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夕照
浅井拓実。
彼を最初に見かけたのは学校の屋上。
秋もかなり深くなった頃。
久美姉が”学校の屋上から見る夕焼け空が綺麗”だって言った翌週。
久美姉と一緒に帰る約束。
私は屋上への階段を駆けのぼった。
扉をあける。
夕焼け空が目にとびこんできた。。
それを眺める久美姉。
声をかけようと思った瞬間、久美姉を見ている彼に気がついた。
しばらくして。
「どうも。」
と声をかけ、ベコリと頭を下げた。
「どうも。」
と言い、彼はそういい残して、屋上をあとにした。
「香奈。」
「久美姉。」
「香奈。浅井君と知り合い?」
「浅井君?」
「今、話をしていた人よ。」
「そこで目があったから、挨拶しただけ。」
「そう。」
「久美姉と同学年?」
「うん。でも話をしたことはないわ。浅井君は私のことを知らないかもしれないし。」
浅井君が久美姉をしばらくの間、眺めていたことを言いかけてやめた。
その浅井君の横顔。
どこかでみたことあるようで懐かしい気がしたことはもちろん口にだすことはしなかった。
しばらく、2人で夕焼け空を眺めていた。
「そろそろ、帰ろうか。」
「うん。」