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世界の暁  作者: ゆきかぜ
第4章 【海軍大演習】
14/31

演習 [前編]

1935年 2月1日 大日本帝国 海軍省


海軍では今後を見据えての会議が行われていた。主な議題は航空機と電波探信儀(レーダー)の登場によるこれからの戦術の変化についてだった。海軍はこれまで、優勢なアメリカ艦隊が太平洋を西進してくる間に潜水艦などによって徐々にその戦力を低下せしめ、日本近海に至って、互角の戦力となった主力艦隊同士の艦隊決戦で勝利を収めるとする対米戦基本計画である漸減邀撃作戦で立ち向かおうとしていた。


しかし、ここ最近の兵器の進歩にある疑問が航空主義者の海軍軍人の脳裏に浮かんでいた。


《果たして艦隊決戦は起こりうるのか⁇》


それはつまり、対米戦で艦隊決戦は起こらず、飛行場の為の島の取り合いで長期戦になるのではないかということだった。しかし、当時は大艦巨砲主義が主流。航空主義者の意見など中々聞いてもらえる時代ではなかった。そこで航空本部長であった山本五十六少将は大規模な海軍大演習を行うことを提案した。




同年 4月13日 横須賀軍港 赤軍艦隊


高橋三吉中将に率いられた赤軍(戦艦と重巡が主力の部隊)艦隊は演習海域に向けて出航した。戦う相手は白軍(空母が主力の部隊)艦隊。



「あっちは加賀と龍驤、こっちは鳳翔か。」



高橋中将は自軍の空母 鳳翔をあまり当てにしていなかった。



「まっ、あれに賭けてみましょう。」


「役に立つかなぁ?」



高橋中将と参謀の宇垣少将は乗艦している戦艦 長門に付けられた電探の事を言っていた。戦艦 長門は大改装の時に試作の電探が搭載されていたのだった。


「変な物が付いたな…本当に効果があるのか?」


「主砲の衝撃で潰れそうだな。」


長門の乗組員達も、この奇妙な物に興味津々だった。本来、電探は積む予定ではなかったが開発陣が頭を下げてお願いした為、積むこととなったのだった。




同年同日 房総半島沖 白軍艦隊


空母 加賀を旗艦とした白軍艦隊は赤軍艦隊より4時間前に出航し、先に演習海域へ着ていた。司令を務めている山本五十六少将は緊張していた。この演習は戦艦が航空機に無力であることを示す機会、失敗は許されない。山本のそうした気配を感じたのか、加賀の艦橋は緊張に包まれていた。


山本は参謀の源田にこう言った。



「あれ程大掛かりな事をやった以上、失敗するわけにはいかない。」



この演習は過去に例を見ない程大掛かりな物になった。山本の提案で参加艦艇は機銃、高角砲の全てに写真銃ガンカメラを取り付けた。目的は対空戦闘の成果を確認する為である。この為、用意されたフィルムや現像するのに必要な薬品は膨大な量になった。



「会計部の苦労の為にも成功させなければなりませんな。」



源田の一言で艦橋は笑いに包まれた。そこに通信兵が入ってきた。



「横鎮から入電です。赤軍艦隊は予定通り出航との事であります。」



山本は空を見つめた。空は雲一つない快晴であった。



「偵察機の方はどうか?」


「八九式艦攻を龍驤のと合わせて6機待機させてあります。」


「準備が出来次第、逐次発艦させよ。」


「はっ‼︎」



帝国海軍の未来を決める演習がついに始まった。










長くなりそうです。(^_^;)

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