わるいこと
「大口叩くんだね。
いいよ、やってみたら?」
睨み合う2人を仲裁する先生。
「まあ待て。
今日は挨拶に来ただけだ。
もちろん続けてもらってもいいけど?」
「すいません、先生。」
「やらないの?」
「さすがに3対1じゃ分が悪いからね。」
「1対1でも勝てないよ。」
「「ふん。」」
「あっさり帰って行きましたね。」
「怖気付いたんだろ。」
「死にかけの癖に偉そうに。」
「あイタ!」
しょうがないので家に残ってた救急セットを貸してやる。
「結局、助けるんですね。
なんでもっと早く助けてあげなかったんですか?」
「あそこで手を出すのを野暮でしょ?
それに、弱いのが悪い。」
「弱くて悪かったな。」
「悪い。そうだよ、悪い。
最悪は死。
それだけだよ。」
「…。」
「そうですね…」
「勝てないなら逃げればいいのに、
立ち向かうなんて救いようがない。
そうでしょ?」
「これ以上どこに逃げるのよ。」
「戦わなければいい、って言ってるの。」
「一緒じゃん!」
「あー、ごめんなさい、
俺が余計な事聞きました。
すみません。」
「ユウくんは悪くないってば。」
「…ハイハイ、私が悪いです〜。」
「2人が仲悪い理由が少し分かりましたよ。」
「お利口な子は好きだよ。」
「ふん!」
それから寝室を片付けて
私は自分の部屋で、ユウくんは両親の寝室で、
穂花はリビングで寝る事になった。
万が一の敵襲の際は、各自の判断で、
死んだら自分が悪い。
そうなった。
それが今の私の家のルールだ。
それから何事もなく、そして何もない朝が来た。
やる事がなければ食料もない。
厳密に言えば余裕がないわけだが、
「何着替えてるの?」
「私の家だけど?」
「まさか行くつもりなの?」
「私の学校だけど?」
「正気じゃない。」
「だから?」
「…」
「このままここに居てもいいけど、私は戻ってこないかも。」
目的はあるが目標がない。
目下、確率が一番高い学校に行く。
「どうして行くんですか?」
「ユウくんも着いてくる?
そうすれば分かるよ?」
「やめときな。」
「…行きます。」
「やめとけって。」
「自分が怖いだけでしょ?弱いから。」
「っるさいな!」
「まあまあ。
この際だから穂花さんも行きましょう?」
「………!分かったわよ!行けばいいんでしょ!」
「来なくてもいいんだけど…」
「行くわよ!!」
怒鳴りながら洗面所に向かっていった。
「ちょっと待ってて!!!」
「あれは、結構時間かかるね。
置いていこっか?」
「待ってあげましょうよ。」
「ユウくんがそこまで言うなら…」
「あはは…」




