」

「それから分かってもらえるように話し合って、手伝ってもらおうよ。」

「それで分かり合えなかったら?」

「綺音ちゃんらしくないね、やる前から諦めてるなんて。分かるまで何度でも話せばいいじゃん。」

「!」

寝起きのまま氷水に飛び込むような感覚。

「話し合いで伝わらないからって手をあげてしまったら絶対に、一生伝わらないよ。だから、私たちは話し合わなければいけない。

今なら間に合うかもしれない、だから今から一緒に穂花ちゃんの所に行こう。」

涙を零す私に青山さんは手を差し伸べた。

その顔を見てしまったから余計涙が止まりそうになかった。

この頃自分はどうかしていた。

本当に、自分らしくない。

だが、長い悪夢にも朝が来る。

今は朝焼けを目指してその手を取る。

「大丈夫だよ、綺音ちゃんなら出来る。

まだ間に合うから、ね。」

青山さんが私の肩に手を置き励ましてくれる。

目から(あふ)れる涙を拭って、青山さんに決意を伝える。

「ごめんね、ありがとうね。

(あたし)頑張るから!頑張るから!」

「うん」

互いの手を握る力が強くなる。


日が傾き始めている、今日中には解消したかった。

山本さんは案の定家庭科室にいた。

そこには昨日仕事を指示したはずの2人もいた。

教室でも連るんでるこの3人がここに居るって事はおおよそ分かる。

威勢のいい1人が立ち上がり私の方へ向かってくる。

頭に血が上った瞬間に、後ろにいる青山さんの強い視線に気付いた。

3人一緒にここに居る。今となってそれはむしろ好都合じゃないか。

「何か用かよ?」

向かってきた割にはどこかオドオドしているが、

尋ねられたからには答える。

「仲直りしに来た。」

「「「!?」」」

3人の私を見る目が変わった。

畏れから驚愕に。

「裏があるんじゃないか?」

もう1人の男子が答えた。

裏ならある、が今は誤解を与える前に早く信じてもらいたかった。

「昨日はゴメンなさい。私が一方的だった、やり過ぎました。」

頭を深く落として謝る。

許してもらえるかどうか、こんな感覚は久しく感じていなかった。

出来ればもうこれきりにしたい。

「…」

相手の返事があるまでそのままの体勢だった。

誰かもう1人、私の所に向かってくる足音。

「顔を上げな」

上げ終わる前に胸ぐらを掴まれた。

「歯ぁ食い縛れ!」

確認を取る気はなくすぐにビンタが飛んできた。

反撃しようとする手を抑える。

言ってしまえば痛みはあまりなかった。

手を抜いてくれたのかこれが全力なのか、それにしてもなんて心が痛いんだろうか。

頬がヒリヒリするよりも心臓がバクバクする。

これで許してもらえたのだろうかと。

「なんでやり返さない」

山本さんは掴んだ胸ぐらを引き寄せた。

「昨日のは、やり過ぎだって自分でも思ったから。

あなた達には悪い事をしたと思っているから。

許して欲しいから、今はやり返さない」

そう言った私の言葉が真実かどうか、山本さんは私の瞳を覗いた。

「穂花ちゃん…」

山本さんはふと我に返ったように私の胸ぐらを離した。

一度青山さんを見据えてから舌打ちして、バツの悪そうに自分もカバンを取りに行く。

「改めてお願い、一緒に学園祭を手伝って下さい。」

また頭を下げる。

「私からもお願いします。」

青山さんも一緒に頭を下げてくれた。

「チッ、うるさいなぁ。」

荷物を持って私の横を通り過ぎた。

他に2人もそそくさと荷物をまとめて山本さんの後に続く。

ガラガラとドアを開ける音がする。

「…」

「…アタシらはどこに行けばいい?」

「!

ありがとう、小道具から人が欲しいって要望があったから、そこに。」

その感謝は許してくれた事にか手伝ってくれる事にか。

既に泣きそうだ。

「…やるからには成功させるからね。」

じゃないとつまらないしと付け加えて、吐き捨てるようにして家庭科室から3人出て行った。

「ふふ、良かったね。」

青山さんが私の隣に歩みよる。

「うん。」

涙ぐんだ声を聴かれないように頷きながら小さな声で答える。

「でもやっぱり一方的みたいになっちゃったね。」

袖で目頭に溜まった涙を拭う。

「分かってくれたんだよ。それでも穂花ちゃんは。

言ったでしょ、綺音ちゃんなら出来るって。」

「うん、青山さんもありがとう。」

「ううん、私は何もしてないよ。ただ友達を励ましただけ。

頑張ったのは綺音ちゃんだよ。」

「じゃあ、励ましてくれてありがとう。」

「どういたしまして。」

少しだけ青山さんの肩を借りて泣いた。


おかしいな、最近は情緒不安定というか、怒りっぱなしだったり泣きっぱなしだったり。

まるで自分が自分でないかのように。

でもそれはここに来てから。

ここが私を変えたのだろうか。

ここだから私は変わったのだろうか。

でも、今はそんな事を考える時間も惜しいはずだ。

「ほんとにありがとう、青山さん。」

「いえいえ。私に出来るのはこれくらいだから。」

「そんな事ないよ。だから、青山さんも手伝ってくれる?」

「もちろん!一緒に成功させなきゃね。」

「うん、頑張ろう!」

私たちもやっと家庭科室を後にして自分たちの持ち場に戻った。


今日も夕焼けが風を涼しくさせるほど照りつける。































少しかかってしまいました。

ですが、それなりに立てていた構想を一蹴してより良く出来たと思っています。

本当は青山さんの株を下げるつもりだったのですが気付いたらストップ高です。

穂花と連んでいる2人も名前考えなきゃと思いますが男なんでいいかなって。


暑くなってきていますが更新頑張ります。

今話もありがとうございました。

それでは

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