シミ
「まだ帰るには早いよ!
ショーはこれからさ!!」
体育館全体に響くよく通った声。
聞き覚えのある:特技は手品の演劇部部長。
舞台の上でスポットライトを浴びていた。
「…。」
「…。」
こちらが反応に困ってると、ユウくんが切り出した。
「あ、あの、ショーっていったい?」
「君たちの目的はなんだ!?」
「…。」
言うわけがない。
「安藤を倒しにきたんだよ、綺音がね!」
言うわけがない。
「その通り!さっさと出てこい!」
ノリノリな2人。
「良いお返事をありがとう!
でも、残念!会長は出て来ません!」
「会長?」
「会長をご所望だろう?
生憎、多忙でね。
だからここは私が相手をしよう。」
「お前を倒せば安藤は出てくるんだな。」
「いいえ。
ですが、私を倒さないと此処からは出られません。
ええ出しませんとも。」
「ただの時間稼ぎか…
それにしても何で会長なんだ?
そもそも何の会長だ?」
「……」
今度は向こうが黙った。
「ま、なんでもいいけどさ。
どうでもいいし。」
踵を返して出口に向かった。
舞台上から駆ける音、次いで跳ねる音。
まさにひとっ飛び、目の前で大袈裟に着地する演劇部部長。
なびく派手な衣装に雄大が感嘆を漏らす。
「行かせないよ。」
「おぉ…!!」
乱暴に拳を振るった。
あっさりと受け止められたがそのまま振り切った。
案の定、力ではこちらの方が上のようだ。
「??」
困惑する部長に続け様に振るう。
防ぎきれないと分かると距離を離された。
「っ、ちょっと待った。
話しが違うじゃないか?」
「私、あんまり話した事なかったと思うけど。」
「いやいや、何でそんなに強いのさ、君。」
「命が惜しいなら引っ込んでて、邪魔だから。」
「待って待って、後ろの二人もまさか強いの?!」
2人して首を振っていた。
「比べられるとちょっと…」
「なわけない、なわけない、」
「へー、なら」
嫌味ったらしく笑う。
「人質を取ってしまったらどうだろう?」
「…。」
穂花の喉元にナイフを突きつける。
またこのパターンか。
前も空いたし進む。
「殺せばいい。殺せるのなら。」
「いいのか?」
「私より弱いけど、お前よりは強いはず。
そうじゃないのなら…」
「綺音さん、待って下さいよ。」
「…。」
「まだ穂花さんがそこ吐いてますよ。」
「足手まといは置いて行こうよ。」
「人手は多い方がいいですって。」
「何であんたらあんな酷い事ができるのよ!?」
「生きる為に。」
「あそこまでやる必要はないじゃん!」
「加減してたらこっちが殺されるんだぞ?」
「…」
「いつまで『人間』のつもり?
汚れたくないなら綺麗なまま死ねばいい。
そういう人間が一番汚いんだって、私は思うけど。」
「私は…」
「やめましょうよ、2人とも。
少し落ち着いて下さいよ。
ここは敵陣で、ほら、また刺客が来ましたよ。」
校内の不良グループが各々武器を持って集まっていた。
「思いっきり人殴っていいんだよな?
楽しみだぜ。」
そう言ってバットを振り回していた。