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世界の暁  作者: ゆきかぜ
第4章 【海軍大演習】
15/31

演習 [中編]

午前7時00分、空母 加賀と龍驤は偵察の八九式艦攻を予定通り発艦させた。朝日に照らされ、銀色に反射している八九式艦攻を一機ずつ山本は見ていた。偵察員がそれに気づいて敬礼をし、山本も敬礼を返した。甲板では整備員達が帽子を振っている。



「見事だ。」



艦橋では最後の艦攻が無事に発艦したのを見て皆が安堵の表情を見せていた。一方の飛行甲板では、攻撃隊の編成が既に始まっており、そそくさと九五式戦闘機がエレベーターで上げられていた。



その頃、戦艦 長門では演習開始に伴って電探の起動スイッチが入れられた。多くの人が見守る中、オシロスコープに一本の線が映し出された。技師が動作の確認を行っている。



「どうやら異常はなさそうだ。」



動作確認を終えた技師が笑顔だったのを確認して高橋中将は表情を緩めた。電探がきちんと起動すれば向かってくる加賀と龍驤の攻撃隊を鳳翔の戦闘機で迎撃できる。高橋は鳳翔を艦隊に配属された意味を理解したようだった。



「電探に感あり!」


「味方艦じゃないのか?距離と方角は?」


「約5km、1時の方角です。」


「5km⁉︎ 近い。」


「司令、どうしますか?」


「鳳翔に連絡、艦戦を向かわせよ。」


「了解!」



長門からの発光信号を受けた鳳翔は直ちに九試艦戦を上げた。九試艦戦は後に九六式艦戦として海軍に正式採用された戦闘機で、今回の演習には工場から出たばかりの9機が鳳翔に搭載されていた。高橋は技師に尋ねた。



「艦船か飛行機かわかりますか?」


「この電探は波長10cmのマイクロ波を出してます。艦船はもちろん、飛行機も探知は可能です。」


「そうですか…」



飛行機の可能性があるのならば艦戦を上げたのは正しい。もしそれが白軍艦船でも砲撃で撃破可能な距離と高橋は考えた。


電探に捉えられたのは加賀から発艦した偵察機の一機だった。まさか発見されたとは知らず、高度2000を保って赤軍艦隊の方へ向かっていた。



「そろそろ、見えるかな。」



偵察員が電信機に手をかけようとした時、突如、上から九試艦戦が襲って来た。



「うわぁ、どっから来た⁉︎」



我、敵機と交戦と無電を打ち回避行動に移ったが写真銃から発せられる光を10秒確認してバンクを振った。



「ちぇっ。やられた。」



九試艦戦から撃墜判定を受けた八九式艦攻は共に鳳翔に帰還した。



「鳳翔から連絡、偵察機を撃墜との事です。」


「おぉ!よくやった!」


「まさに千里眼だ!」



艦橋は喜びに包まれた。電探の有効性が示されたのだ。技師もホッとした顔をしていた。



「全艦、対空戦闘用意!」



高角砲、機銃が空を青く晴れ渡った空に向いた。実弾を装填していない無いとはいえ、まるで戦時のようだった。



その頃、加賀 龍驤では偵察機の報を受けて攻撃隊が発艦していた。2艦から九五式艦戦18機、九四式艦爆9機、八九式艦攻36機が赤軍艦隊へと飛び立った。



「確か、鳳翔は九試艦戦を積んでたな。」



攻撃隊を見送った山本はふと思い出したかのように言った。九試艦戦は海軍初の単葉戦闘機とあって海軍内部でも懸念の声が少なくなかった。



「複葉機と単葉機の戦いか…1度見てみたいな。」



「初春に乗艦している大西が見届けますよ。」




赤軍艦隊前方 3km地点 駆逐艦 初春


海上で行われる模擬空戦の成果確認に海軍側から大西龍次郎、三菱側から設計者の堀越次郎を乗せた駆逐艦 初春が空戦予定地点に先行していた。堀越は緊張していた。



「模擬空戦が始まりまーす‼︎」



見張り員が叫んだ。甲板にいた全員が空を見上げた。上空には既に鳳翔の九試艦戦と加賀、龍驤の九五式艦戦が模擬空戦を開始しようとしていた。















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