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世界の暁  作者: ゆきかぜ
第2章
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追跡と対策

カウアイ号を追う海軍特務艦、そしてこの件に関して御前会議が開かれた。

1930年 6月25日 太平洋上


大阪商船の機内丸型貨物船によく似た帝国海軍の特務艦 安芸丸は野山中佐からの電文をキャッチし、カウアイ号を追跡すべく、進路をカウアイ号が補給をする予定地であるハワイへと向けた。安芸丸は見た目こそ貨物船だが船倉に水上機を搭載、格納式のカタパルトや臨検用に船員に扮した海軍陸戦隊員が常に乗艦しているなど仮装巡洋艦とも言える船だった。むろん東機関員も乗艦しており、この船の所在を知る者は海軍内でも少ない。


「艦長、軍令部から電文です。」


「お、来たか。」


副長から渡された電文を2度目読した艦長は船内放送用のマイクを手に取った。


「諸君、艦長だ。知っての通り我が艦に課せられた任務は重大な物であり、結果次第では戦争が勃発する可能性も十分考えられる。今ここで改めて各々の任務に最大限に取り組んでもらいたい。」


「それと、既に知ってる者も居るだろうが本艦の任務は朝鮮クーデターの阻止だ。」


以上を言い終えた艦長はマイクを置き。夜間食のぼた餅を食べ始めた。


艦内はこの話題で持ちきりだった。


「おい、聞いたか?」


「あぁ、でもまさか本当にやるとはな。」


「何で朝鮮なんだ?あそこは本土同様に厳しいはずだ。何かあれば憲兵や特高が捕まえに来るだろ。」


「独立派が米国と接触したんだろうか?」


「もしそうなら、アメ公と戦争になるのか⁇」


艦内のこうした会話に士官達は


「貴様ら‼︎ くだらん憶測をたてて事を荒げるな‼︎」


と一喝した。



1930年6月27日


補給を済ませたカウアイ号は予定通り出航した。安芸丸は20kmの距離を保って追跡を開始。カウアイ号の情報は逐一軍令部に報告され、軍令部ではこの船の処遇について会議が行われた。



1930年7月1日 大日本帝国 帝都東京 御前会議


安芸丸の報告を受けて、御前会議ではカウアイ号をどうするかについての議論が長引いていた。この問題が表向きに発表されたりすれば米国との更なる関係悪化は避けられず。国民世論が一気に対米戦止むなしの方向に向かえば、軍の整備が完了する前に戦争が開始されるかもしれない。それだけは陸軍も海軍も避けたい事だった。



「貨物船ならば、臨検をして拿捕すればいいのでは?」


「臨検ならできるが、問題なのは積荷の方だ。」


「武器なら性能比較用に使えばいいんじゃないか?」


「私もそれに賛成だ。米国製の武器を研究するいい機会じゃないか。」


「おいおい。一番の問題は国民世論だ。新聞に知れてみろ、たまったもんじゃない。」


「その件に関しては徹底した報道管制を引くことで対応できるはずだ。」


「なら後は米国との関係だな。」


「この件は米国側に非がある。我々は必要な措置を取ったまでだ。」



大体の意見がまとまったところで陛下が口を開いた。


「朕はこの件に深く遺憾の意を表す。米国は我が帝国の主権が及ぶ所で謀反を企てた。しかし、朕としても国民世論には注意したい。それぞれの持てる力でこの件を解決して欲しい。」


『はっ‼︎』


こうして御前会議は終了した。

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