ロケット
1936年 1月5日 大日本帝国 十勝平野
正月が抜けた頃、とある牧場の一角でドイツ人技師達と陸軍がとある実験を行おうとしていた。実験場は幕で覆われており、憲兵達が巡回していた。実験場の中央には黄色に塗られた大きな矢の様な物体が発射台に置かれていて、技師達が最終調整を行っていた。
「発射用意‼︎」
作業員達の退避を確認して、その物体は轟音と共に大空へと舞い上がった。発射の際の凄まじい閃光と爆風は花火の打ち上げとは明らかに異なっていた。偶然それを目撃した住民はてっきり花火を打ち上げているのかと思い、気にも留めていなかった。
「まだ飛ぶ‼︎ 現在、高度8000‼︎」
興奮気味の観測員の一言一言に皆は耳を傾けていた。やがて、到達予定高度9000mを少し越えたところで燃料を使い果たし、地面へと落ちて行った。地上では大歓声が巻き起こっていた。
「やりましたよ‼︎ 博士‼︎ 」
「おめでとう。実験は大成功だよ。」
この実験の主任者であるヴェルナー・フォン・ブラウン博士は陸軍関係者や作業員達を労った。陸軍はこれから予定する新兵器開発にロケットを使うものを考えていた。そこで、ロケット分野で進んでいたドイツから技術者を召喚し、開発に当たらせた。
ドイツでも英国の目を欺かすために日本にロケット開発の拠点を置くことに賛成した。彼が日本に呼ばれた事によって日本のロケット技術は未だかつてない進歩を得た。
なお、この時用いられたロケットはドイツで、後のV2ロケットとして発展することになる。