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世界の暁  作者: ゆきかぜ
第1章
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選択

大きく変わった中国事情にヴァイマール共和国は困惑していた。そこで取った選択とは…

1927年 9月30日 ヴァイマール共和国首都ベルリン


日支同盟が発表された頃、ヴァイマール共和国の首都ベルリンでは重大な会議が行われていた。それは、日支同盟が中国に進出しているドイツ企業へ及ぼす影響だった。本来、中華民国への軍事支援を独自で行なうはずが、日支同盟によって市場を奪われた形となってしまったからだ。


技術力の高さでは日本に勝っていたので市場を失う事は無かったが、予定していた軍事顧問団の派遣は中止となり更に日本の工場の進出により需要は下がって行き、ドイツ経済界からは不満の声が上がっていた。


しかし、中華民国側もドイツ企業の持つ技術力の高さに完全に手を切る訳にもいかずお互いヤキモキしていた。ここでヴァイマール共和国は2つの選択にたどり着いた。



一:日本と協定を結び、中華民国へのこれまで通りの軍事支援と持っている技術の高さを日本へ売り込む。


ニ:中華民国とは手を切り、中国共産党に付くか新たな海外拠点を探す。



というものだった。もし後者を選択した場合、中国からの安定した資源供給が断たれる可能性があり、とてもリスクが高かった。さらに新たな海外拠点の選定はイギリスなどに目を付けられる為、到底不可能だった。


そこで前者の案が決定されヴァイマール共和国は、とりあえず協定を結ぶ為にオスカー・トラウトマン外交官を日本との交渉役に就けたのだった。




1927年 10月25日 大日本帝国 帝都東京 在日ヴァイマール共和国大使館


オスカー・トラウトマンと外務大臣を兼任していた田中総理はこの件について会談を行った。



「これが本国から提示されている条件です。」


「ほう。」



ドイツ側の示した条件とは以下のものだった。



一:中華民国への軍事支援を日本が認める。


二:一が認可された場合、ヴァイマール共和国は日本へ最新兵器の提供を通常の半額で行なう。



条件が単純だった事に田中は目を疑った。中華民国の市場はドイツにとってそれほど大切だったのだ。



「そちらの主張はわかりました。私の一存では決められませんで、解答は閣議決定の後でもよろしいですかな?」


「もちろんです。いい返事を期待しています。」



帰りの車中で田中は同行していた森恪政務次官に尋ねた。



「ドイツ側の意図は何だろうか。」


「おそらく、中華民国での利益をよほど重視しているのでしょう。条件が単純なのはそのためかと。」


「後で閣僚を集めてくれ。まだ満州の件が残っているが、この件は最優先事項とする。」


「了解しました。」


「この件は君が主導でしてくれんか?私は暫くこの件に就けそうにない。」


「私がですか?」



森は本来、対中強硬派であったが田中総理の熱心な日支同盟構想に説得され、以後は日支同盟締結の為中華民国側の官僚との調整に尽力した。その功績が買われ、彼は今回の協定の責任者に選ばれたのだった。



「日支同盟での功績もある。それに、転向してくれただろ?」


「ではやりましょう。 いい結果をお持ちします。」


「そうか、この件はくれぐれも英国、米国に悟られんようにな。」


「ですな。」



田中が一番考慮しているのは、英米との関係だった。満州、中国との関係改善で少しはマシになったものの依然として英米とはギクシャクしていた。もしこの計画が知れてしまえばドイツとの接近を危険視し、どのような形であれ抗議や制裁をしてくるに違いない。これが田中の懸案事項だった。


その頃、アメリカの白い館の主が描き直されたアジアの地図を眺めながら何かを考えていた…。

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