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世界の暁  作者: ゆきかぜ
第2章
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諜報活動

2年間に渡る諜報活動で野山中佐は重大な情報を手に入れる事に成功する。そして、米国が計画していた事とは?

1929年1月2日 アメリカ合衆国 ニューヨーク


新年ムードで賑わうタイムズスクエアを1人の男が歩いていた。野山陸軍中佐は氷川陸軍中佐との待ち合わせ場所であるレストランへと向かっていた。2年に渡って行った諜報活動の結果を帰国予定だった氷川陸軍中佐に報告する為だった。白川前陸軍大臣が野山をアメリカに派遣した目的は米国の朝鮮クーデター計画への関与の実態調査の為だった。


「おーい、ここだー。」


「そこに居たか、雪と人混みでわからなかったよ。」


「なんせこの時期だからな。ま、入れよこの寒さは堪えるだろ。」


「おう。確かにな。」


席は氷川が先に取ってくれていた。注がれた熱いコーヒーを飲みながら氷川は野山に尋ねた。


「例の件は確実なのか?」


「ああ、米国陸軍省に忍び込めた諜報員から聞いた確かな情報だ。」


「積荷は?」


「積荷は武器に間違いない。それも小火器だけでは済まない物も。」


「まさか…」


氷川が耳を疑うのも訳はない。米国は本気で朝鮮にクーデターを行わせる気だった。そしてこの情報は帰国した氷川によって直ちに関係部門に伝えられ、対策会議が早急に行われた。




1930年5月15日 アメリカ合衆国 首都 ワシントン州


第36代大統領ハーバート・フーバーは密かに朝鮮にクーデターを起こさせようとしていた。日中満3国同盟の締結、この出来事は多くの朝鮮人の心を動かした。


そこでアメリカは活動家への資金援助を水面下で行い独立運動を強く支援し朝鮮総督府による支配を終わらせて自国の傀儡政権を樹立させ、来るべき対日戦に勝ったのちに朝鮮を完全に独立した国家として認める約束まで結んだ。


狙いは対日戦で有利に働く為だった。日本側もこの動きを察知し憲兵と特高、東機関による合同捜査を行なっていたが資金の送金ルートの複雑さに翻弄され、送金主がアメリカであった事も野山の諜報活動によって初めて知った事だった。



「積荷の件はどうなっているかね?」


「はっ、小火器、重火器の積み込みは既に完了。あとは装甲車の積載だけです。」


「よし、戦闘員の方は?」


「既に現地入りしており後は武器を待つだけです。」


「日本側には察知されていないだろうな。」


「資金の送金ルートはダミーも含めておりますので、完全に知れ渡ることは無いかと。」


「ん。なら後は予定通りに事が進むのを祈るだけだな。」



実はこの時点でフーバー大統領の計画はほとんど失敗していた。彼が知る以上に日本の米国での情報網は充実していた。さらに現地入りしていた戦闘員はつい2日程前、アジトの位置を掴んだ憲兵隊によって全員が逮捕、尋問されていた。


あまりにも急な出来事に戦闘員は電報すら打てず、フーバーは日本の策略にまんまとハマったのである。報告を済ませたスティムソン国務長官が退室した後、フーバーは意気揚々としてグラスにウィスキーを注いで勢い良く飲んだ。彼は既に勝者の気分でいた。



1930年 6月23日 アメリカ合衆国 ニューヨーク港


朝鮮クーデターの為の物資の積み込みを済ましたアメリカ船籍の貨物船[カウアイ号]は午前3時頃、まるで人目に付かれたく無いようかのように、釜山を目指して出航した。そんなカウアイ号を尻目に野山中佐は車中でとある電文を発した。


''賽は投げられた''

朝鮮クーデターに使われる物資を釜山まで運ぶために出航した貨物船カウアイ号。そして野山中佐が発した電文の意味とは?


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