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世界の暁  作者: ゆきかぜ
第3章
11/31

満ソ紛争

少し長くなりました。

1933年 3月15日 午前2時 満州ソ連国境地帯


満州国国境警備隊ではここ最近のソ連側の動きに警戒していた。1ヶ月前、大慶に油田が発見された。このニュースは日本陸海軍を湧きたてた。大慶油田の埋設量は日本の産業を生かすには充分だった事も判明し、満州が日本の生命線である事は引き続き認識された。


満州国もこの油田から出る石油が重要な輸出品になっていた。ソ連、人民中国は当然この油田に興味を示した。それ以降、国境では人民中国かソ連の兵士が頻繁に出没するようになった。つい3日前、人民中国軍の歩兵小隊が満州国の国境を超えて国境警備隊の施設を奇襲し、30人を死傷させる事件が起きた。


幸い演出中の在満日本陸軍の部隊が急行して対処できたものの、国境警備隊だけでは戦力不足なのは明らかだった。中華民国軍は人民中国軍との戦いで満州国に向ける兵力の余裕が無い為、かつて満州国に駐留していた帝国陸軍の第3軍、第5軍を再度派遣することになった。



「今日も居やがるな。」



満州国国境警備隊第二管区の監視塔からソ連兵を見ていた監視兵が呟く。いつもなら2分もすれば帰って行くのだが今日は4分も留まっている。何か様子がおかしい。




「何故帰らない?警告でもするか。」




監視兵が三八式歩兵銃を構えた瞬間、ぼんやりと空が光った。




「な、何だ⁉︎」




慌てふためく監視兵の額に銃弾が飛び込んだ。彼は糸の切れた人形のように倒れた。異変に気付いた他の監視兵も次々と倒れていった。




「監視兵は殺った。全軍突撃せよ‼︎」



「ウラァーー‼︎」




国境を越えたソ連兵は雪崩のように満州国へと入って行った。一方、国境警備隊本部ではこの異変に気づかなかった。




「国境側が騒がしいな。何かあったのか?」



「監視兵からの報告はありませんが、とりあえず見に行ってきます。」




1人がドアを開けた瞬間、ソ連軍の機関銃が一斉に火を吹き始めた。



「敵襲だ‼︎ 全員戦闘態勢‼︎」



「隊長!手榴弾‼︎」



「なっ…」



隊長の意識は光と共に消えた。こうして国境警備隊各管区の部隊は各地で全滅させられた。今回の満ソ紛争の参加兵力は以下のものになっている。






ソ連軍 司令官 ヴァシーリー・ブリュヘル大将


ソ連陸軍 満州侵攻軍: 約40000人、車両500両




日満連合軍 総司令官 菱刈隆大将


満州国軍:興安北警備軍、興安東警備軍、興安西警備軍、第2軍管区、第3軍管区(計29566人)


日本陸軍:満州駐留総軍、第3軍、第5軍 (計208050人)


※満州国軍は日満議定書により、有事には日本軍の指揮下に入る





同年 3月22日 満州国 首都 新京



国境警備隊の壊滅とソ連軍の進軍は満州国並びに日本に大きな衝撃を与えた。当初、満州国外務省はソ連側に外交ルートで抗議をしていたがソ連側はそれを無視し続けた。


満州国皇帝であり満州国軍の総司令官でもある溥儀は閣僚と満州駐留軍司令官の小松原中将と戦略会議を行っていた。




「ソ連軍の動向は?」



「現在、ハルハ河で停止しています。」



「数では我々が有利、正面突破すべきです!」



「小松原中将、どう思われますか?」




満州国軍にとっては初めての対外戦争。それゆえ日本軍の意見は判断をする為のいい材料だった。




「まず、前線を20km後退、ソ連軍を引き込み。増援の第3軍、第5軍と現在前線に配置されている満州国軍第2軍管区、第3軍管区それぞれ左右から挟撃させようと思います。」



「なるほど、袋叩きですな。」





同年 3月30日 ハルハ河 ソ連軍司令部


ブリュヘル大将はモスクワからの指示を待っていた。日本軍の増援部隊が接近中との事で今後の行動、つまり撤退か前進かということだった。



「大将、モスクワから電報です。」



「なんと言ってきた。」



「はっ、撤退です。」




ブリュヘル大将は微笑んだ。




「これで地獄ともおさらばだ。」



「国際世論は何と言うでしょうね。」



「ハハッ、それはモスクワの連中が気にすることさ。我々はあくまで命令に従っただけだよ。」




ソ連がこのような形で軍事行動を取った理由、それはいずれ行う満州国占領のためのデモンストレーションの為だった。いわば満州国軍、日本軍の実力を知る為の威力偵察のようなものだった。


ソ連軍の後退は日満にとって不可解な出来事だった。左右から挟撃しようとした第3軍、第5軍、第2軍管区、第3軍管区はソ連軍のBT-2戦車によって後退を余儀無くされた。


こうして二週間近くに渡って行われた満ソ紛争はソ連軍の不可解な撤退で幕を閉じた。後にスターリン書記長は声明を発表、一連の出来事をブリュヘル大将の独断として彼を処刑、政府の関与を完全否定した。


東機関はスターリンの関与を探るべく諜報員を派遣していたが、生きて還って来た者は誰1人いなかった。




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